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第3章

65話 オークとゴブリンの村 2

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「アトス今日は悪かったな。儀式が出来なくて」

 俺達がディングの家に着いた頃には、既にディングとグダが家に居た。

「いや、構わないよ。モンスターは討伐出来たのか?」
「あぁ、楽勝だ!」
「この村には、良くモンスターが来るのか?」
「アトス様、この村は人数が五十人規模の為、モンスターが集まって来るのですよ」

 ゴブリンのグダがニコニコ笑いながら説明してくれる。

「そんなに、頻繁に攻めて来るなら住処を移動した方がいいんじゃないのか?」
「それは出来ね! ここは先祖代々から住んでいる土地だ。モンスター如きが理由で離れられる訳がねぇ!」

 ディングが、住処を移動する件を一蹴する。まぁ、俺達が住むわけでは無いから関係無いが。

「この村ではモンスターが来た場合、いつもどうするんだ?」
「この村には大体オークが二十五人程居ます。常にその半分以上の勢力を投入して、ディング様が指揮を取り討伐しております」
「俺らオーク族にかかれば、小型一体程度なら余裕だ」
「ええ、そうですとも。ディング様達、オーク族が居てこその村の安全がありますので」
「うむ。だがゴブリン達が居るからこその快適な生活が出来る!」
「お褒めに預かり光栄です」

 グダは本当に低姿勢で、ディングに対しては尚更だな。モンスターの討伐や獲物の狩全般をしてもらっている以上、ゴブリン族としては強く出られないのかな?

 最初この村に来た時は上手くオーク族とゴブリン族が共存していると感じたが、今日オーク達がモンスターの討伐に村を出ていた際に村を見回ったが、ゴブリン達は誰一人笑顔が無かったな……

 関わる気はサラサラ無いが二つの種族は、ディングとグダの見た目通りの良い関係では無いのかもしれない。

「アトスよ、俺らオーク族がどの様にして、小型を倒したか知りたくは無いか?」

 どうやら、ディングは自慢話しがしたいらしい。魔族の事を聞きたいが、ここは自慢話しに付き合った方がいいかもしれないな。

「そうだな。25人のオークが居たとしても、毎回犠牲者無しで倒すなんてすごいな」
「そうだろ、そうだろ。俺らオークはゴブリンとは力が違う!」

 俺が言った言葉に気を良くしたのか、ディングが饒舌になる。それに従いディングの端々に出てくる、ゴブリンとオークの能力の差を比較する度にグダの表情が僅かに歪むのを俺は見逃さなかった。

「俺のスキルは強いぜー」

 そう言って、首に吊るして居たペンダントを見せてくれた。

 身体強化(部位:足 Bランク)

 確かに強いな……。Bランクは中々いないはずだ。しかも、身体強化で部位が足なんて一番当たりだろ!

 羨ましい……。

「ディングは随分強いな」
「だろ? 俺の全力の蹴りなら小型でも脆い箇所を蹴ればダメージも与えられるぜ!」
「ダメージが与えられるなんて凄いな」

 何度か小型に遭遇した事があるが、あの巨体を単体でダメージを与える事が出来るなんて、本当に凄すぎる……


「アトスのスキルはなんだ?」
「いや、ディングの後だと恥ずかしくて言いたく無いな」
「ガハハハ」

 俺の言葉に更に気分を良くしたのか、ディングが豪快に笑う。

「アトスよ、スキルなんて関係ない! ここいるグダを見ろ。こいつのスキルも何も役に立たないが、俺はコイツの頭脳には期待している!」

 グダはスキルについて言われて、相当顔を歪めた。だが、ディングがグダの方に向くと、無理矢理表情を作って笑っていた。

「ええ、私のスキルなんてディング様に比べたら無いに等しいですからね」
「ガハハハ、グダよそんなに卑下するものではないぞ!」

 隣から服を引っ張られる。隣を横目で見ると、ロピが口パクで催促してくる。恐らく魔族の事だろう。

「ディング、聞きたい事があるんだがいいか?」
「おう! なんでも聞け」
「今日村を散策したら牢屋を見つけてな、そこに魔族が居たんだが何故だ?」
「──ッ!? アトス様! あなた勝手に入られたのですか?!」

 俺の質問にグダが血相を変えて大きな声を上げた。

「い、いや、見張りのオークが許可をくれたので見学したんだけど?」
「まぁ、グダよ良いではないか」
「しかし! この事はこの村の秘密にと」
「良い。村長の俺が許可しているのだ!」

 グダは、今日一番顔を歪め下唇を噛み、俯いている。

 ディングの自慢話しに付き合っていて良かったぜ……

「あの魔族は、何か悪さをしたのか?」
「いや、何もしてない。あの魔族は売るのだ」
「──ッ!?」

 チルが横の席で驚いた反応をした。表情は一切変わってない為、ディングとグダには気付かれて無いだろうが、俺とロピには分かった。

「売る……?」
「そうだ。魔族は貴重でな、この前狩に出ていた時に弱った魔族を見つけてな」

 あの魔族は最初から弱っていたのか……。

「最初は、逃げるつもりだった。いくら俺らオーク族でも魔族相手には分が悪い。だが、明らかに弱っていたからな、オーク族総出で確保したのだ」
「なんで、魔族を売ろうと?」
「物資だ。俺らオークでもやはり安定して狩を成功する訳では無い。なので、この村は常に食料不足なのだ」

 ディングは悲痛な顔で更に続ける。

「今はゴブリン達の食料を減らしてなんとかなっているが、今後は俺らオーク達の食料まで減らさないといけなくなる」

 なるほど……。やはり先程の言動と言い、どうやらこの村では基本オーク族の方が優遇されていて、ゴブリン族は我慢を強要されている。ゴブリン達に笑顔が無い理由はここら辺が関係ありそうだな……。

「そこで、魔族を人間族の住処に持って行き売るのだ」

 ディング達の考えは分かった。だが、今は人間族の住処かが壊滅状態になった事は知っているのか?
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