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第3章
54話 記憶の無い神様
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「うぅ……。ここはどこだ?」
辺りを見回すと、大きい岩や小さい岩などが視界に入って来る。
そして、上から光が降りて来ているのに気が付き、顔を上げる。
どうやらココは大穴の底らしい。
頂上に大きな穴が空いており、私はあそこから落ちて来たのか?
上を見ると、とても高く自力では上に出られそうに無いくらいである。
「高いな……。これは登るのは無理そうだ」
私は再度周りを見回す。とても大きい穴の様で人間が百人居ても全然狭さを感じないくらいには大きい。
また、穴の中とは思えない程に自然が豊かで、光が届いているせいなのか、木々が生い茂っていた。
「そもそも、私は何故こんな場所に居るんだ……?」
何故ココにいるか思い出してみるが、全然記憶に無い。
「あれ……私の名前って……?」
自分自身の名前も思い出せ無い。
だが、頭のどこかで十歳くらいの男の子が思い浮かぶが、それが誰なのかは思い出せない。
「人間族の男の子?」
自分に尻尾や頭から耳が生えている事から私は獣人だと分かるが、人間族の友達なんて居たのか?
「全く、過去の事が思い出せない……。記憶喪失ってやつか?」
そんな時に、お腹から音が鳴る。どうやら、気絶している間に結構な時間が経っていたらしくて、お腹が減っていた様だ。
辺りを見回すと木々は生い茂っているが、食べられそうな実などは無く、湧き水が沸いているくらいだ。
「水を飲んで誤魔化すか」
周りを注意深く確認しながら大穴を探索したりしたが、やはり食べられる物は何も無かった。
「それにしても、この高さで良く生き残れたな。普通は即死だと思うが……運が良かったのか?」
生きている事喜ばしい事だが、その代わり自分が誰なのか分からない。
どうやら、生活面や知識面の記憶は残っているが、思い出部分の記憶が全て無くなっていた。
昔の事を思い出そうとしていると、又もやお腹の虫が鳴いた。
「今は生きているが、何日かしたら空腹で倒れて、そのまま終わりだな」
何故か冷静に判断している自分がいる。
そんな事を考えていると、上から影が指す。
「ん?」
私は上を向く。かなりの高さがあるが、私自身視力が良いのか、影が指した理由か分かる。
「人間族か?」
どうやら、人間族の集団が居るのが見える。何か話しているらしいので、聴くことに集中した。
「皆の衆、今日は生贄の儀式を行う」
二十人くらいの人間達が跪いていて、一際装飾が立派な歳を得た男が大きな声で言う。
「皆も、知っている通り我らの村はモンスターが来たことが無い! これは山神様のお陰だ」
他の人間達はブツブツと何かを呟きながら、両手を天に掲げて、また地面に顔を付ける。
「そして、今日は山神様に感謝の証として、生贄を捧げる」
そう言って、年寄りの男は唯一膝まづいていない女の子に視線を移す。
その女の子は年寄りの次に豪華な装飾をしている。だが女の子の表情は豪華な装飾とは逆に優れない。
「レギュよ、お前も今年で十歳になったな。なので今回山神様の生贄に選ばれた。光栄に思うように」
「……」
「分かっておるな?」
レギュと言う女の子はコクンと頷くだけであった。
「それでは皆の衆用意せよ!」
人間達は、一斉に立ち上がりレギュと言う女の子を中心に円を描くように囲む。そして、何やら儀式を一時間程行なっていた。
「では、レギュを大穴に入れるのだッ」
そう言って、レギュに植物の蔓を巻いて大穴にゆっくり落としていく。それと同時に生贄用に果物や肉、野菜なども降りてきた。
人間達はレギュに近づいてみんな一言ずつ話しているようだ。
「レギュごめんな……」
「レギュちゃん私達の為に……うぅ……」
みんな申し訳無さそうにレギュを見ている。そして、レギュが大穴にゆっくりと降りて来る。
人間族は見えなくるレギュに安堵した表情をしている。
「レギュには悪いが、ウチの子じゃ無くて良かった……」
「あぁ、確かに。レギュは拾われっ子だからみんなから反対が出なかったもんな」
レギュが居なくなった事を良いことに人間達は好き放題言っている。
「よし皆の衆! これにて生贄の儀式を終わらせる。後は一週間毎に供物をこの大穴から投げ込むのだ!」
人間達は儀式が終わったのか大穴から去っていく。
残されたのは、私とレギュと供物だけだった……。
レギュは大穴の底に着いてからも周りなど一切気にせず、地面を見ているだけだった。
私は近寄って話しかけてみる事にした。
「おい」
「──ッ!?」
レギュはまさか大穴の底に誰かが居ると思わなかったのか、とても驚いてこちらに振り向いた。
そして、私を見て一言呟く。
「や、山神様だ……」
「違う」
どうやら、レギュは私の事を山神だと思ったらしい。
「な、なら誰なんですか?」
「知らん」
「やっぱり、山神様……」
どうせ、自分自身の名前も分からないし、なんて呼ばれようがいいか。
「お前の名前は」
「レギュと言います、山神様」
「レギュはなんでこんな場所に?」
「村の生贄に選ばれたからです」
さっき人間達が言っていた事と同じか。
「私の住んでいた村では一度もモンスターに襲われませんでした。なので、今後も襲われない様に山神様に生贄を捧げる事になり私が選ばれました」
「そうか」
先程聞いた事と同じなので、私は興味が失せた。それよりも腹が減った。
「その果物食べていいか?」
「もちろんです。山神様の為に用意したものですので」
「そうか」
私は遠慮せず食べ始める。
「レギュ、お前も食え」
「い、いえ。私は大丈夫です」
「いいから」
「はい……」
こうして、山神(私)とレギュによる大穴での暮らしが始まった。
辺りを見回すと、大きい岩や小さい岩などが視界に入って来る。
そして、上から光が降りて来ているのに気が付き、顔を上げる。
どうやらココは大穴の底らしい。
頂上に大きな穴が空いており、私はあそこから落ちて来たのか?
上を見ると、とても高く自力では上に出られそうに無いくらいである。
「高いな……。これは登るのは無理そうだ」
私は再度周りを見回す。とても大きい穴の様で人間が百人居ても全然狭さを感じないくらいには大きい。
また、穴の中とは思えない程に自然が豊かで、光が届いているせいなのか、木々が生い茂っていた。
「そもそも、私は何故こんな場所に居るんだ……?」
何故ココにいるか思い出してみるが、全然記憶に無い。
「あれ……私の名前って……?」
自分自身の名前も思い出せ無い。
だが、頭のどこかで十歳くらいの男の子が思い浮かぶが、それが誰なのかは思い出せない。
「人間族の男の子?」
自分に尻尾や頭から耳が生えている事から私は獣人だと分かるが、人間族の友達なんて居たのか?
「全く、過去の事が思い出せない……。記憶喪失ってやつか?」
そんな時に、お腹から音が鳴る。どうやら、気絶している間に結構な時間が経っていたらしくて、お腹が減っていた様だ。
辺りを見回すと木々は生い茂っているが、食べられそうな実などは無く、湧き水が沸いているくらいだ。
「水を飲んで誤魔化すか」
周りを注意深く確認しながら大穴を探索したりしたが、やはり食べられる物は何も無かった。
「それにしても、この高さで良く生き残れたな。普通は即死だと思うが……運が良かったのか?」
生きている事喜ばしい事だが、その代わり自分が誰なのか分からない。
どうやら、生活面や知識面の記憶は残っているが、思い出部分の記憶が全て無くなっていた。
昔の事を思い出そうとしていると、又もやお腹の虫が鳴いた。
「今は生きているが、何日かしたら空腹で倒れて、そのまま終わりだな」
何故か冷静に判断している自分がいる。
そんな事を考えていると、上から影が指す。
「ん?」
私は上を向く。かなりの高さがあるが、私自身視力が良いのか、影が指した理由か分かる。
「人間族か?」
どうやら、人間族の集団が居るのが見える。何か話しているらしいので、聴くことに集中した。
「皆の衆、今日は生贄の儀式を行う」
二十人くらいの人間達が跪いていて、一際装飾が立派な歳を得た男が大きな声で言う。
「皆も、知っている通り我らの村はモンスターが来たことが無い! これは山神様のお陰だ」
他の人間達はブツブツと何かを呟きながら、両手を天に掲げて、また地面に顔を付ける。
「そして、今日は山神様に感謝の証として、生贄を捧げる」
そう言って、年寄りの男は唯一膝まづいていない女の子に視線を移す。
その女の子は年寄りの次に豪華な装飾をしている。だが女の子の表情は豪華な装飾とは逆に優れない。
「レギュよ、お前も今年で十歳になったな。なので今回山神様の生贄に選ばれた。光栄に思うように」
「……」
「分かっておるな?」
レギュと言う女の子はコクンと頷くだけであった。
「それでは皆の衆用意せよ!」
人間達は、一斉に立ち上がりレギュと言う女の子を中心に円を描くように囲む。そして、何やら儀式を一時間程行なっていた。
「では、レギュを大穴に入れるのだッ」
そう言って、レギュに植物の蔓を巻いて大穴にゆっくり落としていく。それと同時に生贄用に果物や肉、野菜なども降りてきた。
人間達はレギュに近づいてみんな一言ずつ話しているようだ。
「レギュごめんな……」
「レギュちゃん私達の為に……うぅ……」
みんな申し訳無さそうにレギュを見ている。そして、レギュが大穴にゆっくりと降りて来る。
人間族は見えなくるレギュに安堵した表情をしている。
「レギュには悪いが、ウチの子じゃ無くて良かった……」
「あぁ、確かに。レギュは拾われっ子だからみんなから反対が出なかったもんな」
レギュが居なくなった事を良いことに人間達は好き放題言っている。
「よし皆の衆! これにて生贄の儀式を終わらせる。後は一週間毎に供物をこの大穴から投げ込むのだ!」
人間達は儀式が終わったのか大穴から去っていく。
残されたのは、私とレギュと供物だけだった……。
レギュは大穴の底に着いてからも周りなど一切気にせず、地面を見ているだけだった。
私は近寄って話しかけてみる事にした。
「おい」
「──ッ!?」
レギュはまさか大穴の底に誰かが居ると思わなかったのか、とても驚いてこちらに振り向いた。
そして、私を見て一言呟く。
「や、山神様だ……」
「違う」
どうやら、レギュは私の事を山神だと思ったらしい。
「な、なら誰なんですか?」
「知らん」
「やっぱり、山神様……」
どうせ、自分自身の名前も分からないし、なんて呼ばれようがいいか。
「お前の名前は」
「レギュと言います、山神様」
「レギュはなんでこんな場所に?」
「村の生贄に選ばれたからです」
さっき人間達が言っていた事と同じか。
「私の住んでいた村では一度もモンスターに襲われませんでした。なので、今後も襲われない様に山神様に生贄を捧げる事になり私が選ばれました」
「そうか」
先程聞いた事と同じなので、私は興味が失せた。それよりも腹が減った。
「その果物食べていいか?」
「もちろんです。山神様の為に用意したものですので」
「そうか」
私は遠慮せず食べ始める。
「レギュ、お前も食え」
「い、いえ。私は大丈夫です」
「いいから」
「はい……」
こうして、山神(私)とレギュによる大穴での暮らしが始まった。
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