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第2章

53話 アトスとの別れ

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「デグ、私そろそろ限界かも……」
「見ろ、門が見えている。後少しだ!」

 俺とベムは、やっと人間族の門まで来た。だが、中型も追いかけて来てすぐ後ろまで迫って来ている。

「よし! 着いた!」
「はぁはぁ……」

 ベムは門の中に入った瞬間倒れ込んだ。

「もう、無理……。走れない……」
「よく頑張ったな」

 門を閉めて、門番がこちらに近づいて来た。

「お前ら大丈夫か!」
「あぁ、なんとかな! それよりも中型二体がこちらに向かって来ているぞ!」
「その話は聞いている。お前らは奥に行って休んでいろ」
「そうさせてもらうぜ」

 俺とベムは疲れた身体を引きづりながら自分たちの家に帰る事にした。

「私は家族の所に行かないと……」
「行ってこい。アトスは俺が見に行くから」

 一旦、ベムと別れてから俺はアトスの家に向かう事にした。

「デグさんご無事で!」

 先行して状況を伝えてくれた仲間が近寄って来た。

「あぁ、お前らも無事で何よりだ」
「ベムさんは?」
「ベムは、家族の様子を見に行った。俺は今からアトスの様子を見に行く」
「私達も着いていきます」

 俺達はアトスの家に尋ねたが、アトスは居なかった……。

「きっと、アトス君も逃げ出したのでしょう」

 街を見回すと、大分人が減って居た。門番に聞いた所、半数ぐらいの住人がここを出て行ったと聞いた。
 そんな事を話しながら道を歩いていると声を掛けられた。

「おい、あんた。デグって言うのかい?」
「そうだが、なんだ?」
「あんたに、言伝を頼まれた」
「言伝だと?」
「あぁ、アトスってガキからだ」

 アトスだと!

「なんて言ってた!」
「俺はこの場所から逃げる、だから心配しないでくれ的な事を言っていたな」
「そうか……」

 アトスに会えなかったのは残念だが無事なら良かった。

「なんか、獣人のガキを連れていたな」
「獣人?」
「あぁ、奴隷的な事を言って居たが、よく分からん」
「そうか。伝えてくれてありがとう」

 俺はアトスの事を聞いてから、ベムに会いに行く。

「ベム、アトスはココから逃げ出したらしい」
「分かった……。アトスが無事なら何でもいい……」
「だな!」
「ベムの家族は無事だったのか?」
「うん……。だけどこの後どうなるか心配……」

 確かに。この先どうなるか分からない。
 先程から遠くの方で大きい音が聞こえる。

 すると、仲間の一人が呟いた。

「そ、そんな……。デグさん、ベムさん大岩が……」

 仲間の視線を追って俺も目を向けると、そこには俺達の国を守ってくれる大岩が崩れるのが見えた。

 こ、これは不味いな……。

「お前ら! 俺達もここから逃げるぞ!」
「デグ……?」
「「デグさん…?」」
「早く準備しろ! 荷物なんかは置いていけ! まずは家族だけ連れて逃げるぞ! いいか!」
「「はい」」

 こうして、俺達パーティーは家族を連れて数十人規模で人間族の住処から逃げる事にした。

「よし! お前ら早足でここから離れるぞ!」

 数分で家族を集め、俺達は門から逃げる事にした。正門の方では中型と健闘している国の憲兵が戦闘しているが、恐らく一日も持たないだろう。そして捕食されて中型が強くなる……。
 やはり、逃げるのが正解だな……。

「ベム、私達は置いて行っていいんだよ? 私とお父さんが一緒に逃げても、体力持たないわ」
「大丈夫……。私が絶対守るから……」

 俺以外のパーティーメンバーは家族を連れて来ている。

「よし、弱音などは移動してからにしよう! まずはみんな無事に生きる事だ。行くぞ!」

「「「「「おう!」」」」」

 俺達パーティー以外にも、他の冒険者パーティーも加わった為、小型が一二体出ても、恐らく大丈夫だろう。
 問題は非戦闘員達を守りながら進むのが大変だが、そこは運だな。

 アトスの奴とも途中で合流出来ればないいが……とりあえず今はこの人数を安全な場所まで連れて行く事だな。
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