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第2章

42話 双子の獣人族達の過去……

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 私の名前はチル、姉の名前はロピ。さっきまで私達は変な男に追われていた。

「チルちゃん、大丈夫?」
「うん、平気。姉さんは?」
「大丈夫だよ」
「あの、男なんだったんだろ?」
「うーん、なんかどこかで聞いた事あるような声だったね」

 ロピ姉さんが顎に手を置いて首を傾げ何やら考えている。

 私は人間族が嫌いだ。
 私やロピ姉さんをいつも虐める。

「ご飯途中までしか食べられなかったね」
「うん」
「チルちゃん、お腹減ってない?」
「全然大丈夫だよ。姉さんこそ全然食べてなかったけど大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だよ!」

 ロピ姉さんは笑顔で私の頭を撫でてくれる。私達は双子だ。だがロピ姉さんは凄いしっかりしているし、いつも私を守ってくれる。

 私を心配させない様に常に笑顔だ。

 私自身もロピ姉さんの為に何かしたいと常に思っているが、今の所何も出来てはいない……。

 私達は一年前にこのスラム街にやってきた。
 最初は家族四人で人間族の住処に避難してきたが、来て早々人間族の奴隷にされてしまった。運が良ければ奴隷だとしても前より快適な暮らしが出来ると聞いており、楽しみにしていたがどうやら私達家族のご主人様は悪い人だったらしい。

 父は常に働かされて、休憩など取らせてもらえず過労死してしまった。

 母は、美人だったせいか夜になると、ご主人様の部屋にいつも連れてかれていた。そんな状況をいつも私とロピ姉さんは見ていた。それから母は徐々に元気が無くなって来た。

 そんなある日、ご主人様は母だけでは無く何故かロピ姉さんと私を部屋に呼んだ。母は必死に抵抗していたがご主人様は聞いてくれなく、どうにか次の日にしてもらった。

 それから母の行動は早かった。荷造りをして屋敷を出る事にしたのだ。私達三人はその日に屋敷を抜け出したが、途中でご主人様に見つかり追われた。

 母は捕まり私達の目の前で殺された……。

 私は呆然と見ているだけしか出来なかった……

 だがロピ姉さんは違った、私の手を引いて逃げ出したのだ。必死に逃げていく内に、ある場所を境に追っ手が私達を追いかけて来なくなったのだ。
 その理由としてはスラム街に入ったからと言うのは後で知った事だ。

 私とロピ姉さんは、それから今までの一年間をスラム街で生きている。食べ物などは盗ってきたり、残飯などを漁って、どうにかこうにか生きているが、少し前に私が体調を崩してしまった。

 ロピ姉さんは薬を買ってくると言い、しばらく外に出ていって、戻ってきた時には確かに薬を持っていた。だが、何故か服が乱れていたり破られていた事に疑問を持ちながらもその時は深く考えなかった。

「チルちゃん、今日はどうしようか?」
「あの住処は、変な男にばれたから他を探さないと」
「そうだねー。なら今日は寝る場所探しだね」

 姉さんはいつも笑顔だ。妹の私を心配させない様にと、無理矢理笑顔の時もあるが、私は姉さんの笑顔が大好き。

 姉さんは私の為に今、変な奴と契約して仕事を貰っているらしい。

 スラム街では中々の稼ぎになる為最近はご飯などにあまり困らなくなった……。

 だが、姉さんが何の仕事をしているかは昨日知ってしまった。
 姉さんがいつもの様に仕事に行くと言って出掛けた際、私は尾行して姉さんが何の仕事をしているか気になり姉さんの後を付けた。

 そこで、姉さんの仕事内容を知ると私は絶望と申し訳無さで胸が締め付けられる思いをした。
 まさか姉さんが私の為に母と同じ思いをしてお金を稼いでいるとは思わなかったのだ。

 私はロピ姉さんに駆け寄ったが途中で変な奴ら二人に捕まり蹴られたり殴られたりして姉さんの場所まで辿り着けずに地面に蹲ってしまう。
 
 しばらくするとロピ姉さんと男が小屋から出てきた。姉さんは小屋から出て来てその場で倒れた。息はしているが、いつものニコニコした表情は消え目に光が宿ってない様に見えた。どうやら姉さんは私を認識していないらしい。

 そんな事を痛む身体で考えていたら、人間族の男の子が変な奴らに殴りかかっているのが見えた。だが、抵抗も虚しく男の子は暴行されて気絶させられていた。

 しばらくすると変な奴らも去って行き私は姉さんに近づいて呼びかけた。

「姉さん! 姉さん! 大丈夫?」
「あれ?チルちゃん。迎えに来てくれたの?」

 姉さんはいつもの姉さんだった。ニコニコ笑い私の頭を撫でてくれる。
 どうやら、私が見ていた事には気づいていなかったらしい……。

「姉さん! 私も姉さん仕事お手伝いしたい!」
「それは、ダーメー。チルちゃんは早く大きくなって幸せになればいいだけ!」

 いつもの、間延びした声に癒されながらも私自身は悔しくてたまらなかった。

 私のせいで姉さんが……。

 恐らく、少し前に私が体調を崩した時からだろうと私は思っている。
 とりあえず、その日は帰る事にした。ついでに人間族の男の子が着ている服や持ち物を全て剥ぎ取った。

 私はこの現状を変えたいと思ったが私の力ではどうにも出来ないと悟っている……。
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