過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
42 / 492
第2章

41話 スラム街での出来事 2

しおりを挟む
 チンピラみたいなのに、ボゴボコにされ気絶してから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。目が覚めたら真っ暗になっており、獣人の姉妹は居なくなっていた。

 ──ッそして、俺の着ている物も無くなっていた?!

「流石にパンツまで取られるとは思わなかったな……」

 あちこちに痛みが走り顔を歪める。

「先読みの訓練しても、相手の攻撃とか読めないな」

 俺はしばらく裸で呆然と辺りを見回した。スラム街では裸の人間はそれ程珍しく無いが、流石にモロ見えの奴は居ない。

 段々と意識が覚醒してきて急に羞恥心にかられ、急いで大事な所を隠した。

 だが、俺の事を気にする人などは居なく、朝と同じく道に寝ている者も居れば、その寝ている人から何かしらを盗もうとしている人も居る。

 あの子ら、こんな場所に住んでいて大丈夫なのかな……。
 俺は気になったが土地勘の無いのに探しようが無い。

「とりあえず、今日は帰るか」

 俺は、スラム街から出て全速力で家に帰る。



 次の日、目が覚めた俺は本来なら冒険者になったので早速依頼をこなして行きたい所だが、昨日の獣人姉妹がどうしても気になってしまい、もう一度スラム街に行く事にした。

「また、変な奴に絡まれたくないな……」

 昨日殴られたり、蹴られたりした時の痛みがまだ残っている為、次にまた会ったら同じ目に遭わされるかもしれないという恐怖感に駆り立てられる。

 しばらく歩いたらスラム街の入り口に辿り着いた。
 スラム街に住む住人達は基本スラム街を出られない様になっている様だ。

「刑務所みたいだな」

 スラム街の住人はスラム街を出られないが、その代わり罪人や人間族の住処に来た獣人族などはスラム街に逃げ込む事で奴隷にされなくて済むらしい。
 
 しかもスラム街は法が無い為、殺人、暴行、強姦などしても罪に問われないので犯罪者などには楽園となっている。

「恐らく、あの獣人姉妹も奴隷にならない様にスラム街に住んでいるんだろうな……」

 俺は昨日と同じ道を慎重に歩いて行くが、獣人姉妹は見つからない。
 更に奥へと歩いて行くと柄の悪そうな者達が増えていく様な気がする。

 注目を浴びている感じだったので、メイン通りではなくて更に人気の無い道を通る事にした。
 
 ──ッ居た!!

「あの子達昨日の獣人姉妹だな……」

 俺は見つから無い様に獣人の姉妹を見る事にした。


「姉さん、水とパン盗って来たよ」
「チルちゃん、ありがとうー」
「姉さん、他に何か手伝う事はない?」
「もう、ご飯出来るから座っててー」
「うん」

 どうやら、妹の方はチルと言うらしい。チルは常に気難しい表情である。
 一方姉の方は常にニコニコ笑っている。

 二人の獣人はシクと同じく見た目は人間族とほぼ同じで耳だけ獣耳になっている。

「おまたせー。チルちゃんいつも質素なご飯でごめんねー」
「全然大丈夫。姉さんのご飯はいつ食べても美味しいから」
「ありがとうー」

 そして二人は薬草的な草のみを食べて居た。
 あれが、朝食か?! あんな量でお腹が満たされる筈も無い……。

「姉さん、今日も美味しいよ」
「良かったー。本当はもっとチルちゃんに食べさせてあげたいんだけどねー」
「ううん、これで十分お腹いっぱい」

 ニコニコしていた姉の表情が一瞬だけ申し訳無さそうになり、また直ぐに笑顔に戻った。

「こんなんじゃ、お姉ちゃん失格だねー」
「そんな事ない。姉さんは最高の姉さん」
「ありがとうー。これからもバンバン稼ぐよー」
「ね、姉さん。その事なんだけど私も姉さんの代わりに稼ぎたい」
「それはダーメ。チルちゃんは私と違って綺麗なままでいて欲しいからー」
「姉さん……」

 妹のチルが物凄い悲しそうな表情になる。姉は、あの男に……。
 俺は我慢出来なくなり、せめてご飯だけでも、どうにかしてあげようと姉妹達に近づいてみた。

「ねぇ、君達」
「「──ッ!?」」

 声を掛けた瞬間、姉妹の行動は早かった。二人は即座に逃げ出したのである。

 「──ッえ?! ちょ、ちょっと待って!」

 俺は姉妹を追いかけるが、さすが獣人。子供でも走るスピードが物凄く早く、俺は全力で追いかけても距離が縮まる所か徐々に離されていく。

 クソ! 全然追いつけねぇ!?

 俺はとうとう姉妹を見失ってしまった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

モブ高校生、ダンジョンでは話題の冒険者【ブラック】として活動中。~転校生美少女がいきなり直属の部下とか言われても困るんだが~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は【ブラック】という活動名でダンジョンに潜っているAランク冒険者だった。  ダンジョンが世界に出現して30年後の東京。  モンスターを倒し、ダンジョンの攻略を目指す冒険者は、新しい職業として脚光を浴びるようになった。  黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。果たして、白桃の正体は!?  「才斗先輩、これからよろしくお願いしますねっ」  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※序盤は結構ラブコメ感がありますが、ちゃんとファンタジーします。モンスターとも戦いますし、冒険者同士でも戦ったりします。ガチです。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ※お気に入り登録者2600人超えの人気作、『実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する』も大好評連載中です!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...