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第2章
38話 同じスキルの使い手
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能力上昇の使い手は、どうやらいつも酒場にいるらしい。俺達はさっそく酒場に向かっている。
「デグ達は、どうやってスキルを使用しているの?」
「うーん、身体強化の場合は大体、強化する部位に気を集める? 送る? 的な感覚だな」
「身体強化は人口も多いし、使い方などはすぐ分かった……。ベムは部位が目だから身体強化の中では結構珍しい……」
ベムがニヤリと笑ってドヤ顔をしている。そんなベムをデグが、呆れた表情で見ていた。
「それと、アトス。お前のスキルやランクについては他の奴らには内緒にしといた方がいいな」
「ベムもそう思う」
「なんで?」
「それは、今から会うやつの話を聞けば分かるかも。着いたぜ」
目の前に小さな酒屋があり、俺達は入る事にした。店内は寂れていて、客は数人だけだった。
店の奥に一人で飲んでいる男がいる。目当ての男らしき人物にデグが近づいて話しかけに行った。
しばらく交渉していたのか、その後にデグが俺達を呼ぶので俺とベムは男が座っている席に向かう。
「アトス、やっぱり能力上昇の使い手だった。話を聞かせてもらおうぜ」
デグの前で酒を飲んでいる男がどうやら黒い人が言っていた能力上昇の使い手の様だ。
「アトスと言います。よろしくお願いします?」
「……おう。俺はカカだ。能力上昇のスキルを得たのか?」
カカと言う男は髭を手入れして居ないのか、伸び放題であり、疲れ切った顔は生気をあまり感じられなかった。
「はい。今日スキル儀式により能力上昇を得ました」
「はっ! ご愁傷様」
カカは小馬鹿にした様に笑う。
「どういう意味でしょうか?」
「そのまんまの意味だ。能力上昇のスキルなんてゴミだ。得たが最後、冒険者のパーティに入れて貰ぇねんだよ」
「どういう意味だ?」
デグがカカに向かって聞く。
「あまりにも使えねースキルだから、みんなパーティに入れたくねーんだよ」
「そんなに弱いのか?」
「これを見な」
男が首にぶら下げていたプレートを見せてくれた。そこには
【能力上昇(サポート防御 C)】と記載されていた。
「防御って書いてあるがどんな能力なんだ?」
「仲間の防御力をあげるのさ」
「それは、普通に強いとベムは思う……」
「だよな、俺もそう思うが」
ベムとデグが首を捻る。俺も仲間の防御を上げるのは強いと思うんだけどな……?
「はは! これだから何も知らない奴は気楽に言ってくれるぜ」
カカは先程から随分やさぐれている様だ。
「お前、アトスとか言ったか、これ見えるか?」
カカが立ち上がり少し広い場所まで移動する。
そして、重心を低くして手を前に翳して唱える。
「ガード!」
カカが唱えると、カカの翳した前の地面に青いラインが道の様に浮かび上がっていた。
……長さ的には10メートルくらいで幅は人間の肩幅くらいだ。
「この青いラインみたいなの何?」
「これが、俺達の能力だ。この道に仲間が乗れば俺の場合は仲間の防御力を上げる事が出来る」
俺とカカが話していると、デグとベムが不思議そうな顔をしている。
「な、なぁ。お前ら二人は何を話しているんだ?」
「え? デグこの地面にある青いラインの事だよ?」
「「青のライン……?」」
デグとベムがよく分からないと言った表情だ。
「え? デグこの青ライン見えないの?」
「全く見えん」
「これが能力上昇がバカにされている一つさ。俺ら能力上昇持ちしかこの青いラインは見えない。しかもこの青いラインに仲間が乗らないと能力アップがしない」
なるほど。
確かに、これはスキル効果の恩恵を受けづらいな……。
「実際どらくらい防御があがるの?」
「まぁ、俺はCランクだから四割程度しかスキルの効果が上がらない。それでもいいなら青のラインの上に立ってみな」
俺は青のラインに入った。その瞬間デグがこちらの反応が出来ないスピードで殴ってくる。
「なにするんだよ!」
「おーー。アトスが傷一つ無い。すげーな」
そういう事は事前に言って欲しかった……
「能力自体は俺も強いと思う。だが、この見えないライン上に仲間が乗らないと意味がネェんだよ! モンスターとの戦闘とかで、普通は止まってたりしないだろ? だから事実上このスキルはゴミだ」
カカは、自分のスキルが嫌いなのか忌々しそうに自分が出した青いラインを見ていた。
「アトスには、そのラインが見えるの……?」
「見える。ベム達は見えないんだよね?」
「見えない……」
なるほど。このライン上に居ないとスキルの効果が発動しない。だが、他の人にはそのラインが見えないから、パーティのみんながライン上を通る場所に設置しないとダメなのか……。
確かにこれは厳しいな……
「分かったか? だから俺ら能力上昇はお呼びじゃないんだよ。仲間にも見えるならまだ使い様があったが、見えないなら使い勝手が悪過ぎて、パーティではお呼びじゃないんだよ」
「「……」」
デグとベムは俺を心配そうな目で見ていた。
「坊主、これから苦労するぜ……」
そう言って、カカは再び席に着き酒を飲み始める。
なんか、みんな悲惨な顔をしているが、ちょっと待てよ?
これって、俺がずっと訓練していた先読みで、どうにか対応出来そうじゃないか?
「アトス、落ち込まないで……」
「そうだぜ。もしパーティ組めなくても俺達がいるし!」
「あ、あぁ。落ち込まない様に気をつけるよ」
まだ、分からないのでデグとベムには曖昧な返事だけしとく。
まぁ、まだ当分モンスター退治とかするつもりは無いし、確認しようが無いがな。
「まぁ。坊主大丈夫だ。ここは大岩で囲まれているから昔みたいに討伐系の依頼なんて殆どねぇーからな。雑用系の依頼なら効率は悪いが生きてはいける」
カカにお礼を言って、俺達は店を出る事にした。
帰り道は、デグとベムは心配そうに俺を慰めてくれるが、俺自身はカカに能力上昇の説明を聞いてからは、そんなに悲観しては無かった。
試す時がいつになるか分からないが、モンスターと遭遇した時はやってみよう。
「デグ達は、どうやってスキルを使用しているの?」
「うーん、身体強化の場合は大体、強化する部位に気を集める? 送る? 的な感覚だな」
「身体強化は人口も多いし、使い方などはすぐ分かった……。ベムは部位が目だから身体強化の中では結構珍しい……」
ベムがニヤリと笑ってドヤ顔をしている。そんなベムをデグが、呆れた表情で見ていた。
「それと、アトス。お前のスキルやランクについては他の奴らには内緒にしといた方がいいな」
「ベムもそう思う」
「なんで?」
「それは、今から会うやつの話を聞けば分かるかも。着いたぜ」
目の前に小さな酒屋があり、俺達は入る事にした。店内は寂れていて、客は数人だけだった。
店の奥に一人で飲んでいる男がいる。目当ての男らしき人物にデグが近づいて話しかけに行った。
しばらく交渉していたのか、その後にデグが俺達を呼ぶので俺とベムは男が座っている席に向かう。
「アトス、やっぱり能力上昇の使い手だった。話を聞かせてもらおうぜ」
デグの前で酒を飲んでいる男がどうやら黒い人が言っていた能力上昇の使い手の様だ。
「アトスと言います。よろしくお願いします?」
「……おう。俺はカカだ。能力上昇のスキルを得たのか?」
カカと言う男は髭を手入れして居ないのか、伸び放題であり、疲れ切った顔は生気をあまり感じられなかった。
「はい。今日スキル儀式により能力上昇を得ました」
「はっ! ご愁傷様」
カカは小馬鹿にした様に笑う。
「どういう意味でしょうか?」
「そのまんまの意味だ。能力上昇のスキルなんてゴミだ。得たが最後、冒険者のパーティに入れて貰ぇねんだよ」
「どういう意味だ?」
デグがカカに向かって聞く。
「あまりにも使えねースキルだから、みんなパーティに入れたくねーんだよ」
「そんなに弱いのか?」
「これを見な」
男が首にぶら下げていたプレートを見せてくれた。そこには
【能力上昇(サポート防御 C)】と記載されていた。
「防御って書いてあるがどんな能力なんだ?」
「仲間の防御力をあげるのさ」
「それは、普通に強いとベムは思う……」
「だよな、俺もそう思うが」
ベムとデグが首を捻る。俺も仲間の防御を上げるのは強いと思うんだけどな……?
「はは! これだから何も知らない奴は気楽に言ってくれるぜ」
カカは先程から随分やさぐれている様だ。
「お前、アトスとか言ったか、これ見えるか?」
カカが立ち上がり少し広い場所まで移動する。
そして、重心を低くして手を前に翳して唱える。
「ガード!」
カカが唱えると、カカの翳した前の地面に青いラインが道の様に浮かび上がっていた。
……長さ的には10メートルくらいで幅は人間の肩幅くらいだ。
「この青いラインみたいなの何?」
「これが、俺達の能力だ。この道に仲間が乗れば俺の場合は仲間の防御力を上げる事が出来る」
俺とカカが話していると、デグとベムが不思議そうな顔をしている。
「な、なぁ。お前ら二人は何を話しているんだ?」
「え? デグこの地面にある青いラインの事だよ?」
「「青のライン……?」」
デグとベムがよく分からないと言った表情だ。
「え? デグこの青ライン見えないの?」
「全く見えん」
「これが能力上昇がバカにされている一つさ。俺ら能力上昇持ちしかこの青いラインは見えない。しかもこの青いラインに仲間が乗らないと能力アップがしない」
なるほど。
確かに、これはスキル効果の恩恵を受けづらいな……。
「実際どらくらい防御があがるの?」
「まぁ、俺はCランクだから四割程度しかスキルの効果が上がらない。それでもいいなら青のラインの上に立ってみな」
俺は青のラインに入った。その瞬間デグがこちらの反応が出来ないスピードで殴ってくる。
「なにするんだよ!」
「おーー。アトスが傷一つ無い。すげーな」
そういう事は事前に言って欲しかった……
「能力自体は俺も強いと思う。だが、この見えないライン上に仲間が乗らないと意味がネェんだよ! モンスターとの戦闘とかで、普通は止まってたりしないだろ? だから事実上このスキルはゴミだ」
カカは、自分のスキルが嫌いなのか忌々しそうに自分が出した青いラインを見ていた。
「アトスには、そのラインが見えるの……?」
「見える。ベム達は見えないんだよね?」
「見えない……」
なるほど。このライン上に居ないとスキルの効果が発動しない。だが、他の人にはそのラインが見えないから、パーティのみんながライン上を通る場所に設置しないとダメなのか……。
確かにこれは厳しいな……
「分かったか? だから俺ら能力上昇はお呼びじゃないんだよ。仲間にも見えるならまだ使い様があったが、見えないなら使い勝手が悪過ぎて、パーティではお呼びじゃないんだよ」
「「……」」
デグとベムは俺を心配そうな目で見ていた。
「坊主、これから苦労するぜ……」
そう言って、カカは再び席に着き酒を飲み始める。
なんか、みんな悲惨な顔をしているが、ちょっと待てよ?
これって、俺がずっと訓練していた先読みで、どうにか対応出来そうじゃないか?
「アトス、落ち込まないで……」
「そうだぜ。もしパーティ組めなくても俺達がいるし!」
「あ、あぁ。落ち込まない様に気をつけるよ」
まだ、分からないのでデグとベムには曖昧な返事だけしとく。
まぁ、まだ当分モンスター退治とかするつもりは無いし、確認しようが無いがな。
「まぁ。坊主大丈夫だ。ここは大岩で囲まれているから昔みたいに討伐系の依頼なんて殆どねぇーからな。雑用系の依頼なら効率は悪いが生きてはいける」
カカにお礼を言って、俺達は店を出る事にした。
帰り道は、デグとベムは心配そうに俺を慰めてくれるが、俺自身はカカに能力上昇の説明を聞いてからは、そんなに悲観しては無かった。
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