33 / 492
第2章
32話 アトスの苦悩
しおりを挟む
俺のせいだ……
俺のせいだッ!
俺のせいだッ!!
シクは俺を守る為、自分自身が囮になって、小型を惹きつけて去った……。
──ックソ! 俺が弱いから。
俺は遅いながらも、今出せる一番早いスピードでシクが去った後を追いかける。
せっかくシクが俺の為に小型を惹きつけたのだから、シクの気持ちを汲み取るなら、ここは逆方向に逃げるべきである。
しかし、頭で分かって居ても心が言う事を聞かない。
こんなスピードでシクに追いつける筈もなく、大分走ったが結局、見つける事が出来なかった。
「はぁはぁ……、シク置いてかないでくれ……」
頭の中では、早く逆方向に逃げろッ! シクの行動を無駄にする気か! と訴え掛けているが、やはり心は言う事を聞かない。
ずっと走っていたが、とうとう体力の限界が来て足を止めてしまう。
だが、心では走れ! 追いつけなくなるぞと騒いでいる様だ。
それからも、必死に追いかけたが結局シクを見つける事が出来ずに夜になった。
普段なら夜の移動は危険だが、今はそんな事を考えずにひたすら進む。
「はぁはぁ、シクどこだ……」
ずっと走り続けて体力が尽き俺は気絶した……
「う……ん……」
俺は目を開ける。
「気絶しちゃったのか」
どれくらい寝ていたのか分からないが周りは明るい為、結構な時間気を失っていたらしい。
「流石に、もう追いつけないかな……」
追いつけ無い事を理解しつつも、もしかしたら少し先にシクが居るかもしれないという思いから、先を歩き始める。
そこから、何時間か歩いていると、先の草木から音が聞こえた。
「──ッ!?」
モンスターかッ?!
俺は最大限の警戒をして、ゆっくり後ろに下がり、物音から距離を取る。
音を立てながら、徐々にこちらに近づいて来る……
モンスターだと思い警戒をしていたが、話し声みたいなのが聞こえて来た為、どうやらモンスターとは違うらしい。
「ベム、見つけたか?」
「まだ……。だけど私達の恩人の為に絶対見つけるべき……」
「その通りだ!」
ふぅ……どうやら人間らしい。
俺自身この世界に来てからシク以外の人間と話した事がない為、若干の緊張と警戒をする。
だが、今の状況を少しでも好転する為にも多少危険そうではあるが、話してみるのも、いいかもしれない。
人間と会うことによるメリットを考えていたら、前の茂みから二人の人間が現れた。
一人は大柄の男で背中に自分の身丈程大きい剣を背負っている。
二人目は小柄の少女である。下手したら俺より小さいかも?
そんな二人は俺の事を見た瞬間驚いた顔をして、その後に笑顔になっていた。
……なんで笑顔?
「おいおい! ベム! あの少年はアトスか?!」
「うん。あの少年は私達の恩人の子供、アトス……」
な、なんで、俺の名前を知っているんだ?!
「あの、どちら様でしょうか?」
「まぁ、なんて賢いお子さん……。デグとは大違い……」
「うるせ! だが、確かに利発で利巧 で利口そうな少年だ」
なんなんだ? 初対面だから敬語を使っただけなのに……
でも、十歳の少年が使う様な言葉遣いでもないか。
「いきなり悪かったな。君はアトス君か?」
「こんなに利発そうな少年はあのお方の子供で間違い無い……」
「ハイ、僕はアトスと言いますが、貴方方は?」
「俺たちは冒険者だ。俺はデグ、こっちの小さいのがベムだ。よろしくな!」
「小さいは余計……。私はベム、よろしく……」
冒険者? なんで俺の名前を知っているんだ?
「実はアトスを探していた」
「探していた? 僕をですか?」
「そうだ。俺たちは昨日小型に追われていた所を獣人の女性に助けられた。それについて話したい事がある」
「獣人の女性!?」
シクの事だ!!!!
ここに来て、シクの情報が手に入りそうだ。
俺のせいだッ!
俺のせいだッ!!
シクは俺を守る為、自分自身が囮になって、小型を惹きつけて去った……。
──ックソ! 俺が弱いから。
俺は遅いながらも、今出せる一番早いスピードでシクが去った後を追いかける。
せっかくシクが俺の為に小型を惹きつけたのだから、シクの気持ちを汲み取るなら、ここは逆方向に逃げるべきである。
しかし、頭で分かって居ても心が言う事を聞かない。
こんなスピードでシクに追いつける筈もなく、大分走ったが結局、見つける事が出来なかった。
「はぁはぁ……、シク置いてかないでくれ……」
頭の中では、早く逆方向に逃げろッ! シクの行動を無駄にする気か! と訴え掛けているが、やはり心は言う事を聞かない。
ずっと走っていたが、とうとう体力の限界が来て足を止めてしまう。
だが、心では走れ! 追いつけなくなるぞと騒いでいる様だ。
それからも、必死に追いかけたが結局シクを見つける事が出来ずに夜になった。
普段なら夜の移動は危険だが、今はそんな事を考えずにひたすら進む。
「はぁはぁ、シクどこだ……」
ずっと走り続けて体力が尽き俺は気絶した……
「う……ん……」
俺は目を開ける。
「気絶しちゃったのか」
どれくらい寝ていたのか分からないが周りは明るい為、結構な時間気を失っていたらしい。
「流石に、もう追いつけないかな……」
追いつけ無い事を理解しつつも、もしかしたら少し先にシクが居るかもしれないという思いから、先を歩き始める。
そこから、何時間か歩いていると、先の草木から音が聞こえた。
「──ッ!?」
モンスターかッ?!
俺は最大限の警戒をして、ゆっくり後ろに下がり、物音から距離を取る。
音を立てながら、徐々にこちらに近づいて来る……
モンスターだと思い警戒をしていたが、話し声みたいなのが聞こえて来た為、どうやらモンスターとは違うらしい。
「ベム、見つけたか?」
「まだ……。だけど私達の恩人の為に絶対見つけるべき……」
「その通りだ!」
ふぅ……どうやら人間らしい。
俺自身この世界に来てからシク以外の人間と話した事がない為、若干の緊張と警戒をする。
だが、今の状況を少しでも好転する為にも多少危険そうではあるが、話してみるのも、いいかもしれない。
人間と会うことによるメリットを考えていたら、前の茂みから二人の人間が現れた。
一人は大柄の男で背中に自分の身丈程大きい剣を背負っている。
二人目は小柄の少女である。下手したら俺より小さいかも?
そんな二人は俺の事を見た瞬間驚いた顔をして、その後に笑顔になっていた。
……なんで笑顔?
「おいおい! ベム! あの少年はアトスか?!」
「うん。あの少年は私達の恩人の子供、アトス……」
な、なんで、俺の名前を知っているんだ?!
「あの、どちら様でしょうか?」
「まぁ、なんて賢いお子さん……。デグとは大違い……」
「うるせ! だが、確かに利発で利巧 で利口そうな少年だ」
なんなんだ? 初対面だから敬語を使っただけなのに……
でも、十歳の少年が使う様な言葉遣いでもないか。
「いきなり悪かったな。君はアトス君か?」
「こんなに利発そうな少年はあのお方の子供で間違い無い……」
「ハイ、僕はアトスと言いますが、貴方方は?」
「俺たちは冒険者だ。俺はデグ、こっちの小さいのがベムだ。よろしくな!」
「小さいは余計……。私はベム、よろしく……」
冒険者? なんで俺の名前を知っているんだ?
「実はアトスを探していた」
「探していた? 僕をですか?」
「そうだ。俺たちは昨日小型に追われていた所を獣人の女性に助けられた。それについて話したい事がある」
「獣人の女性!?」
シクの事だ!!!!
ここに来て、シクの情報が手に入りそうだ。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる