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第1章

29話 人間族二人組……

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 「あのクソ野郎……俺達を置いて逃げやがって……」
 
 俺達を無視してカールを追った小型の行った先を俺とベムは唖然として見ていた。
 何故、捕まえやすい俺達では無くてカールを追ったんだ?

 「デグ、私達助かったの……?」
 「あぁ……。何故カールを追ったのか分からないが、とりあえず俺達は生き延びたらしいな」
 「デグ……リサは死んじゃったの……?」

 ベムは泣いていた。

 「カールもなんで私達を置いて逃げちゃったの……?」
 「あぁ……。あいつは逃げた。今度会ったらぶっ飛ばす!」

 小型と遭遇してから、今まで短い時間だったはずだが、色々あり過ぎて頭がパンクしそうだ。
 だが、いつまでもこの場所に居るのは得策では無いはずだ。
 まずは安全の確保だな。

 「ベム、泣くな。リサの事は残念だったが、俺達は生きている。今はここから生き延びる事だけ考えとけ」
 「うん……」

 そう言って、俺とベムは移動を始める。
 ベムも少し落ち着いたのか、自分で歩き移動をする。

 「デグ、これからどうするの……?」
 「モンスターに警戒しながら、住処に帰るぞ。そして、カールの奴をブチのめす!」
 「そうだね……。カールだけは許せない!」

 ベムは珍しく強い口調で言う。恐らくベム自身もカールについて相当怒りが溜まっているんだろう。

 俺達は冒険者として四人パーティを組んだのは五年~六年前になる。
 当時冒険者になったばかりの俺は早くパーティを組んで、依頼などをこなしつつ上位の冒険者を目指していた。
 なので、パーティー募集を行ったら、ベムとリサ、カールが集まった。

 ベムとリサは親に仕送りなどで稼ぐ為に冒険者になったと言っていたが、カールは、前のパーティーが解散した為、ちょうど探していた所に俺のパーティー募集を見つけたらしい。

 今思うと、前のパーティーはカールが今回みたいに裏切った結果なのかもしれないと今更ながら思った。

 それから、俺達は人間族の住処に戻る為にモンスターに気を付けながら出発し何日か経った。

 「デグ、お腹減った……。もう虫は食べたくないから、肉を獲ってきて……」
 「そんな事言ってもな。ここらへんの野生動物は逃げるの早すぎて捕まえられねーんだよな」
 「はぁ……。使えない男と行動するのは疲れる……」
 「うるせー!!お前が狩ってみろ!」
 「狩はデグの仕事だから、私は手出し出来ないの……」

 あれから、何日か経った事により、ベムも落ち着いてきたのか、以前の様に毒舌になってきたな……。

 「とりあえず、今日はここら辺で野宿するか」
 「レディーをこんな場所に泊まらす気なのは紳士としてどうなの……?」
 「レディーって言えるくらいの見た目じゃないから、いいんだよ!」
 「カチン。今の発言は頭にきた。訂正を求める……」
 「ベムは俺と歳変わらないのに、本当に子供みたいだよなー」

 先程の仕返しだ! と言わんばかりに俺はベムをからかう。

 「私の気にしている事を……。許さない……」

 そう言うと、ベムは自分の武器である弓矢を俺に向かって構える。

 「う、うそうそ!! 悪かった! 俺が悪かった。ベムは立派なレディーだ 」
 「うん。私は立派な大人のレディー……」

 ベムは弓矢を下ろし、俺に向けてドヤ顔してやがる……。

 チビすけめ!

 「とりあえず、俺は食える物を探してくるから、ベムは寝れる様に準備してくれ」
 「分かった……」

 結局肉は獲れなかった為今日も薬草汁だ。

 「……」
 「お、美味しいなー」
 「美味しくない……」
 「「……」」

 俺達はあまりにも貧しい飯に、一言も話さず食べるのであった。
 家に戻ったら腹一杯肉を食ってやる!

 質素なご飯も食べ終えて一息付いていると地面が振動しているのに気づく。

 ん? 

 最初は気のせいかと思っていたがやはり揺れている。

 「なんか、揺れているか?」
 「……。ご飯が不味すぎて、私の心が揺れている……」
 「う、うるせ! 自分で作れ!」

 そしてその揺れは大きくなる。

 「おい、やっぱり揺れている! これはあの時と一緒だ。モンスターが来るぞ!」
 「!?」
 
 クソ! 俺とベムは察知するのが苦手だ! こういうのは、いつもカールがやってくれてたから、事前にモンスターの接近に気付けたのに!

 「デ、デグどうするの……?」

 先程までの威勢が無くなり、不安そうな表情をするベム。

 「とりあえず、隠れるぞ! 俺とベムだと逃げても、すぐ追いつかれるだけだ」
 「う、うん……」

 そう言ってる間に、モンスターは姿を現してしまった。

 「デ、デグ! 小型がもう……」
 「あ、あぁ。ベム俺の後ろに」

 ベムを自分の後ろに移動させる。
 恐らく今回も小型の一撃を貰ったら動けなくなるだろう。
 
 クソ! せめてベムだけでも逃がせないか?

 小型は、俺とベムをどちらから食べようか見定めしているのか、止まってこちらに少しづつ近づいて来ている。

 どうにかして、ベムを逃す方法を考えないとな……。
 俺は小型の動きに注意しながら、どうにか出来ないか周りを確認していると。

 木々が倒れる様な音が別の方向からも聴こえてくる。
 もしかして、別のモンスターがすぐそこまで近づいて来ているのか!?。

 「デグ、もしかして二匹目……?」

 絶望したベムが地面に尻餅をついた。

 「ベム、悪かったな。任務でこんな場所まで連れてきちまって」

 俺自身は、ベムだけでも逃がしたいと思い、玉砕覚悟で大剣を構えるのであった。
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