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第1章

20話 人間族の住処について

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 「アトス起きろ。朝だぞ」
 「あと五分……」
 「また、訳わからん事を……」

 やっぱり通じないか。

 「うーーん、おはよう……」
 「寝坊助、やっと起きたか。朝ごはんにするぞ」
 「はーーい」

 朝から肉料理……。
 シクのご飯は凄く美味しいが、獣人族特有なのか、基本的には朝、昼、晩全て肉料理である。
 俺的には朝はもっと軽めが良いんだけどな……。

 「今日は鶏肉か」
 「そうだ。起きて仕留めてきた」
 
 朝の肉は基本シクが起きてから狩で獲ってくるので新鮮だ。

 「どうだ?」
 「美味いけど、朝からこんなに肉食べられないよ」
 「何を言っている。朝だからこそ食うんだ。食ったら講義だからな」

 二人で話しながら鶏肉料理を食べすすめていく。

 

 食べ終わってからは少し休憩を挟み講義の時間になる。

 「シク、今日の講義は何をするんだ?」
 「今日は人間族の国について講義する」

 人間族の国か……。

 「まず、このジャングル内では様々な種族が住んでいる。だがモンスターがいる為一箇所に多くの者が住む事は無い」

 モンスターは人を食べると成長して手を付けられなくなるからだな。

 「だから、基本は多くても十~五十人程度、本当に多い村でも百人の村や集落がほとんどだ」
 「メチャクチャ少ないな」
 「その通り。多過ぎるとモンスターの食料が増え成長する可能性が高くなるからな」
 
 ただでさえ、あのスピードだ。戦闘要員では無い者は、速攻で追いつかれて食われるだけだもんな。

 「その中で人間族の住処だけは国と表しても良い程の人数が暮らしている」
 「なんでそんな事が可能なんだ?」
 「それは、人間族達が住処にしている環境が良いからだな」
 「環境?」
 「そうだ。人間族の住処は大岩で四方囲まれている。その大岩が邪魔してモンスター達が中に入れないんだ」

 あのモンスター達が入れない大岩って相当大きいんだろうな……

 「その大岩はどれくらい大きいんだ?」
 「私も本での情報しか知らないが、十メートル以上あり、モンスターの体当たりを受けてもビクともしないらしい」

 あの体当たりでビクともしないなんて信じられないな……

 「シク、中型からも守れるくらい頑丈なのか?」
 「そうだ。過去に中型が攻めて来た時があったらしいが、中型の体当たりでさえ耐え抜いたらしい」

 大岩スゲーー! 

 「なので、人間族の国は安全の為、どんどん人間族が集まり、今の状態になったと聞くな」
 「なんか、人間族の国を見るのが更に楽しみになってきたな」

 どれくらい文明が進んでいるんだろうか?

 「人間族以外の種族は住処を作っても
モンスターが来れば終わりだからな。基本は簡易的な作りの家を建てるだけだ」
 「人間族以外の種族も大岩とか何か別のものでモンスターから守ればいいんじゃん」
 「生半可なバリケードでは、あの体当たりで壊されてしまうからな……」

 確かに。あのモンスターの体当たりは生えている木ですら、なぎ倒すくらいの威力があるから、生半可なバリケードでは無理か。
 
 「前にも話したが、人間族の国には他の種族も居る。だが、その殆どが奴隷として住んでいるか、裏路地などで隠れ住んでいるだけだな。見つかれば直ぐに奴隷にされてしまう」
 「え……? ならやっぱりスキル儀式の時に人間族の国に行くのはやめた方が良いんじゃない?」
 「フードをして旅人を装って入国すればバレないから安心しろ」

 ……大丈夫かよ……

 「幸い私の見た目は人間族よりだからな。耳さえバレなければ平気だ」
 「人間族やりたい放題だな……」
 「だが、奴隷にされると分かっていても他種族達は人間族の国に来る」
 「なんでだ?」
 「モンスターの恐怖が無くなるからだな。奴隷と言っても主人次第で幸せに暮らせるからだ」
 「酷い扱いを受けるんじゃないの?」
 「そういう扱いを受ける場合もあるが、良い主人だと奴隷と言うより従業員として働かせるイメージだな。働いた分対価を受け取れるし衣食住は保証されたりする」

 そう思うと、前世で言う所の社畜として働くって事だな。……なんだ、普通じゃないか?

 シクの説明を聞くと、俺が以前住んでいた世界の大半は奴隷みたいなものだな。
 以前はブラック会社に勤めていたせいか、シクの奴隷についての扱いを聞いて普通だと思ってしまった。

 「午前の講義はここまでだ。午後から走り込みと先読み訓練を行う」
 「分かった」

 
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