過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第1章

10話 モンスターからの逃走

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 モンスター?!
 俺は赤ん坊の時を思い出し身体が強張る。
 あの時は、中型だったが。

 「シク……小型? 中型?」

 まさか大型や特大型は無いだろうな……。
 小さく呟くようにシクに聞く。

 「恐らくだが、小型だな……」

 シクはモンスターの気配をより探る様に軽く目を瞑る。

 「ふぅ……なんだ小型か。良かった」

 俺は中型じゃなくて良かったと安堵のため息をつくが。

 「安心するな!」

 小さい声ながらも鋭く俺を叱責する。

 「ご、ごめん」
 「まずは、バレない様に逃げるぞ。中型じゃないとしてもスピードは結構早い」
 「お、俺逃げ切れるか……?」

 前回はシクが赤ん坊の俺を抱えて逃げたが、流石に今の俺を抱えてあの時のスピードは出ないだろ。

 「安心しろ、何が何でもお前の事は守る」

 そう言って俺の頭を撫でる。
 また叱責されるかもしれないが、俺は頭を撫でられて安心してしまう。

 「まずは、家と逆の方に逃げるぞ」
 「なんでだ?」
 「流石にモンスターを連れて家に帰れないだろ?」
 「た、たしかに」
 「まだ、バレてないと思いたいが……。とりあえず静かに逃げるぞ」
 「分かった」
 
 俺とシクは物音を立てずに家とは逆方向に逃げる。

 「アトス。キツくなったら言え」
 「あぁ、まだ大丈夫だ」
 「そうか。今5キロ程逆方向に逃げてきたが、モンスターは私達と同じルートでこちらに向かって来ているな……」

 まずは巻く事だな。

 「シク、こっちに気づいていると思うか?」
 「微妙だな。ハッキリとこちらに向かって来ているが、私達に気づいているかは分からない」
 「このまま走ったらどれくらいで追いつかれる? 」
 「恐らく、後一時間程」
 「……もっとスピードあげよう」
 「アトス、大丈夫なのか?」
 「分からないけど、走るしかないしな」
 「……分かった。もう少しスピードを上げるか」

 シクは心配そうな声色でこちらを向いている。

 「よし、念の為もう十キロ程走るぞ」
 「あぁ!」

 そして、シクと更にスピードを上げて逃げる。


 シクが俺に聴こえるか分からない程の声で独り言を呟く。

 「このままだと追いつかれるかもしれないな……」
 「シク、何か言ったか? 」
 「いや、何でも無い。行くぞ」

 俺達は走り出す。






 「はぁはぁ…はぁはぁ……」
 「アトス大丈夫か?」

 走りながらも心配そうに俺を見るシク。

 「はぁはぁ…はぁはぁ…シク、追って来ているか?」
 「残念ながら……どうやら私達に気づいている様だ。速度を落とさず徐々に距離を詰められている」

 どうやら、モンスターの姿はまだ見えないが、かなり近くまで追い付かれてしまっている様だ……

 「ど、どうする?」
 「……どこかに隠れるしかないな」

 俺達は一度止まった。

「シク、隠れると言ってもそんな場所あるのか?」
 「分からない。気配察知が得意じゃない個体もいるが、そこは個体差にもよるものだから、出し抜ける可能性はある」

 前みたいに中型をやり過ごした時と同じか?

 「アトスこの木の上にしよう」
 「俺じゃ登れないぞ……」
 「大丈夫だ。私が背負って登る」
 「わ、わかった」

 シクは俺を背負って木の上に登り、モンスターを待つ事にした。

 誰も見ていないが流石に恥ずかしかったな……

 恥ずかしさやら、緊迫感から逃れる為俺は現状どうなっているか聞く。

 「シク、後どれくらいで来そうだ?」
 「もう目の前だ。アトスは初めてモンスターを見るだろうが、驚くんじゃないぞ」

 シクは俺に一切モンスターを見せない様に配慮して育ててきた。
 それは恐らくシクなりの優しさだったり教育方針だったのかもしれない。

 中型以来一度も俺はモンスターを見た事が無い。中型の時は赤ん坊だった為シクは俺が覚えているとは思っていないだろう。

 そんな事を考えているとジャングルの茂みから、ガサガサと音が鳴りモンスターが姿を現わす。

 「……来た」

 シクは一点を見つめて小さく呟いた。

 「あれがモンスター……」

 俺はこの異世界に来て二度目のモンスターを見たのは木の上からであった……
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