過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
6 / 492
第1章

5話 アトス5歳になりました!

しおりを挟む
 「ほら、アトスもっと早く走れ! 」
 「いや、無理……はぁはぁ……これ以上スピード上がらないよ……」

 シクに拾われてから五年の月日が経った。

 俺は五歳になりシクから本格的にこの世界で生き抜く為の術を叩き込まれる様になった。

 そして、今日は記念するべき一日目になる。

 「アトス! そんなスピードだと小型に追いつかれて食われちゃうぞ」
 「そんな事言っても、はぁはぁ……初日の訓練でいきなりこんなに走れないって……はぁはぁ……」

 今日の午前中に習った事だがこの世界にはモンスターがいるらしい。

 おそらく、俺がこの世界に転生した時に遭遇した大きいイモムシの事だろう。

 モンスターは大きさにより分類されているらしく、小さいモンスターから小型、中型、大型、特大型がいる。

 なんでも、大型と特大型については夢物語的な感じの様で、見たものは居ない為、誰かの創作だろうと言われているらしい。

 「アトスよ、そんな事言っても、モンスター達は考慮してくれないぞ。食べられたく無かったら走れ」

 表情を一切変えずにシクが俺に言う。

 あれから、五年の間、俺はシクの笑顔を一度も見た事が無い。

 そして、訓練初日。
 シクの訓練はメチャクチャ厳しい事が発覚した……

 「はぁはぁ……シク……一旦休憩……させて……」
 「ダメだ。 母親の言う事は絶対だ」
 「無理……。もう一時間は走っているって……まだ俺は五歳だぞ!」

 前の世界では、スポーツなど一切やった事も無く。学生の頃に授業で身体を動かしてたくらいだ。しかもマラソンは苦手だった。

 「アトスは五歳にしたら成長も早いし問題ない。いいから走れ」

 赤ん坊の頃から前世? の記憶があった俺の行動を毎日見ていたシクは五歳になった俺を見て訓練しても大丈夫だろうと思ったらしい。

 「でも初日だし……はぁはぁ……もっと軽目でいいじゃないか!」

 「何を言っているんだ? 今日は、かなり軽目だぞ? 」
 「……」

 俺は考えるのをやめた。これは何を言っても無駄だな……。

 こんな風に厳しいシクだが、私生活ではかなり俺の面倒を見て来る……と言うか見過ぎてベッタリだ。

 「徐々に走る量や他の訓練も増やしていくぞ」

 鋭い目付きでこちらに向きながらシクが俺に言う。

 これは何を言っても休憩させて貰えなさそうなので、黙って走る事にした……クソ! 鬼め!

 「ん? なんか言ったか?」

 鋭い目付きを更に鋭くするシク。

 「はぁはぁ……な、何も言ってません……」

 エスパーかよ?!

 「いいから、走れ。まずは体力だ。 どんな状況でも走り続けられる様にしろ」

 何故俺をこんなに走らせるかと言うと理由がある。

 それは午前中の雑学時間の時に説明してくれた。

 どうやらこの世界には先程も言ったがモンスターがいる。
 ここで言うモンスターとは大きいイモムシの事だが、基本的にモンスターは倒せないのである。

 それを最初に聞いた俺は、え?!なんでだと疑問に思った。

 アニメや漫画、ラノベなどでは普通魔法や剣などでモンスターを、どんどん倒してレベルを上げて能力アップして、異世界最強! うははは! 的なイメージがあったが……まぁ、少し俺の偏見もあるが、大体そんなイメージだった。

 だが、この世界ではモンスターが人間を食べるとモンスター自体が強化されるのだ。しかもこの上がり幅はかなり大きいらしい。

 なので、この世界の常識として人々は大人数で群れないのだ。

 「人が居る分食われたら、どんどん強くなっちゃうもんな」

 村や集落規模の集団はあるが、国や街や都市などと言う大人数が住んでいる場所などは無いらしい。

 冒険者という職自体はあるが、やはりパーティは4~6人が基本である。
 だが小型モンスターに一人でも食べられたら全滅は免れない。

 そういう理由からこの世界ではモンスターに喰われない様に、また食われても最小限の能力アップにする為に基本少人数で行動する者が多い。
 街などを作って大人数でいる時にモンスターが攻めてきて人々を食べたら、それこそ街はすぐに全滅してしまうだろう。

 「俺が思い描いていた異世界とは、なんか違うぜ……」

 また、モンスターの大きさにより大体の討伐人数があったりする。
 小型なら4~6人、中型なら15~20人と熟練の冒険者が連携を取って、やっと倒せるのである。

 だから小型モンスターは倒せるが中型モンスターを倒すのは至難の技であり、倒すとしても熟練の強者達が必要である。

 だが、そんな強者達が一箇所に集まる事は滅多に無い様で、中型討伐は実質無理な状態らしい。

 「並の攻撃だと外皮に弾かれるとか本当かよ?」

 シクが言うにはモンスターと遭遇したら逃げろ! との事なので訓練ではまず体力を作って逃げる為の術を教えていくらしい。

 「よし、アトス止まれ。一旦休憩だ」
 「はぁはぁ……やっとかよ……」
 「そんな事言っても、走り切れたじゃないか。 偉いぞ」

 シクはそう言って俺の頭を優しく撫でてくれる。表情は鋭いが頭を撫でる手つきは愛おしい物を扱う様な手つきだ。

 こんな風に厳しいながらも俺の事を凄い大切にしてくれるシクが大好きだ。

 俺は気恥ずかしい気持ちを悟られたく無い為シクの顔を見ずに息を整える事に集中した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

処理中です...