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第二章

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 辺境領は、ユリアさんのおうちがある、コーンウォリス家の領地と、ブライ家の領地を通って、北上した端にある。
 コーンウォリス領は、なだらかな緑と、湖が広がる美しい場所だ。セオドアさんに会いに行く時も、景色が美しくて、眺めていると、長い道中もあっという間に感じてしまう。
 ブライさんのご実家がある、ブライ領は初めて訪れるけれど、活火山があり、温泉もあるらしい。
 どちらの領地でも一泊できるので、道中も楽しみにしている。

 冬のコーンウォリス領は、キリッと澄んだ空気の中に、落ち着いた緑が美しい風景が、広がっていた。
 
 街の宿に着き、長時間馬車に乗っていて、強張ってしまった身体をほぐす為に、近くをルカ君と散歩をする。
 宿が湖畔にあるため、目の前を静かな水面が広がっている。

「あ、白鳥がいる!」

 遠くに、真っ白な鳥が、水面に優雅に浮かんでいるのが見える。

「空気が、気持ち良いね」
「うん。良い所だよね」

 学園の中にいると、人が沢山いるからか、いつも頭を使ってしまう気がするけれど、こういう場所に来ると、頭を使わずに、五感で感じようとして、気持ちが解放される。

「……来て良かった」
「早いね。まだまだ、これからだよ」
「うん、これからも楽しみ」

 夜は、宿の中のレストランで、魚料理を頂き、白ワインも少し飲んでしまい、良い気持ちになった所で、ルカ君とカードゲームをして盛り上がり、明日は早いからと、二人共早めに就寝した。


◇◇◇


 今日は、ブライさんのご実家がある、領地に向かっている。
 ブライ領は、温泉で有名な街があり、貴族の社交場にもなっていて、とても賑わっているらしい。
 前世日本人としては、温泉と聞くとテンションが上がってしまう。

「ミアさん、温泉入りたい、よね?」
「うん、もちろん!」
「その、宿の近くの温泉が、混浴、らしくて。あ、もちろん服を着て入るんだけど、大丈夫かな……?」
 
 こ、混浴?! 服を着て入る?! 色々と衝撃的過ぎる温泉事情……。
 いや、でも、やっぱり温泉には、入りたい!!

「大丈夫。温泉に、入ります」
「うん……分かった」
 

 温泉の街トロトは、ローマ風の建築が立ち並ぶ、美しい街だ。

「朝に温泉に入る人が多いらしくて、夜は空いているみたいだ。夜に入る事にする?」

 ルカ君が、温泉の事を、宿の人に色々と聞いてくれて、提案してくれる。

「うん。夜に入ろう」

 日本では、夜に入るしね。温泉に浸かって、あったまってから寝られるなんて最高だ。
 
 夜ご飯を軽く済ませて、近くの温泉へと歩いて行く。
 足首まである、木綿のシンプルなワンピースの様な入浴衣を、温泉施設で貸してもらう。

 浴場に入ると、白亜の広い空間が広がっていた。円柱の柱が立ち並び、ランプが灯されて、とても幻想的な雰囲気だ。
 広いけれど、他に人が見当たらなくて、貸し切りみたいになっている。

 浴槽の端に腰掛けて、足だけ浸けているルカ君の後ろ姿が見える。
 ルカ君は、下のズボンの様なものだけ履いていた。
 まだまだ、華奢だと思っていたけれど、薄らと筋肉がついているのが見えて、背中も広く感じて、なんだかどきっとしてしまう。
 ……大きくなったんだな。良かったな。と、改めて思う。

「ルカ君、お待たせ」
 
 と、声をかけると、ルカ君が振り返る。

「ミアさん」

 と、ホッとした顔で言われる。

「他に人がいなくて良かったよ」
「貸し切りだね」
「うん。贅沢だ」

 足をつけると、少しぬるめの、長く浸かれそうな温度だ。段差の所に腰掛けて、腰までお湯に浸かる。

「ルカ君寒くない? ちゃんと浸かった方があったかいよ」
「うん。本当だ、あったかいね」

 ルカ君が、すぐ横に腰掛ける。
 目の前に、誰もいない広い浴槽があり、うずうずしてしまう。子供の頃なら躊躇なくやってしまう、あれをしても良いでしょうか……?
 
 段差を下りると、プールみたいに胸までの深さがあり、思っていたよりも深くなっている。
 手で水面を丸く掻き、身体を浮かせる。本気で泳ぐのは気が引けるので、ぷかぷかと漂う様に、お湯の中を進む。

「気持ち良い……」

 ルカ君を呼ぼうと思って、振り返ると、ルカ君もすでに浴槽の中に入っていた。一掻きしただけでぐんと進み、あっという間に、目の前の水面から、ルカ君が現れる。
 
 艶やかに濡れた黒髪から、水滴が流れ落ちる。
 金色の目でじっと見つめられて、そっと唇に触れる様にキスをされた。

「……もう一回、キスしても良い?」
「……二回目は聞くの?」

 なんだか可愛くて、つい聞いてしまう。

「思わずしてしまった。ごめん……」

 ルカ君が、顔を赤らめて、少しバツの悪そうな顔で言う。

「ううん、いいよ」

 腰に手を回され、身体が密着する。服越しだけれど、ルカ君の肌の感触が伝わってきて、恥ずかしくなってしまう。

「……ちょっと待って、人が来ちゃうかも」
「こっちに来て」

 円柱の柱の影に、隠れる様にして抱き寄せられる。

「ん、」

 口を塞ぐ様に、口づけられた。
 唇を喰む様に、何度も重ねられる。
 ルカ君の舌が入ってきて、舌を絡め取られてしまう。

「ん、んっ、」

 骨張った手で、胸を掴む様に揉まれる。

「んッ、は、」

 腰に回した手を、グッと更に寄せられて、密着してしまう。

 お腹の辺りに、ルカ君の硬くなったものが当たった。

「っごめん」

 ルカ君が、ぱっと離れる。

「ごめん。……もう、……帰ろうか」

 ルカ君が、赤らんだ顔で、困った様に呟く。
 どうしたら良いか分からなくて、こくりと頷く。

「ミアさん、……その格好、他の男に見られたくない。脱衣所の入口まで一緒に行くね」

 自分の今の格好を、改めて見ると、お湯で服が肌に張り付いていて、身体のラインが露わになってしまっている。レースの部分は透けてしまい、肌の色が見えていた。
 気がづかずに、こんな格好を晒していて、顔が熱くなってしまう。

「あ……、ありがとう」

 浴槽から上がり、ルカ君に手を引かれて、脱衣所の入口まで連れて行ってもらう。
 
 ルカ君に、強く手を握られる。

「……ミアさん、今日、部屋に行っても良い?」
 
 そうか、もう、前の時から三日経っている。学園にいる時は、三日毎に、あのホテルみたいな部屋に行って、体液を摂取する事になっていた。

「うん、いいよ」
「……じゃあ、また、後で」



 
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