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第39話 5人目
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~ルーク目線~
エマさんとカンナリが任務から帰ったそうだ。
俺はすぐにでも2人に会いに行きたかったが、任務の報告に時間がかかるらしく、今日は会えそうにない。
任務に関しては覚醒者と言えど、極秘事項なので詳しくは教えてもらえなかったが、どうやらかなり過酷な任務だったようだ。
この任務に関連してか、アークがいつもより騒がしい。
研究班や探索班の人たちがいつも以上にアーク内を走り回っているし、ニコ班長やゼインさんは自室にこもって出てこない。
そんな忙しないアークだが、俺は特にやることもなく、部屋でボーッとしていた。
あぁ...暇だ。
方舟の加工が終わっていないので、次の任務に出る事ができない。
レイさんは1人で任務に行ってしまった。
俺もついていこうとしたが、僕ひとりの方が早いからと置いて行かれた。
前回の任務は方舟無しでも連れて行ってくれたのに。
チーム体制、どこ行ったんだよ。
特にすることもないので、少し早いが夕食を摂るために食堂に向かうと、医療班のサラが1人で座っているのが見えた。
「おーい、サラさーんっ!」
「あっ!キャンベルさん!」
俺が笑顔で手を振ると、サラさんも笑顔を手を振りかえした。
「隣いいですか?」
「う、うん。」
俺がサラさんの隣に座ると、彼女は少し俯いた。
あれ?嫌だったかな。
暇で仕方なかったので、見知った顔を見て少しテンションが上がってしまった。
少し引かれてしまっただろうか。
「えっと...サラさんも夕食ですか?早いですね。」
「少し仕事が落ち着いたから。キャンベルさんこそ早いですね。」
「はい、任務が無いと暇で。」
「そう言えば、方舟がまた使えるようになったって。」
「そうなんですよ!理由は分からないんですけど、なんか使えるようになりました。」
「良かったです。キャンベルさん、方舟が使えなくなって凄くつらそうだったから。」
サラはそう言うと、また少し俯いた。
彼女なりに俺のことを心配してくれていたのだろう。
「方舟がまた使えるようになったのはサラさんのおかげでもあります。また任務に出たら、たくさん怪我すると思うので、その時はよろしくお願いします。」
「ええ、もちろん。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~評議会~
アーク地下にて。
薄暗い部屋に椅子が3つ。
どれも豪華に装飾されており、いかにも権力者の椅子といった感じだ。
そのうちの2つの椅子に男が座っている。
そして、その対面にガラド、エマ、カンナリ、フィンの4人が立っている。
座っている2人のうちの1人、メラブ・ヤペテルトがゆっくりと口を開いた。
「今回、君たちを呼んだ理由は2つ。ガラド部隊が対峙した白いローブの男、そして新たに誕生した超越者についてだ。まずはガラド・ヴィナス、白いローブの男について教えてくれ。」
「はい、その件につきましてはカンナリから直接聞くのが良いかと。」
「そうか。ではシン・カンナリ、白いローブの男はゴフェルを狙っていたそうだな。」
「はい、俺たちがゴフェルを回収したかどうかをしきりに気にしていました。」
「うむ、その男とお前は戦ったそうだが。で、どう感じた?」
「厄災のような気配を感じました。しかし、あれは厄災ではなかった。」
「なら何だと?」
「分かりません...。しかし...あれは...。」
「なんだ?」
「...いえ、何でもありません。...そういえば、死体はお調べになられましたか?探索班にアークに持って帰るよう伝えたはずですが。」
「お前たちが死体を預けた探索班は戻っていない。おそらく、帰還する途中で何者かに襲われた。」
「そう...ですか...。」
「他に何か分かることは?」
「ありません...。」
「そうか、なら次は超越者についてだ。本当ならエレナ・グレッチャーに聞きたいところだが、彼女は今、重症で治療中だ。代わりに、エマ・ヴィナス、フィン・エルドラド、本当に新しい超越者は誕生したのか?」
「はい、間違いありません。私が以前の任務で見た超越者と見た目がそっくりでした。」
「それはまずいな。それで前回遭遇した超越者も現れたとか。」
「はい、それも間違いありません。コーディ隊長を殺した超越者と同じでした。そして、超越者は自身をカールと名乗っていました。」
「カール...か。アークが超越者に接触するのはコーディ部隊の件で15年ぶりのことだった。その前は数百年前。アークにいる殆どの者が超越者を見たことすらない。しかし、この1ヶ月で2度の遭遇だ。明らかに超越者の動きが活発になっている。これから、奴らと遭遇する確率は高い。これまで以上に気を引き締めて任務に当たってくれ。今回の件は評議会でもう一度話し合う。分かっていると思うが、他言無用だ。よし、それでは解散。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ある王国にて~
大きな城の前に真っ白な男が2人、立っている。
片方の男は酷い傷を負い、体がボロボロと崩れかけている。
2人が大きな両開きの門の前に立つと、門が開き、中から1人の男が出てきた。
出てきた男の顔には漆黒の大きなアザがあり、そのアザはドクドクと脈打っている。
アザの男は男2人を見るや否や、深々とお辞儀をした。
「カール様、お待チしておりマシた。そちらは5人目の...。」
カールと呼ばれる男はニコッと笑う。
「そうだよ。こいつ、怪我してるから早く“王の間”に連れてってもらえる?」
「モチろんデございまス。マイヤー様から、カール様もクルヨうニと。」
「あー、5人揃うからか。分かった。じゃあ僕がこいつを案内するから、君はもう下がってていいよ。」
「承チしまシタ。」
ーーー
2人が“王の間”と呼ばれる部屋に入ると、そこには5つの玉座があった。
3つは既に3人の男が座っており、2つが空席だ。
真ん中の玉座に座る男が立ち上がる。
「カール、そいつが新たに誕生した超越者か?」「そうだよ、ロサルト。ちょっと壊れてるから直してもらえる?」
「死にかけではないか。カール、お前には無事に連れて帰るように言ったはずだが?」
「えーっ、ちゃんと連れて帰ったんだから良いでしょ。」
「ふん、まぁいい。そこのお前、直してやる。こっちへ来い。」
ロサルトと呼ばれる男がそう言うと、ボロボロの男が足を引きずりながら、ロサルトの前まで歩いた。
ロサルトはその男の頭を掴む。
すると、みるみるうちに男の傷が修復された。
「あ、ありがとう...ございます。」
「いいんだ。お前はこれから私たちの家族だ。この国の5人目の王として生まれ変わってもらう。名前がいるな。あー、そうだな、ハイメスがいい。お前は今からハイメス・ロサルトだ。神のため、共に尽くそう。」
カールが空いた席の1つに座る。
「ほら、ハイメス!あと1つは君の席だよ。座りな。」
「あぁ...。」
ハイメスが残り1つの席に座る。
「揃ったね。」
「あぁ、最後の5人目がついに。」
エマさんとカンナリが任務から帰ったそうだ。
俺はすぐにでも2人に会いに行きたかったが、任務の報告に時間がかかるらしく、今日は会えそうにない。
任務に関しては覚醒者と言えど、極秘事項なので詳しくは教えてもらえなかったが、どうやらかなり過酷な任務だったようだ。
この任務に関連してか、アークがいつもより騒がしい。
研究班や探索班の人たちがいつも以上にアーク内を走り回っているし、ニコ班長やゼインさんは自室にこもって出てこない。
そんな忙しないアークだが、俺は特にやることもなく、部屋でボーッとしていた。
あぁ...暇だ。
方舟の加工が終わっていないので、次の任務に出る事ができない。
レイさんは1人で任務に行ってしまった。
俺もついていこうとしたが、僕ひとりの方が早いからと置いて行かれた。
前回の任務は方舟無しでも連れて行ってくれたのに。
チーム体制、どこ行ったんだよ。
特にすることもないので、少し早いが夕食を摂るために食堂に向かうと、医療班のサラが1人で座っているのが見えた。
「おーい、サラさーんっ!」
「あっ!キャンベルさん!」
俺が笑顔で手を振ると、サラさんも笑顔を手を振りかえした。
「隣いいですか?」
「う、うん。」
俺がサラさんの隣に座ると、彼女は少し俯いた。
あれ?嫌だったかな。
暇で仕方なかったので、見知った顔を見て少しテンションが上がってしまった。
少し引かれてしまっただろうか。
「えっと...サラさんも夕食ですか?早いですね。」
「少し仕事が落ち着いたから。キャンベルさんこそ早いですね。」
「はい、任務が無いと暇で。」
「そう言えば、方舟がまた使えるようになったって。」
「そうなんですよ!理由は分からないんですけど、なんか使えるようになりました。」
「良かったです。キャンベルさん、方舟が使えなくなって凄くつらそうだったから。」
サラはそう言うと、また少し俯いた。
彼女なりに俺のことを心配してくれていたのだろう。
「方舟がまた使えるようになったのはサラさんのおかげでもあります。また任務に出たら、たくさん怪我すると思うので、その時はよろしくお願いします。」
「ええ、もちろん。」
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~評議会~
アーク地下にて。
薄暗い部屋に椅子が3つ。
どれも豪華に装飾されており、いかにも権力者の椅子といった感じだ。
そのうちの2つの椅子に男が座っている。
そして、その対面にガラド、エマ、カンナリ、フィンの4人が立っている。
座っている2人のうちの1人、メラブ・ヤペテルトがゆっくりと口を開いた。
「今回、君たちを呼んだ理由は2つ。ガラド部隊が対峙した白いローブの男、そして新たに誕生した超越者についてだ。まずはガラド・ヴィナス、白いローブの男について教えてくれ。」
「はい、その件につきましてはカンナリから直接聞くのが良いかと。」
「そうか。ではシン・カンナリ、白いローブの男はゴフェルを狙っていたそうだな。」
「はい、俺たちがゴフェルを回収したかどうかをしきりに気にしていました。」
「うむ、その男とお前は戦ったそうだが。で、どう感じた?」
「厄災のような気配を感じました。しかし、あれは厄災ではなかった。」
「なら何だと?」
「分かりません...。しかし...あれは...。」
「なんだ?」
「...いえ、何でもありません。...そういえば、死体はお調べになられましたか?探索班にアークに持って帰るよう伝えたはずですが。」
「お前たちが死体を預けた探索班は戻っていない。おそらく、帰還する途中で何者かに襲われた。」
「そう...ですか...。」
「他に何か分かることは?」
「ありません...。」
「そうか、なら次は超越者についてだ。本当ならエレナ・グレッチャーに聞きたいところだが、彼女は今、重症で治療中だ。代わりに、エマ・ヴィナス、フィン・エルドラド、本当に新しい超越者は誕生したのか?」
「はい、間違いありません。私が以前の任務で見た超越者と見た目がそっくりでした。」
「それはまずいな。それで前回遭遇した超越者も現れたとか。」
「はい、それも間違いありません。コーディ隊長を殺した超越者と同じでした。そして、超越者は自身をカールと名乗っていました。」
「カール...か。アークが超越者に接触するのはコーディ部隊の件で15年ぶりのことだった。その前は数百年前。アークにいる殆どの者が超越者を見たことすらない。しかし、この1ヶ月で2度の遭遇だ。明らかに超越者の動きが活発になっている。これから、奴らと遭遇する確率は高い。これまで以上に気を引き締めて任務に当たってくれ。今回の件は評議会でもう一度話し合う。分かっていると思うが、他言無用だ。よし、それでは解散。」
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~ある王国にて~
大きな城の前に真っ白な男が2人、立っている。
片方の男は酷い傷を負い、体がボロボロと崩れかけている。
2人が大きな両開きの門の前に立つと、門が開き、中から1人の男が出てきた。
出てきた男の顔には漆黒の大きなアザがあり、そのアザはドクドクと脈打っている。
アザの男は男2人を見るや否や、深々とお辞儀をした。
「カール様、お待チしておりマシた。そちらは5人目の...。」
カールと呼ばれる男はニコッと笑う。
「そうだよ。こいつ、怪我してるから早く“王の間”に連れてってもらえる?」
「モチろんデございまス。マイヤー様から、カール様もクルヨうニと。」
「あー、5人揃うからか。分かった。じゃあ僕がこいつを案内するから、君はもう下がってていいよ。」
「承チしまシタ。」
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2人が“王の間”と呼ばれる部屋に入ると、そこには5つの玉座があった。
3つは既に3人の男が座っており、2つが空席だ。
真ん中の玉座に座る男が立ち上がる。
「カール、そいつが新たに誕生した超越者か?」「そうだよ、ロサルト。ちょっと壊れてるから直してもらえる?」
「死にかけではないか。カール、お前には無事に連れて帰るように言ったはずだが?」
「えーっ、ちゃんと連れて帰ったんだから良いでしょ。」
「ふん、まぁいい。そこのお前、直してやる。こっちへ来い。」
ロサルトと呼ばれる男がそう言うと、ボロボロの男が足を引きずりながら、ロサルトの前まで歩いた。
ロサルトはその男の頭を掴む。
すると、みるみるうちに男の傷が修復された。
「あ、ありがとう...ございます。」
「いいんだ。お前はこれから私たちの家族だ。この国の5人目の王として生まれ変わってもらう。名前がいるな。あー、そうだな、ハイメスがいい。お前は今からハイメス・ロサルトだ。神のため、共に尽くそう。」
カールが空いた席の1つに座る。
「ほら、ハイメス!あと1つは君の席だよ。座りな。」
「あぁ...。」
ハイメスが残り1つの席に座る。
「揃ったね。」
「あぁ、最後の5人目がついに。」
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