ノアズアーク 〜転生してもスーパーハードモードな俺の人生〜

こんくり

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第34話 誕生 part1

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「誕生 part1」から数話の間、エマ・ヴィナス視点で進みます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~エマ目線~

コーディ部隊での任務から1ヶ月が経った。

私は現在、エレナ部隊の一員として任務に当たっている。
まだ所属して1ヶ月足らずだが、既にいくつか任務を終えた。
あんな事があったというのに悲しむ暇さえない。

今日は1ヶ月ぶりの休日。
“やっと休める”そう思ってアークの食堂でゆっくり昼食を摂っていると、私の隣にニコ班長が座った。
彼女と会うのも1ヶ月ぶりだ。

「ニコ班長...何ですか?」
「たまには一緒にご飯でもどうかなって。」

おそらく嫌な顔をしていた私に対して、ニコ班長は笑顔で答えた。

「なんだ、また任務かと思いましたよ。」
「フフッ、任務は沢山あるけどね。今日は違うよ。」
「じゃあ、なんですか?」
「少し女同士で話したいだけだよ。」

彼女のその言葉に嘘はなく、昼食を摂る短い時間だけではあったが、たわいもない話を笑いながらした。

「ニコ班長...。」
「なに?」
「ありがとうございます。」
「ん?何の話?」

何のことだか分からない、そんな顔をしているが、ニコ班長が私に気を遣ってくれている事を私は分かっていた。

アークに覚醒者として所属している以上、仲間が死んだからと言って休ませてはもらえない。
そんな事は百も承知だ。
でも、辛いものは辛い。
痛いものは痛い。
ニコ班長はそんな私の心境に気づいて、心配してくれたのだろう。

「いえ、何でもないです。」
「そう?じゃあ私、もう戻るね。」
「お疲れ様です。」
「うん、エマちゃんも。あと1週間後くらいには任務要請が入ると思うから。辛いと思うけど頑張って。」
「はい、頑張ります。」

ーーー

次の日、任務要請が入った。

ニコ班長は次の任務は1週間後くらいだと言っていた。
にも関わらず任務要請が入ったという事は何か、緊急性のある任務なのだろう。
伝えにきた探索班の人も、急いでいる様子だった。

すぐにニコ班長の部屋へと向かうと、部屋には既に私以外のエレナ部隊が揃っていた。

エレナ部隊は3人。
隊長のエレナ・グレッチャー。
その隣に座るフィン・エルドラド。
そして、私だ。

「すいません、遅れました。」
「いや、こっちが急に呼び出したんだ。気にしないで。」

心なしか、ニコ班長が早口な気がする。

「は、はい...。」
「よし、これでエレナ部隊全員揃ったね。休んでいたところに申し訳ないけど、緊急で任務が入ったの。説明は探索班を1人付けるから、現地に向かいながら聞いて。」

ーーー

私たちエレナ部隊はすぐに馬車に乗り込んだ。
中には既に探索班が1人座っていた。

「皆さんお揃いですね。時間が勿体無いので、任務地に向かいながら説明させていただきます。それでは出してください。」

探索班の男がそう言うと、馬車は動き出した。

「それで、一体何があったの?」

エレナ隊長が質問する。

「超越者によって、アークの支部が1つ壊滅しました。現在、超越者は...。」
「超越...者...。」

“超越者”その言葉が聞こえた瞬間、私は何も聞こえなくなった。

約1ヶ月前に感じたあの恐怖。
今でも鮮明に覚えている。
あの圧倒的な力…。

今から超越者と戦うの?
いやっ...。

「...マ!エマ!」
「は、はい!」

気がつくと、エレナが私の体を揺さぶっていた。

「エマ、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ちょっとボーッとしていました。すいません。」
「いや、いい。君、エマにもう一度最初から説明してあげて。」

エレナがそう言うと、探索班はもう一度説明を始めた。

「はい、今からちょうど10日前、どうやって場所を知ったのか、超越者が大量の厄災を連れ、東側を指揮するアークの支部に現れました。一瞬で支部は壊滅。駐在していた覚醒者が2名、それにアークに所属する多くの非覚醒者が殺されました。現在、支部から超越者は立ち去ったと報告されています。しかし、そこには大量の厄災が残ったままです。その厄災を全て破壊する事が今回の任務です。」
「あ、ありがとうございます。」

私は震える声でそう答えた。
そんな私を心配してか、エレナは私の肩をさする。

「エマ、声が震えている。無理そうなら、馬車で待っていてもいい。」
「いえ、それは出来ません。任務で辛い思いをはしてきたのは私だけじゃないので。それに厄災と戦うことは覚醒者の使命ですから。」
「...そう、なら無理になったすぐに言いなさい。使命と言っても、無駄に死ぬ事はない。」
「はい、分かりました。」

私がそう言うと、エレナは再び探索班の方へ顔を向ける。

「ちょっと、質問いいかな?」
「はい、何でしょうか。」
「厄災はどれくらいいるの?」
「正確な数字は分かりませんが、数十体はいるかと。それにその殆どがアザモノです。」
「それだけ多くの厄災を私たち3人だけで?私が解放者とはいえ、レイほどの力は無い。私たちだけで厄災を逃さずに全滅させろと?」
「いえ、エレナ部隊だけではありません。別の任務に当たっているガラド部隊も後から合流してもらいます。ですので、エレナ部隊にはガラド部隊が到着するまで、厄災の侵攻を食い止めてもらいます。」
「そういうこと。分かったわ。」

ーーー

馬車が動き始めて何日が経ち、アーク支部が一望できる丘の上で馬車は止まった。

「フィン、調べて。」

エレナがそう言うと、フィンが一歩前に出た。
そしてノア化すると、方舟が眼鏡ような形に変わり、彼の目元に装着される。

「みなさん少しの間、静かにしてて下さい。」

フィン・エルドラドーーー
彼の能力は見える全てのものを正確に把握する。
方舟を通して見える全ての情報が彼の頭の中に流れるのだ。
例えば今、彼はこの丘の上からアーク支部を透視し、厄災の数、様子を調べている。

「ふぅーっ。終わりました。」

フィンがひたいの汗を拭きながらこちらを振り返る。

「で、どうだった?」
「報告通り、殆ど全ての厄災がアザモノです。100近くの形跡があります。まあ、アークにいる殆ど全ての人間を殺したんです。成長しない方がおかしい。」
「私たちだけでいけそう?」
「はい、ガラド部隊が到着するまでの時間稼ぎなら、エレナ隊長がいれば問題ないかと。」
「それなら良かった。フィン、エマ、今の私たちの任務は支部から厄災を出さないこと。ガラド部隊が来るまでは命を賭けるような真似はしないで。」
「はい。」「はい。」
「よし、それじゃあ任務開始だ。」
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