ノアズアーク 〜転生してもスーパーハードモードな俺の人生〜

こんくり

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第24話 発表

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ゴフェル回収任務が終わり、情報漏洩の件で忙しいのか、1週間何の呼び出しもなかった。

最初の1週間は、とんでもなく忙しかったのに、その次の週は全休だ。
勝手に出かけていいのかも分からないので、本を読んだり、エマさんや探索班の人とご飯を食べたり、とにかく暇な1日を繰り返した。

今日も暇な1日が始まる、そう思って歯を磨いていると、探索班のオルメが俺の部屋を訪ねてきた。

「キャンベル様、ニコ班長から大広間に来るように、と伝達がありました。」
「いつ、行けばいいですか?」
「今すぐ、です。」

ーーー

急いでアークの戦闘服に着替えて、オルメと共にアークの大広間へと向かった。

俺はアークの大広間に初めて入る。
というか、俺は大広間だけではなく、アークのほとんどの場所に入ったことがない。
なにせ、このアークという古城は広すぎるのだ。
ちょっとウロチョロしただけで、確実に迷子になってしまう自信がある。

大広間には、カンナリやエマなど、見知った顔をちらほら見受けられたが、俺の知らない顔の方が多かった。
見知らぬ顔の中には、俺と同じアークの戦闘服を着ている人もいる。

覚醒者と、おそらく探索班が数名集められているようだ。
俺も含め、誰も今から何が始まるのか知らされていないのか、皆んなキョロキョロしながら小声で喋っている。

慣れない場所と空気にソワソワしていると、それに気づいたエマが近づいてきた。

「ルーク君、ここにいたんだね。」
「あっ、エマさん。」

勿論いるのは知っていたが、今気づいたフリをする。

「今から何が始まるのかな?」
「さあ、さっぱりです。俺も急に呼びつけられたので。」
「だよね。でも、これだけ覚醒者とベテランの探索班が集められてるってことは何か大きな発表があるんだよ。」
「大きな発表...。」

ーーー

俺に加え、数人の覚醒者や探索班が入ってきた所で、大広間の大きな両開きの扉が閉められた。
大広間のざわつきが一気に静まる。

壇上に1人の男が出てきた。
杖をつき、ゆっくりと歩いて出てくる。

「メラブ様だ...。」
エマが男を見て、ボソッと呟いた。

男は壇上の真ん中に来たところで、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
そして、ゆっくりと口を開く。

「皆んな、久しぶり。いや、初めましての子もいるね。」

そう言って男は俺の方へ顔を向けた。
全てを見透かし、吸い込まれるような目で見つめてくる。
心臓の鼓動が早まる。

男は視線を元の位置に戻し、再び話し始める。

「今日、集まってもらったのは、ほかでもない、これからのアークの活動についてだ。」

全体がどよめく。

「ここ最近、明らかに厄災が活発化している。先日も2人の覚醒者が死んだ。これは異常なスピードだ。このままでは、覚醒者は皆死に、世界は闇に包まれるだろう。そこで、一部を除く全ての任務を解放者または一定以上の実力を持つ覚醒者と共に行う事を原則にする。」

どよめきが更に大きくなる。

これからは絶対にチームで任務で行くってことか。
まあ、それはいいとして、解放者ってなんだ?
ヴィル・ヘンダーソンも、そう呼ばれていた気がする。

「では、解散。」

ーーー

解散後、俺とエマ、そしてカンナリはすぐにニコ班長の元へ来るよう言われた。

カンナリはいつのまにか、いなくなっていたので、俺とエマさんでニコ班長の元へと向かう。

「あの人...誰なんですか?」
「そっか、ルーク君は見たことないもんね。あの方はアークを創設した3家の内の1つ、ヤペテルト家当主メラブ様よ。」

アークを創設した3家の1つ...、ということは、あの人もノアの子孫なのか。
確かにあの男には、言葉に言い表せないような、妙な威圧感があった。

「あの人も、覚醒者なんですか?」
「いや、違うよ。3家の中で覚醒者なのは...レイさんだけかな。ルーク君は会ったこと無いと思うけど。」
「へー、ノアの子孫だからって覚醒者が沢山生まれるわけではないんですね。」
「うん、そればっかりは運みたいな所があるからね。」

運....か。
それは良い意味での運なのか、悪い意味での運なのか...。
まぁ、俺にとっては良い意味だ。
辛いことも多いが、覚醒したからこそ今の俺がある。
生前の俺はかなり運が悪かったが、この世界での俺は運がいい方?らしい。

「ルーク君、着いたよ。」
「えっ、どこに..。」
「どこって、ニコ班長に呼び出されたでしょ?」
「あ、あぁ、そうでした。」

ーーー

部屋に入ると、ニコ班長はこれまでに無いくらい、疲れている様子だった。

「おっ、ルーク君、エマちゃん、まだカンカリが来ていないから、そこに座ってて。」

ニコ班長は、俺たちに座って待つように促すと、大きなため息をついた。

「大変そうですね。」
「ほんっと大変なの。半分君たちのせいだよ。」

“俺たちのせい”というのは、おそらく情報漏洩の件の事だ。
組織内に裏切り者がいるかもしれない、これは組織が一気に崩壊しかねない大きな問題だ。
ニコ班長は、その対応に追われていたのだろう。
任務のことだけでもあんなに大変そうだったのに。

「情報漏洩の件、何か分かったんですか?。」
「もーさっぱり。そもそも、敵の姿くらいしか情報がないからね。」
「やっぱり、そうですよね。」
「うん、でもアークの中に裏切り者がいるなら、早く見つけないといけないから。ここの場所がバレたら大変だよ。もしかしたら、もうバレてるかもしれなけれど。」
「バレたことってあるんですか?」
「勿論あるよ!ここのアーク本部は3代目だし。」

勿論と言ってしまうのはどうかと思うが、これだけ大きい建物だ、隠すのは大変なのだろう。
3代目という数字に驚いたが、2度しかバレていないとも言えるのかもしれない。   

「その時も、裏切り者が?」
「うーん、1度目は、アーク創設当初だから昔すぎて分からないけど、2度目は金で売った奴がいたんだ。考えられないよね。」
「そんなの、防ぎようがないですね。」
「そうだね。っと、そろそろ時間かな。」

ニコ班長がそう言うと同時に扉からノック音が聞こえた。 
そして、2人の男が入ってくる。
1人はカンナリ、2人目は...誰だ?

「よし、揃ったね。」
ニコ班長が言う。

「そう言えば、なぜ俺たちを呼んだんですか?」
「これからは、決まった部隊で任務をあたるって言われたでしょ。」

俺とカンナリは何かを悟り、同時に嫌な顔をする。

「それって、まさか...。」
「うん、君たち4人がチームだ。」
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