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第23話 裏切りの可能性
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アークに戻ると、俺とエマはすぐにニコ班長の元に、オルメは事務処理のため、資料保管庫に向かった。
部屋に入るや否や、またエマが泣き出したので、俺が任務の一連の流れを説明した。
「ーーーそれで...、ゴフェルを奪われたと。」
ニコ班長は明らかに“マジかよ”という顔をした。
「うえーん、ごめんなさい。私のせいなの。」
エマはずっと泣きながら謝っている。
ニコ班長はそんな彼女の背中をさすりながら、話を続けた。
「いや、それはいいんだ。無くなってしまったものは仕方がない。問題なのは、2つ。1つ目は、誰が何のためにゴフェルを奪ったのか。ゴフェルは、ノアしか使えない。覚醒者以外の人からすれば、ゴフェルなんて、ちょっと硬いだけのただの木だ。何の役にも立たない。」
言い訳をするわけではないが、ニコ班長の言う通りだ。
ゴフェルを奪おうとする奴がいるなんて、予想出来たわけがない。
なぜならゴフェルは、方舟を作る材料。
ノアの覚醒者でなければ持っている意味がないからだ。
他に用途があるのか、もしくはアークとは別の覚醒者を集めた組織があるのか。
いずれにせよ、アークにとって好ましい存在ではない事は確かだ。
厄災と戦うだけでも、かなり面倒だと言うのに、別の勢力とも対立する事になれば、全ての肉片の破壊するというアークの目的はさらに遠いものとなるだろう。
「そして2つ目。なぜ、そこにゴフェルがある事を知っていたのか。今はこっちが1番問題だ。偶然...と片付けるのは難しい。アークの情報が何らかの形で外に漏れているのか、もしくはアークの中に裏切り者がいるのか。」
仲間の中に裏切り者...そんな事、考えたくはないが、その可能性も十分にあり得る。
ゴフェルがあると知って、あそこに現れたのだとすれば、アークとほぼ同時に情報を得たということだろう。
「2人とも、情報漏洩の件は他の人には喋らないで。これは私たちが処理するから。」
「分かりました...。」
俺がそう言うと、エマも頷いた。
「じゃあ、これで任務は終了だね。お疲れ様。ルーク君も、エマちゃんも大きな怪我は無さそうだけど、一応医療班で診てもらって。」
ーーー
ニコ班長に促され、医療班の元へと向かうと、サラがカンナリの意識が戻っていることを教えてくれた。
病室で、カンナリは非常にイライラした様子で、ベッドに座っていた。
いつも通り、今にも暴れ出しそうな感じだ。
そんなカンナリと再び顔を合わせるのは少し憂鬱だが、まぁ、とにかく助かったようで良かった。
彼がこの状態になったのは俺のせいなので、責任を感じていた。
「カンナリ、目が覚めんですね。あの時は、助けてくれ...。」
「ちっ、勝手に入ってくるな。」
カンナリは俺が病室に入ると、手でシッシッと、出ていけと言うジェスチャーをした。
「ちょっ、人がわざわざお礼を言ってるのに、そんな言い方ないじゃないですか!」
「礼なんかいらねぇよ。邪魔だから蹴っ飛ばしただけだ。お前みたいな役立たず、なんで俺が助けるんだよ。」
「何を....。」
俺の拳に力が入る。
「ちょっと2人とも!何でもう仲悪くなってるの?」
俺とカンナリの間にエマが割って入った。
アークに所属して間もない俺が既にカンナリとここまで険悪な仲になっていることに驚いてる。
「お前は関係ない、引っ込んでろ。」
「関係なくない!」
エマはそう言って、カンナリに拳骨を食らわせた。
わお!
「いってーな!何すんだよ!」
「カンナリ、アークの仲間と仲良くしなさいって何度言えば分かるの?」
エマは頬を膨らませ、カンナリを睨む。
「馴れ合う必要なんてないんだよ。」
「馴れ合いじゃくて、助け合いね。いつか、後悔するよ?」
「こんな雑魚に助けられるくらいなら死んだ方がマシだ。」
カンナリは俺の方を見てそう言った。
雑魚って俺のことを言いたいのか?
間違ってはいないが、コイツに言われるとムカつく。
俺もカンナリに拳骨を喰らわせてやろうかと思ったがやめておいてやった。
怒りで忘れていたが、彼は腹に穴が空いて、ついさっきまで昏睡状態だったのだ。
いくら、ノアの覚醒者だとは言え、そんな状態の男をぶん殴って言い訳がない。
まあ、エマさんは思いっきり殴っていたが。
「エマさん、もう出ましょう。」
「うん、じゃあね。安静にしてるのよ。」
「うっせ、早く行け。」
俺とエマはカンナリに半分追い出される形で病室を後にした。
ーーー
「ほんっとイラつく人ですね。」
「うん...、でも、カンナリって本当はいい奴なのよ。少し人と仲良くしたりするのが苦手なの。」
「まあ、分からなくはないですけど...。」
俺もなんだかんだ言ってはいるが、カンナリが悪い人でない事くらい分かっている。
カンナリは俺を助けたつもりは無いと言うが、実際、俺は彼がいなければ死んでいたかもしれない。
ムカつくが、ちゃんと感謝している。
あの態度さえどうにかなれば、仲良くできそうなのに。
「あの態度さえ、どうにかなればね...。元からあんな感じだったから...。」
「昔からあんな感じなんですか?」
「うん、昔はもう少しマシだったんだけど、ちょっと...ね。」
何か、意味ありげな様子だ。
まあ、どんな理由があるにせよ、あんな態度を取られては、任務にせよ、何にせよ、無駄に苦労する事になってしまう。
カンカリには、何か反省する機会が訪れて欲しいものだ。
ーーー
エマと別れ、部屋に戻った。
ベッドに寝転がると、疲れがどっと押し寄せた。
やはり、ノア化はかなりの体力を使う。
病み上がりではあるが、一度戦っただけで、この疲れようだ。
今の俺には1日、30分から1時間程度のノア化が限界なのだろう。
それにしても、アークに来てもう1週間経つのか。
既に2度の任務を終えたが、1度目は死にかけ、2度目は失敗した。
それに、沢山怪我もした。
ノアの覚醒者でなければ、俺はとっくの昔に2度目の死を迎えていただろう。
最初は、勇者になれそう、世界を救う手助けを、と意気込んでいたが、実際やってみると辛いものがある。
そう改めて考えると、シモンの凄さが分かる。
シモンは俺の知っているだけで約7年の間、殆ど毎日、戦い続けていた。
おそらく、それよりもずっと長く戦っているのだろう。
俺もこれから、彼と同じように戦い続ける事ができるだろうか。
今の調子だとすぐに死んでしまいそうな気もする。
シモンに久しぶりに会いたいな...。
俺がノアの覚醒者になったと知れば、どんな顔をするだろうか。
あれだけ感情の起伏が無い男でも、口をあんぐり開けて驚く事だろう。
シモンに会うためにも、うっかり死なないよう頑張らないとな...。
そんな事を考えていると、いつの間にか俺は眠っていた。
アークに来て、怒涛の一週間が幕を閉じた。
部屋に入るや否や、またエマが泣き出したので、俺が任務の一連の流れを説明した。
「ーーーそれで...、ゴフェルを奪われたと。」
ニコ班長は明らかに“マジかよ”という顔をした。
「うえーん、ごめんなさい。私のせいなの。」
エマはずっと泣きながら謝っている。
ニコ班長はそんな彼女の背中をさすりながら、話を続けた。
「いや、それはいいんだ。無くなってしまったものは仕方がない。問題なのは、2つ。1つ目は、誰が何のためにゴフェルを奪ったのか。ゴフェルは、ノアしか使えない。覚醒者以外の人からすれば、ゴフェルなんて、ちょっと硬いだけのただの木だ。何の役にも立たない。」
言い訳をするわけではないが、ニコ班長の言う通りだ。
ゴフェルを奪おうとする奴がいるなんて、予想出来たわけがない。
なぜならゴフェルは、方舟を作る材料。
ノアの覚醒者でなければ持っている意味がないからだ。
他に用途があるのか、もしくはアークとは別の覚醒者を集めた組織があるのか。
いずれにせよ、アークにとって好ましい存在ではない事は確かだ。
厄災と戦うだけでも、かなり面倒だと言うのに、別の勢力とも対立する事になれば、全ての肉片の破壊するというアークの目的はさらに遠いものとなるだろう。
「そして2つ目。なぜ、そこにゴフェルがある事を知っていたのか。今はこっちが1番問題だ。偶然...と片付けるのは難しい。アークの情報が何らかの形で外に漏れているのか、もしくはアークの中に裏切り者がいるのか。」
仲間の中に裏切り者...そんな事、考えたくはないが、その可能性も十分にあり得る。
ゴフェルがあると知って、あそこに現れたのだとすれば、アークとほぼ同時に情報を得たということだろう。
「2人とも、情報漏洩の件は他の人には喋らないで。これは私たちが処理するから。」
「分かりました...。」
俺がそう言うと、エマも頷いた。
「じゃあ、これで任務は終了だね。お疲れ様。ルーク君も、エマちゃんも大きな怪我は無さそうだけど、一応医療班で診てもらって。」
ーーー
ニコ班長に促され、医療班の元へと向かうと、サラがカンナリの意識が戻っていることを教えてくれた。
病室で、カンナリは非常にイライラした様子で、ベッドに座っていた。
いつも通り、今にも暴れ出しそうな感じだ。
そんなカンナリと再び顔を合わせるのは少し憂鬱だが、まぁ、とにかく助かったようで良かった。
彼がこの状態になったのは俺のせいなので、責任を感じていた。
「カンナリ、目が覚めんですね。あの時は、助けてくれ...。」
「ちっ、勝手に入ってくるな。」
カンナリは俺が病室に入ると、手でシッシッと、出ていけと言うジェスチャーをした。
「ちょっ、人がわざわざお礼を言ってるのに、そんな言い方ないじゃないですか!」
「礼なんかいらねぇよ。邪魔だから蹴っ飛ばしただけだ。お前みたいな役立たず、なんで俺が助けるんだよ。」
「何を....。」
俺の拳に力が入る。
「ちょっと2人とも!何でもう仲悪くなってるの?」
俺とカンナリの間にエマが割って入った。
アークに所属して間もない俺が既にカンナリとここまで険悪な仲になっていることに驚いてる。
「お前は関係ない、引っ込んでろ。」
「関係なくない!」
エマはそう言って、カンナリに拳骨を食らわせた。
わお!
「いってーな!何すんだよ!」
「カンナリ、アークの仲間と仲良くしなさいって何度言えば分かるの?」
エマは頬を膨らませ、カンナリを睨む。
「馴れ合う必要なんてないんだよ。」
「馴れ合いじゃくて、助け合いね。いつか、後悔するよ?」
「こんな雑魚に助けられるくらいなら死んだ方がマシだ。」
カンナリは俺の方を見てそう言った。
雑魚って俺のことを言いたいのか?
間違ってはいないが、コイツに言われるとムカつく。
俺もカンナリに拳骨を喰らわせてやろうかと思ったがやめておいてやった。
怒りで忘れていたが、彼は腹に穴が空いて、ついさっきまで昏睡状態だったのだ。
いくら、ノアの覚醒者だとは言え、そんな状態の男をぶん殴って言い訳がない。
まあ、エマさんは思いっきり殴っていたが。
「エマさん、もう出ましょう。」
「うん、じゃあね。安静にしてるのよ。」
「うっせ、早く行け。」
俺とエマはカンナリに半分追い出される形で病室を後にした。
ーーー
「ほんっとイラつく人ですね。」
「うん...、でも、カンナリって本当はいい奴なのよ。少し人と仲良くしたりするのが苦手なの。」
「まあ、分からなくはないですけど...。」
俺もなんだかんだ言ってはいるが、カンナリが悪い人でない事くらい分かっている。
カンナリは俺を助けたつもりは無いと言うが、実際、俺は彼がいなければ死んでいたかもしれない。
ムカつくが、ちゃんと感謝している。
あの態度さえどうにかなれば、仲良くできそうなのに。
「あの態度さえ、どうにかなればね...。元からあんな感じだったから...。」
「昔からあんな感じなんですか?」
「うん、昔はもう少しマシだったんだけど、ちょっと...ね。」
何か、意味ありげな様子だ。
まあ、どんな理由があるにせよ、あんな態度を取られては、任務にせよ、何にせよ、無駄に苦労する事になってしまう。
カンカリには、何か反省する機会が訪れて欲しいものだ。
ーーー
エマと別れ、部屋に戻った。
ベッドに寝転がると、疲れがどっと押し寄せた。
やはり、ノア化はかなりの体力を使う。
病み上がりではあるが、一度戦っただけで、この疲れようだ。
今の俺には1日、30分から1時間程度のノア化が限界なのだろう。
それにしても、アークに来てもう1週間経つのか。
既に2度の任務を終えたが、1度目は死にかけ、2度目は失敗した。
それに、沢山怪我もした。
ノアの覚醒者でなければ、俺はとっくの昔に2度目の死を迎えていただろう。
最初は、勇者になれそう、世界を救う手助けを、と意気込んでいたが、実際やってみると辛いものがある。
そう改めて考えると、シモンの凄さが分かる。
シモンは俺の知っているだけで約7年の間、殆ど毎日、戦い続けていた。
おそらく、それよりもずっと長く戦っているのだろう。
俺もこれから、彼と同じように戦い続ける事ができるだろうか。
今の調子だとすぐに死んでしまいそうな気もする。
シモンに久しぶりに会いたいな...。
俺がノアの覚醒者になったと知れば、どんな顔をするだろうか。
あれだけ感情の起伏が無い男でも、口をあんぐり開けて驚く事だろう。
シモンに会うためにも、うっかり死なないよう頑張らないとな...。
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