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第21話 ゴフェル
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「じゃあ、早速任務の説明をするね。」
俺とエマさんは今、ニコ班長の部屋で任務の説明を受けている。
3日前まで、全身の骨が折れていたというのに。
「あのー、俺まだちゃんと骨がくっついていないんですけど。」
「あー、それは気にしないで。医療班の許可はさっき取ったから大丈夫だよ。」
「大丈夫って...。俺、死んじゃいますよ。」
「まあまあ、話を聞いてよ。」
ニコ班長に俺の話を聞く気はない。
何が何でも、俺を任務に向かわせる気だ。
「今回の任務はね、ゴフェルの回収よ。」
俺は聞き覚えのない単語に首を傾げた。
ゴフェル?
初めて聞く言葉だ。
「あー、そういうこと。」
エマは何かに気づいたような顔をする。
「危険な任務ではないけど、覚醒者が行くことが原則だからね。ルーク君1人だけじゃあれだし、エマちゃんと2人で行ってきて欲しいの。」
「分かりました。それで、どれくらいの量が?」
「うーん、そんなに多くは。でも、あるのはほぼ確定だよ。」
俺を置いて、どんどん話は進んでいく。
俺は何の話をしているのか1つも理解できていない。
「あのー、ゴフェルって?」
2人の話を遮って、質問する。
「あー、教えてなかったっけ?ゴフェルはね、方舟の材料の木だよ。」
ニコ班長が答えた。
「木って....植物の?」
「そうそう、植物の木だよ。見た目はねー、普通の木とあまりに変わらない...ってルーク君、それ...。」
ニコ班長は説明の途中で急に驚いた顔をした。
そして俺の首元を指さした。
「きゅ、急になんですか。」
「そのペンダント...。」
彼女が指さしていたのは、俺ではなく、俺の首にかかったペンダントだった。
彼女がこのペンダントに見覚えがあるのか。
いや、それは考えにくい。
何故なら、このペンダントは俺の師匠であるシモンに貰ったものだからだ。
じゃあ、なんだ?欲しいのか?
「これは、師しょ、シモンにもらったものです。」
「そう、シモンさんが...ね。ペンダントに付いているその木片、それがゴフェルだ。」
「え!?」
これがゴフェル!?
恩人からのプレゼントとはいえ、センスのないペンダントとは思っていたが…。
「ちょっと、見せてもらってもいい?」
「はい、いいですけど。」
ペンダントをニコ班長に渡す。
ニコ班長はペンダントを受け取ると、木片の部分を光に照らしたり、匂いを嗅いだりした。
一通り木片を調べ終えると、彼女は首を傾げた。
「うーん、ただのゴフェルだね。特に変わった様子もない。」
彼女はそう言うと、俺にペンダントを返した。
「俺が持っててもいいんですか?」
「あんまり良くないかもしれなけど、シモンさんが君に預けたという事は何かあるんだろう。だから、君が持ってて。」
「分かりました...。」
「ってことで、ルーク君、エマちゃん、そのゴフェルを取りに行って来て。あとは同行する探索班から聞いて。じゃあ、私は他の仕事が残ってるから、あとはよろしく。」
ーーー
「シモンさん、なんでルーク君にゴフェルなんか渡したのかな。」
「俺もこれがゴフェルだったとは。なんで俺に...。」
エマさんの言う通り、シモンがなぜ俺に方舟の材料であるゴフェルを渡したのかは謎だ。
ゴフェルを受け取った時、俺はまだノアの覚醒者ではなかった。
なぜ、そんな俺にゴフェルを...。
うーん、分からない。
まあ、変わり者のシモンのすることだ。
特に意味なんて無かった、なんて普通にありそうだ。
あまり気にするのはやめておこう。
部屋を出ると、捜索班が1人、俺たちを待っていた。
「はっはっ、初めまして!こっ、今回、任務の同行するオルメです!よ、よろしくお願いしますっ!」
フードを深く被っていて、眼鏡をかけている事以外よく顔は分からないが、声で女性だと分かった。
新人なのか、非常に緊張している様子だ。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。今回の任務はそんなに難しいものじゃないから。」
エマが笑顔でオルメを気遣う。
やっぱり天使だ。
「そ、それでも、大事な任務です。かっ、覚醒者様に、迷惑はかけられません。」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃいましょう。で、場所はどこ?」
「場所は…えーっと、アークから北西部、アルライン王国とイルメニア王国の国境近くのアラト山です。」
「うわっ、結構遠いね。」
「は、はい。で、でも今回はアークにヘンダーソン様がいらっしゃるので。」
「本当に!?やったー!」
エマは飛び跳ねて喜んだ。
ヘンダーソン…。
どこかで、聞いたことがあるような…。
ーーー
オルメに案内され、俺とエマはアーク最上階のある部屋に連れてこられた。
「どうぞ、入って。」
扉の前に立つと、部屋の中から、そう声がした。
中へと入ると、シモンと同い年くらいだろうか、整えられた白髪混じりの茶髪と特徴的な髭を蓄えた男が俺たちを出迎えた。
「いらっしゃい。お、君が新入り君だね。私はヴィル・ヘンダーソン、よろしく。」
ヴィル・ヘンダーソン...思い出した。
俺をここまでワープさせて来たあの能力の持ち主だ。
能力を聞いただけでもとんでもないと感じたが、いざ目の前にしてみると、俺やカンナリとは違う異質な強さが感じられる。
「はいっ、よろしくお願いします。」
「そんなに固くならなくで大丈夫だよ。人数は3人、場所はアラト山だったね。」
「そう、聞いています。」
「それじゃあ、良かった。行ったことがあるはずだ。」
彼はそう言うと、左の人差し指につけた指輪に触れた。
と同時に目に十字の紋様が浮かぶ。
「えっ、もう!?」
何かに気づいたオルメが驚いて尻もちをついた。
「ん?何事も早いに越した事はないだろう?」
ヴィルが微笑む。
3人の足元を囲うように円が広がった。
【完全解放】
ヴィルがそう呟くと、指輪が輝き、一気にギアが上がるのが分かった。
とてつもないエネルギーが円に集まっていく。
「じゃあ、気をつけて。いってらっしゃい。」
ヴィルのその声が聞こえると同時に、俺たち3人は、円の中に落ちた。
ーーー
「うわぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁ!」
「ぐっ、ううっ!」
ーーー
長いような、短いような不思議な時間が経った。
そして、さっきまで無くなっていた足が地面につく感覚が戻ってきた。
「おぉ...。」
目を開けると、広がっていたのは、まるで絵画のような大自然の風景だった。
それに、天気も良い。
厄災と戦う武器の材料がある場所なので、溶岩が山から溢れ出し、雷が絶え間なく落ち続ける場所を想像していたので、驚いた。
これから任務だというのに、気持ちが和んでしまう。
「もう...到着したんですか?」
「うん、やっぱりちょっと怖いけど、あっという間だね。」
エマは汗を拭いながら、笑顔で答える。
「とんでもない能力ですね。えっと...あれ?オルメは...。」
「こ、ここです。いたた...。」
オルメがズレた眼鏡をなおしながら立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。で、では、案内しますので、ゴフェルを見つけに行きましょう。」
ーーー
オルメの案内で、山の中を進む。
攻撃されるような気配もない。
というか、鳥など、小動物以外の気配を感じない。
危険のない任務というのは本当だったようだ。
それにしても、本当にこんな平和は場所にゴフェルがあるのだろうか。
「あの、ゴフェルって、なんでここにあるって分かったんですか?」
「え、えっと...。」
俺の突然の質問に、オルメが焦っている。
「石板だよ。」
エマが助け舟を出した。
「石板?」
「うん、ルーク君は石板に神とノアの戦いが刻まれているのは知ってる?」
「はい、軽く見ただけですけど。」
「それなら良かった。ゴフェルはね、木片が見つかっているだけで、木そのものは見つかっていないの。」
「じゃあ、どうやって...。」
「でも、手がかりはある。木片がこれまで見つかった場所は全て神とノアが戦った地。即ち、歴史を辿ると木片の場所の予想がつく。それを元に私たちノアの覚醒者が派遣されるってわけ。」
俺だけでなく、オルメもなるほど、という顔をして話を聞く。
「じゃあここでも、戦いがあったんですね。」
「うん、2000年以上前の話だけどね。」
こんな自然に満ち溢れ、穏やかな場所で、そんな戦いが行われたとは想像するに難しい。
この場所を再び戦地にしないためにも、神の肉片を全て破壊しなければ。
ーーー
オルメが立ち止まった。
「こ、この辺りにあると思うんですけど...。」
オルメの地図が指す場所には湖があった。
「この湖の中から探せ...と?」
「そ、そういうことになります。」
オルメが申し訳なさそうに答える。
湖自体、そこまで大きい訳ではない。
しかし、かなり深そうだ。
それに、大きさや量が分からない木片を探すのはかなり時間がかかるだろう。
「1週間はかかりそうですね。」
「いや、今日中に終わるよ?」
エマはそう言うと、アークの制服を脱ぎ始めた。
俺は咄嗟に目を瞑る。
「ちょっ、エマさん!?何してるんですか!」
「何って、潜って探すんだよ。」
潜って探す?
そんなやり方でどうやって今日中に見つけると言うのだ。
「無理ですよ。どうやって探すか一旦みんなで考えましょう。」
「大丈夫だよ、これがあるから。」
目を開けると、エマさんはタンクトップと短パンのような格好に…ではなく、首から下げた十字のネックレスを指さしていた。
「それは…方舟ですか?」
「うん。ゴフェル同士は引き合う性質があるから、方舟が反応した場所を探せばいいんだよ。」
引き合う性質…。
確かにそんな性質があれば、今日中に見つけることができそうだ。
「そんな性質が…。分かりました。俺もすぐ追いかけます。」
「じゃあ先に探してるね。それとルーク君!」
「…はい!なんですか?」
「あんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいから。」
エマはそう言い残して、湖へと飛び込んでいった。
俺とエマさんは今、ニコ班長の部屋で任務の説明を受けている。
3日前まで、全身の骨が折れていたというのに。
「あのー、俺まだちゃんと骨がくっついていないんですけど。」
「あー、それは気にしないで。医療班の許可はさっき取ったから大丈夫だよ。」
「大丈夫って...。俺、死んじゃいますよ。」
「まあまあ、話を聞いてよ。」
ニコ班長に俺の話を聞く気はない。
何が何でも、俺を任務に向かわせる気だ。
「今回の任務はね、ゴフェルの回収よ。」
俺は聞き覚えのない単語に首を傾げた。
ゴフェル?
初めて聞く言葉だ。
「あー、そういうこと。」
エマは何かに気づいたような顔をする。
「危険な任務ではないけど、覚醒者が行くことが原則だからね。ルーク君1人だけじゃあれだし、エマちゃんと2人で行ってきて欲しいの。」
「分かりました。それで、どれくらいの量が?」
「うーん、そんなに多くは。でも、あるのはほぼ確定だよ。」
俺を置いて、どんどん話は進んでいく。
俺は何の話をしているのか1つも理解できていない。
「あのー、ゴフェルって?」
2人の話を遮って、質問する。
「あー、教えてなかったっけ?ゴフェルはね、方舟の材料の木だよ。」
ニコ班長が答えた。
「木って....植物の?」
「そうそう、植物の木だよ。見た目はねー、普通の木とあまりに変わらない...ってルーク君、それ...。」
ニコ班長は説明の途中で急に驚いた顔をした。
そして俺の首元を指さした。
「きゅ、急になんですか。」
「そのペンダント...。」
彼女が指さしていたのは、俺ではなく、俺の首にかかったペンダントだった。
彼女がこのペンダントに見覚えがあるのか。
いや、それは考えにくい。
何故なら、このペンダントは俺の師匠であるシモンに貰ったものだからだ。
じゃあ、なんだ?欲しいのか?
「これは、師しょ、シモンにもらったものです。」
「そう、シモンさんが...ね。ペンダントに付いているその木片、それがゴフェルだ。」
「え!?」
これがゴフェル!?
恩人からのプレゼントとはいえ、センスのないペンダントとは思っていたが…。
「ちょっと、見せてもらってもいい?」
「はい、いいですけど。」
ペンダントをニコ班長に渡す。
ニコ班長はペンダントを受け取ると、木片の部分を光に照らしたり、匂いを嗅いだりした。
一通り木片を調べ終えると、彼女は首を傾げた。
「うーん、ただのゴフェルだね。特に変わった様子もない。」
彼女はそう言うと、俺にペンダントを返した。
「俺が持っててもいいんですか?」
「あんまり良くないかもしれなけど、シモンさんが君に預けたという事は何かあるんだろう。だから、君が持ってて。」
「分かりました...。」
「ってことで、ルーク君、エマちゃん、そのゴフェルを取りに行って来て。あとは同行する探索班から聞いて。じゃあ、私は他の仕事が残ってるから、あとはよろしく。」
ーーー
「シモンさん、なんでルーク君にゴフェルなんか渡したのかな。」
「俺もこれがゴフェルだったとは。なんで俺に...。」
エマさんの言う通り、シモンがなぜ俺に方舟の材料であるゴフェルを渡したのかは謎だ。
ゴフェルを受け取った時、俺はまだノアの覚醒者ではなかった。
なぜ、そんな俺にゴフェルを...。
うーん、分からない。
まあ、変わり者のシモンのすることだ。
特に意味なんて無かった、なんて普通にありそうだ。
あまり気にするのはやめておこう。
部屋を出ると、捜索班が1人、俺たちを待っていた。
「はっはっ、初めまして!こっ、今回、任務の同行するオルメです!よ、よろしくお願いしますっ!」
フードを深く被っていて、眼鏡をかけている事以外よく顔は分からないが、声で女性だと分かった。
新人なのか、非常に緊張している様子だ。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。今回の任務はそんなに難しいものじゃないから。」
エマが笑顔でオルメを気遣う。
やっぱり天使だ。
「そ、それでも、大事な任務です。かっ、覚醒者様に、迷惑はかけられません。」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃいましょう。で、場所はどこ?」
「場所は…えーっと、アークから北西部、アルライン王国とイルメニア王国の国境近くのアラト山です。」
「うわっ、結構遠いね。」
「は、はい。で、でも今回はアークにヘンダーソン様がいらっしゃるので。」
「本当に!?やったー!」
エマは飛び跳ねて喜んだ。
ヘンダーソン…。
どこかで、聞いたことがあるような…。
ーーー
オルメに案内され、俺とエマはアーク最上階のある部屋に連れてこられた。
「どうぞ、入って。」
扉の前に立つと、部屋の中から、そう声がした。
中へと入ると、シモンと同い年くらいだろうか、整えられた白髪混じりの茶髪と特徴的な髭を蓄えた男が俺たちを出迎えた。
「いらっしゃい。お、君が新入り君だね。私はヴィル・ヘンダーソン、よろしく。」
ヴィル・ヘンダーソン...思い出した。
俺をここまでワープさせて来たあの能力の持ち主だ。
能力を聞いただけでもとんでもないと感じたが、いざ目の前にしてみると、俺やカンナリとは違う異質な強さが感じられる。
「はいっ、よろしくお願いします。」
「そんなに固くならなくで大丈夫だよ。人数は3人、場所はアラト山だったね。」
「そう、聞いています。」
「それじゃあ、良かった。行ったことがあるはずだ。」
彼はそう言うと、左の人差し指につけた指輪に触れた。
と同時に目に十字の紋様が浮かぶ。
「えっ、もう!?」
何かに気づいたオルメが驚いて尻もちをついた。
「ん?何事も早いに越した事はないだろう?」
ヴィルが微笑む。
3人の足元を囲うように円が広がった。
【完全解放】
ヴィルがそう呟くと、指輪が輝き、一気にギアが上がるのが分かった。
とてつもないエネルギーが円に集まっていく。
「じゃあ、気をつけて。いってらっしゃい。」
ヴィルのその声が聞こえると同時に、俺たち3人は、円の中に落ちた。
ーーー
「うわぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁ!」
「ぐっ、ううっ!」
ーーー
長いような、短いような不思議な時間が経った。
そして、さっきまで無くなっていた足が地面につく感覚が戻ってきた。
「おぉ...。」
目を開けると、広がっていたのは、まるで絵画のような大自然の風景だった。
それに、天気も良い。
厄災と戦う武器の材料がある場所なので、溶岩が山から溢れ出し、雷が絶え間なく落ち続ける場所を想像していたので、驚いた。
これから任務だというのに、気持ちが和んでしまう。
「もう...到着したんですか?」
「うん、やっぱりちょっと怖いけど、あっという間だね。」
エマは汗を拭いながら、笑顔で答える。
「とんでもない能力ですね。えっと...あれ?オルメは...。」
「こ、ここです。いたた...。」
オルメがズレた眼鏡をなおしながら立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。で、では、案内しますので、ゴフェルを見つけに行きましょう。」
ーーー
オルメの案内で、山の中を進む。
攻撃されるような気配もない。
というか、鳥など、小動物以外の気配を感じない。
危険のない任務というのは本当だったようだ。
それにしても、本当にこんな平和は場所にゴフェルがあるのだろうか。
「あの、ゴフェルって、なんでここにあるって分かったんですか?」
「え、えっと...。」
俺の突然の質問に、オルメが焦っている。
「石板だよ。」
エマが助け舟を出した。
「石板?」
「うん、ルーク君は石板に神とノアの戦いが刻まれているのは知ってる?」
「はい、軽く見ただけですけど。」
「それなら良かった。ゴフェルはね、木片が見つかっているだけで、木そのものは見つかっていないの。」
「じゃあ、どうやって...。」
「でも、手がかりはある。木片がこれまで見つかった場所は全て神とノアが戦った地。即ち、歴史を辿ると木片の場所の予想がつく。それを元に私たちノアの覚醒者が派遣されるってわけ。」
俺だけでなく、オルメもなるほど、という顔をして話を聞く。
「じゃあここでも、戦いがあったんですね。」
「うん、2000年以上前の話だけどね。」
こんな自然に満ち溢れ、穏やかな場所で、そんな戦いが行われたとは想像するに難しい。
この場所を再び戦地にしないためにも、神の肉片を全て破壊しなければ。
ーーー
オルメが立ち止まった。
「こ、この辺りにあると思うんですけど...。」
オルメの地図が指す場所には湖があった。
「この湖の中から探せ...と?」
「そ、そういうことになります。」
オルメが申し訳なさそうに答える。
湖自体、そこまで大きい訳ではない。
しかし、かなり深そうだ。
それに、大きさや量が分からない木片を探すのはかなり時間がかかるだろう。
「1週間はかかりそうですね。」
「いや、今日中に終わるよ?」
エマはそう言うと、アークの制服を脱ぎ始めた。
俺は咄嗟に目を瞑る。
「ちょっ、エマさん!?何してるんですか!」
「何って、潜って探すんだよ。」
潜って探す?
そんなやり方でどうやって今日中に見つけると言うのだ。
「無理ですよ。どうやって探すか一旦みんなで考えましょう。」
「大丈夫だよ、これがあるから。」
目を開けると、エマさんはタンクトップと短パンのような格好に…ではなく、首から下げた十字のネックレスを指さしていた。
「それは…方舟ですか?」
「うん。ゴフェル同士は引き合う性質があるから、方舟が反応した場所を探せばいいんだよ。」
引き合う性質…。
確かにそんな性質があれば、今日中に見つけることができそうだ。
「そんな性質が…。分かりました。俺もすぐ追いかけます。」
「じゃあ先に探してるね。それとルーク君!」
「…はい!なんですか?」
「あんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいから。」
エマはそう言い残して、湖へと飛び込んでいった。
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