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第14話 石板
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少しすると、沢山の資料や本を持ってニコ班長が帰ってきた。
「ルーク君、ちょっと机の上を片付けて。」
「え、どうやって...。」
片付けるも何も、部屋全体が散らかっているので、机の上にある大量の紙を片付ける場所がない。
「全部、床に落とせばいいから。」
俺は彼女に言われた通りに机の紙を床に全て落とした。綺麗になった?机に彼女は持っていた資料や本をドンッと置く。
「よし、じゃあ説明するね。」
「は、はい。」
彼女は本を数冊開き、指で指しながら説明を始めた。
「神とノアの歴史は知ってる?」
「はい、ノアが神と戦って、敗北を確信した神が世界に自身の肉体を拡散したってやつですよね。」
「そう、世界に散らばった神の肉片は人に寄生し、厄災という化け物に変える。厄災は、神の記憶に犯され、本能で人を殺し続ける。対抗手段はただ一つ。ノアの力による破壊よ。」
「師匠はそこまで俺に教えてくれました。」
「じゃあ歴史本に書いてあることくらいしか教えてもらってないのね。ここからは、ごく一部の人しか知らない情報よ。」
ほう、興味深い。
俺の厨二心がくすぐられる。
「神の肉片が大陸中に散らばって約1000年の間、特に何かが起こることもなく、平和が訪れた。でも、厄災はある日突然、再び現れたの。」
「そんな急に...。それは何でですか?」
「分からないわ。でも、仮説としては1つ。神が何らかの形で生きていて、1000年の時を経て復活をしたんじゃないかとアークは考えているの。」
「神が...復活...。」
それが事実だったら大変だ。
小さな肉片だけで、あれだけの力を持つ化け物が生まれるのだ。
もし、生きていたら、敵う奴など存在するのだろうか。
「厄災の再出現により、世界が闇に包まれるかと思われた時、ある3人の男が現れたの。彼らは自分たちをノアの子孫だと名乗ったわ。」
ノアの子孫...
どこかで聞いた事があるような。
シモンが俺にそんな話をしてくれたのを覚えている。
確か名前は...
「トバル・セムス...ですか?」
「へー、よく知っているのね。彼もその中の1人よ。この情報は機密情報のはずなんだけど。シモンさんは君に喋りすぎているようだね。」
「ハハハ、聞かなかったことにしておきます。」
「いや、どうせアークに入ったら説明を受けることだから大丈夫だよ。気にしないで。」
機密情報だったとは。
よくシモンもそんなに重要な事を子供にペラペラと喋ったな。
一瞬気まずい空気になったが、彼女は気にすることなく、説明を続けた。
「最初は彼らがノアの子孫だなんて誰も信じなかったわ。でも、彼らが持っていたある石板によって、それが真実だとわかったの。」
「石板?石で何が証明できるんですか?」
「ただの石板ではないわ。その石板にはノアから未来の私たち人類に向けてのメッセージが記されていたの。石板に記されていたことは主に3つ。
・神とノアの戦いの歴史
・ノアの予言
・方舟の作成方法
この3つが刻まれていたわ。」
「予言…?」
「そう、予言には、厄災が再来することの他に、それらを破壊するノアの覚醒者が現れることも書いてあったわ。そして実際にそれらが起こった。厄災に打つ手が無かったヴァルハラ大陸各国は、共同で資金を援助し、彼らがノアの覚醒者をまとめる組織を創設することを許可したの。」
「それがアークですか?」
「そうよ。」
アーク…シモンは俺にとんでもない場所を紹介したようだ。
しかし、シモンは俺に何を求めてこの組織へ向かわせたのだろうか。
シモンと最後に会った時、俺はまだノアの力に覚醒していなかったはずだ。
本来なら俺は魔術の才能で雇われるはずだったのかもしれない。
俺がノアの力に覚醒したと知ったら、シモンはどんな反応をするだろうか。
「それで、俺に厄災と戦えと。」
「おっ!話が早いね。アークは創立されて1000年が経つ。でも、戦いは常に一進一退だ。1人でも多くの覚醒者が必要なんだよ。」
「はぁ、」
「あまり…納得いってない様子だね。」
もちろん、答えはイエス!と言いたいところだが、1000年という数字を聞くと足がすくむ。
これこそ、俺が望んでいた異世界転生のシチュエーションの1つだ。でも、これだけ長い間続いている戦いに参戦するなんて、生半可な気持ちではすぐに死んでしまうだろう。
それにおそらく、俺は覚醒者の中でもかなり弱い方だ。カンナリと戦った時も一撃で行動不能になってしまった。
「いえ、別に嫌というわけではないんです。でも…」
「でも?」
「覚醒者として強さの自信が無いんです。だって、カンナリと戦った時も全く歯が立たなかったし。」
俺がそう言うと、彼女は首を横に振った。
「カンナリに歯が立たなかったのは、君が弱いからじゃない。石板に歴史と予言の他に方舟の作成方法が記されていたって言ったよね。」
「はい、それがどうかしたんですか?」
「方舟はね、ノアの力を最大限発揮するのに必要なノア専用の武器なんだ。これがあると無いとではノアの力には明確な差がある。カンナリは鎌のような武器を使っていたでしょ。方舟を持った彼に負けても仕方がないよ。」
彼女は力強い眼差しで俺を見つめた。
「それにね、アークは10年以内に、この戦いにけりをつけるつもりよ。」
彼女の言葉からは固い決意が感じられた。
しかし、1000年以上続く、一進一退のこの戦いをあと10年で終わらせるなんて可能なのだろうか。敵はバラバラになっているとはいえ、この世界の創造主である神だ。
いくらノアの力が強いからといって、そんなに簡単なものとは思えない。
「そんなこと出来るのでしょうか?」
「出来るか、出来ないかじゃない。やるの。やらなければ、いずれ人類は滅ぼされる。それに現在のアークは創設以来史上最強の戦力を誇っているわ。覚醒者の数、能力全てが揃いすぎているの。こんなチャンスが次来るのは100年後か、もしかしたら、1000年後かも。それに..。」
「それに?」
「ルーク・キャンベル、君という新しい戦力が今、アークに加わろうとしている。一緒に世界を救ってくれない?」
彼女はそう言うと、手を前に差し出した。
差し出された手を俺は握り返した。
「や、やってみます。」
転生前、願った世界を救う勇者。
やっと叶ったと思えば、敵は神ときた。
思い描いていたラスボスより少し、いや、かなり難易度か上がった。
俺のこれからの人生がスーパーハードモードであることに変わりはないだろう。
しかし、世界が俺を必要としている。
俺にしか出来ない仕事で世界を救うのだ。
やれるだけやってみよう。
俺はこの世界を救う事ために全力を尽くす事を心に誓った。
「ルーク君、ちょっと机の上を片付けて。」
「え、どうやって...。」
片付けるも何も、部屋全体が散らかっているので、机の上にある大量の紙を片付ける場所がない。
「全部、床に落とせばいいから。」
俺は彼女に言われた通りに机の紙を床に全て落とした。綺麗になった?机に彼女は持っていた資料や本をドンッと置く。
「よし、じゃあ説明するね。」
「は、はい。」
彼女は本を数冊開き、指で指しながら説明を始めた。
「神とノアの歴史は知ってる?」
「はい、ノアが神と戦って、敗北を確信した神が世界に自身の肉体を拡散したってやつですよね。」
「そう、世界に散らばった神の肉片は人に寄生し、厄災という化け物に変える。厄災は、神の記憶に犯され、本能で人を殺し続ける。対抗手段はただ一つ。ノアの力による破壊よ。」
「師匠はそこまで俺に教えてくれました。」
「じゃあ歴史本に書いてあることくらいしか教えてもらってないのね。ここからは、ごく一部の人しか知らない情報よ。」
ほう、興味深い。
俺の厨二心がくすぐられる。
「神の肉片が大陸中に散らばって約1000年の間、特に何かが起こることもなく、平和が訪れた。でも、厄災はある日突然、再び現れたの。」
「そんな急に...。それは何でですか?」
「分からないわ。でも、仮説としては1つ。神が何らかの形で生きていて、1000年の時を経て復活をしたんじゃないかとアークは考えているの。」
「神が...復活...。」
それが事実だったら大変だ。
小さな肉片だけで、あれだけの力を持つ化け物が生まれるのだ。
もし、生きていたら、敵う奴など存在するのだろうか。
「厄災の再出現により、世界が闇に包まれるかと思われた時、ある3人の男が現れたの。彼らは自分たちをノアの子孫だと名乗ったわ。」
ノアの子孫...
どこかで聞いた事があるような。
シモンが俺にそんな話をしてくれたのを覚えている。
確か名前は...
「トバル・セムス...ですか?」
「へー、よく知っているのね。彼もその中の1人よ。この情報は機密情報のはずなんだけど。シモンさんは君に喋りすぎているようだね。」
「ハハハ、聞かなかったことにしておきます。」
「いや、どうせアークに入ったら説明を受けることだから大丈夫だよ。気にしないで。」
機密情報だったとは。
よくシモンもそんなに重要な事を子供にペラペラと喋ったな。
一瞬気まずい空気になったが、彼女は気にすることなく、説明を続けた。
「最初は彼らがノアの子孫だなんて誰も信じなかったわ。でも、彼らが持っていたある石板によって、それが真実だとわかったの。」
「石板?石で何が証明できるんですか?」
「ただの石板ではないわ。その石板にはノアから未来の私たち人類に向けてのメッセージが記されていたの。石板に記されていたことは主に3つ。
・神とノアの戦いの歴史
・ノアの予言
・方舟の作成方法
この3つが刻まれていたわ。」
「予言…?」
「そう、予言には、厄災が再来することの他に、それらを破壊するノアの覚醒者が現れることも書いてあったわ。そして実際にそれらが起こった。厄災に打つ手が無かったヴァルハラ大陸各国は、共同で資金を援助し、彼らがノアの覚醒者をまとめる組織を創設することを許可したの。」
「それがアークですか?」
「そうよ。」
アーク…シモンは俺にとんでもない場所を紹介したようだ。
しかし、シモンは俺に何を求めてこの組織へ向かわせたのだろうか。
シモンと最後に会った時、俺はまだノアの力に覚醒していなかったはずだ。
本来なら俺は魔術の才能で雇われるはずだったのかもしれない。
俺がノアの力に覚醒したと知ったら、シモンはどんな反応をするだろうか。
「それで、俺に厄災と戦えと。」
「おっ!話が早いね。アークは創立されて1000年が経つ。でも、戦いは常に一進一退だ。1人でも多くの覚醒者が必要なんだよ。」
「はぁ、」
「あまり…納得いってない様子だね。」
もちろん、答えはイエス!と言いたいところだが、1000年という数字を聞くと足がすくむ。
これこそ、俺が望んでいた異世界転生のシチュエーションの1つだ。でも、これだけ長い間続いている戦いに参戦するなんて、生半可な気持ちではすぐに死んでしまうだろう。
それにおそらく、俺は覚醒者の中でもかなり弱い方だ。カンナリと戦った時も一撃で行動不能になってしまった。
「いえ、別に嫌というわけではないんです。でも…」
「でも?」
「覚醒者として強さの自信が無いんです。だって、カンナリと戦った時も全く歯が立たなかったし。」
俺がそう言うと、彼女は首を横に振った。
「カンナリに歯が立たなかったのは、君が弱いからじゃない。石板に歴史と予言の他に方舟の作成方法が記されていたって言ったよね。」
「はい、それがどうかしたんですか?」
「方舟はね、ノアの力を最大限発揮するのに必要なノア専用の武器なんだ。これがあると無いとではノアの力には明確な差がある。カンナリは鎌のような武器を使っていたでしょ。方舟を持った彼に負けても仕方がないよ。」
彼女は力強い眼差しで俺を見つめた。
「それにね、アークは10年以内に、この戦いにけりをつけるつもりよ。」
彼女の言葉からは固い決意が感じられた。
しかし、1000年以上続く、一進一退のこの戦いをあと10年で終わらせるなんて可能なのだろうか。敵はバラバラになっているとはいえ、この世界の創造主である神だ。
いくらノアの力が強いからといって、そんなに簡単なものとは思えない。
「そんなこと出来るのでしょうか?」
「出来るか、出来ないかじゃない。やるの。やらなければ、いずれ人類は滅ぼされる。それに現在のアークは創設以来史上最強の戦力を誇っているわ。覚醒者の数、能力全てが揃いすぎているの。こんなチャンスが次来るのは100年後か、もしかしたら、1000年後かも。それに..。」
「それに?」
「ルーク・キャンベル、君という新しい戦力が今、アークに加わろうとしている。一緒に世界を救ってくれない?」
彼女はそう言うと、手を前に差し出した。
差し出された手を俺は握り返した。
「や、やってみます。」
転生前、願った世界を救う勇者。
やっと叶ったと思えば、敵は神ときた。
思い描いていたラスボスより少し、いや、かなり難易度か上がった。
俺のこれからの人生がスーパーハードモードであることに変わりはないだろう。
しかし、世界が俺を必要としている。
俺にしか出来ない仕事で世界を救うのだ。
やれるだけやってみよう。
俺はこの世界を救う事ために全力を尽くす事を心に誓った。
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