魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる

K.A.

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Act 11

異相

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「せ、背中……背中を、でないで……あは、あは……あっ! ゆ、指! 指を、動かして刺激しないで……あ、あ……後ろから、胸に……後ろから、胸に手を伸ばしてこないで……私、こんな四つんいのままで……あはっ! あ、あ、あ、あ、ああっ! 裂け目っ! 裂け目っ! ゆ、指ででない……で……くんっ! くんっ! ゆ、指で刺激しないで……エリオット、やめて……くんっ! くんっ!」

「よかった。再び、楽しそうな声を出してくれるようになったね。横から顔を寄せてすまないが、頬に口づけをさせてくれ……」

「あ……頬を、めないで……み、耳っ! 耳を、くわえないで……あは……う、うなじ……うなじに舌をあてないで……く……くんっ! あ、あ……背中を、めないで……きゃ……お、おしり、めないで……何度も、何度も、おしりをめないで……はあ、はあ……あっ! ああんっ! あん! く、唇っ! エ、エリオットの唇、今、どこに……す、吸ってる? 吸われている! あはは……や、やめて……い、陰核いんかくを吸わないで……あは、あはは」

「……ふふ。後ろから責められるのは楽しい? いとしい君が、喘ぎ声をあげる事を躊躇ためらわなくなり、嬉しい限りだ。おぞましい『聖なる力』に罰を与える為、二人で力を合わせなければならない。心と心が強いきずなで結ばれたおりに『魔の力』を注ぎ込み、アリスを侵す『聖なる力』をちゅうしてやる!
 物語のように、愛の力で奇跡を起こすんだ。幸せを得る主人公は、君。
 ああ。
 今の君も、手の自由がなかったね。足は、物語の主人公と同じで動かせるようにしてやろう。腕を拘束するのは、鉄枷ではなく、僕が魔力で作り出した故、乱れてどれほど濡らしてしまっても、さびが生じる事はないが、よき結末には辿たどり着けるよ」

『あの物語は、うつつで起こったいくつかの破牢はろうをもとに著述ちょじゅつされたもの。文筆ぶんぴつしたのは女性。ずっと昔にはかなくなっているけど、愛するただ一人の人と結ばれて、終生しゅうせいを幸福につつまれ過ごした書き手が描いたのだから、読み終える事ができたら、生まれる前から牢獄に繋がれているも同然の聖女でも、少しは不幸から逃げられるかと思った』

「おやおや。その逸話は知らなかった。陰部や胸だけでなく、身体をいじられたすえに敏感になってしまった背中を、責められ続けたからお話してくれたの? 悦楽の限りに達したので、僕と楽しくお喋りをしたくなってしまったのかな?」

「……あは、ああ……あ……あっ! せ、背中で、触手がうごめいていて……や、やめ……う、うなじを、何度も何度も、でないで……み、耳の裏に、息を吹きかけないで……は、激しく、感じてしまうから……あは、あは……あ、足……足をでないで……お、おかしくなってしまうから……ああ……あは」

『大切な部分の裂け目、もう一度開かれたい――』

「え……あは、あは……わ、わたし、そんなこと……あはは……かんがえていな……ぃ……いぃあああ……さ、裂け目に……は、羽根をあてないで……は、はねで刺激……や、やめて……や……あ、あ、あっ!」

「裂け目を開いていた細い、背中をさらしてもらった際にのけてしまい、すまなかった。愛する君に対し、配慮に欠けていたと謝っておくよ。
 ふふふ。
 快楽にゆだねなくてはたえられなくなり、愛の深みに耽溺たんできしてしまいたくなってきたんだね。嬉しいな。望み通り、大切な部分の裂け目を開いてやろう」

『エリオットの『魔の力』を受け取りやすい身体になりたい――』

「あははぁああっ! ひ、ひらかないで……触手で、裂け目を……開かないで……後ろから……のぞかないで……あ……」

「急に上からおおいかぶさって、すまなかった。いとしい君を、抱きしめたい気持ちが止められなくなってしまったんだ。
 アリスも、気分が高まったようだね。
 今、『魔の力』を注がれたら、君は、しんの魔の者になれるはずだ。僕にみだりがわしい姿を見られて、の置きどころがないと気咎きとがめしているようだが、これは、威信を傷つけるような行為ではないよ。僕らが、聖女と魔王でなかったとしても、愛し合う二人は、互いに熱をびたさまを感じたいと思うものなんだ。いとしい者の紅潮こうちょうを眺め、おのれも熱情の息づかいで応じ、思考が色褪いろあせ白ばんでしまう。温かさ求め、舌と舌を絡め合い、愛撫あいぶだけで腰の動きを抑えられなくなり……が離れている方が齟齬そごをきたすといきどおったのち、僕は君の内にあり、君の内に僕がある。それが、正道を歩むと言ってよい愛だ!」

『……エリオットをがいするかもしれない『聖なる力』が宿っていなければ、私は、ただ愛に溺れたい……』

「ああっ! エ、エリオット……さ、裂け目にあてがわないで……う、後ろから……あは……手を回して、胸をんで……私をおかしくしようとしないで……ひ……胸の先に、指をあてないで……胸の先をつままないで……あ……うなじ、めないで……あうっ! た、大切なもので突いて、さ、裂け目を刺激しないで……あうっ! あうっ! だ、だめよ……せ、『聖なる力』が、少しでも残ってしまったら……わ、わたしは……あうっ! あうっ!」

「アリス、一縷いちるの不安をいだいてはいけないとは言わないよ。しかし、これから奇跡をの当たりにできるのだとしてほしい。おぞましい『聖なる力』がめっし、人間どもの聖女であった君が魔王の花嫁に生まれ変わる――その時は、今」

「あ……エ、エリオット、入ってきてすぐ……激しく、動かないで……う、後ろから入れられているのに……は、はげしく……あ、あ、あ、あ!」

『……物語の恋人たちのように、愛する人と一緒になりたいのは……本当……あ、あ、あ、あ……』

「聖女さま……二人だけの時間を過ごしたいと強く願うほど、情欲に乱れようとしてくれて嬉しいよ……似寄によりのぞうの彼女だけでなく……この牢獄も、消してしまうつもりかい? はあ、はあ……けもののような格好で、愛撫あいぶされていたのに……内も、たくさん濡らしてくれていたんだね……君は、ただ気持ちよくなる事を考えていればいい……僕の大切なものを――内にいる僕を、こんなに締めあげて……き、君の愛、とても深いものだと感じるよ……二人が永遠とわに共にいられるよう……新生しんせいの時を迎えるんだ……魔王に注がれる事、聖女さまの至上のえつとして……心に刻まれ……て……」

「あああああっ! あ……あ……そ、注がれて……わ、私……魔王に注がれている……あ……あ……せ、せなかが、うごめいている……せなかが……あ……あ……」

「……アリス! 僕の愛の言い入れ、受け取ってくれたんだね! 魔の者として生きていく事、としてくれて嬉しいよ!
 この魔王エリオット・ジールゲンがまとうべきしん烏夜うやは、黒翼こくよくを持つ花嫁。そう、君だ!」

「あ……あ……わ、わたしの背中に……あくまのつばさが……あ……あ……う! あ……か、身体の中が、おかしい……う……エリオットに注がれた『魔の力』が……おかし……く……」

「おやおや。崩れた壁の向こうは、大聖堂の広間なのかい。この狭いおりは、君が、魔へと変貌を遂げる為のまゆだったのか。
 獄所ごくしょに囚われていたのではなく、近づく羽化うかの時に向け、さなぎになっていたのだな。刑徒けいとを閉じ込める為、堅固なおりでなければならないはずなのに、不安定で崩れそうな場を描き出したのは、いずれは破って外へ飛び立つ故があったのか。
 僕が魔法で生み出した羽根は、所詮はまがいものだったが――我が花嫁の黒翼こくよくは、なんと見目麗みめうるわしい事だろう!
 勢い盛んで、内で行き場を失ってしまうほどに膨れてしまった熱情を披瀝ひれきするように、その翼を大きく揺らし、魔界の女王として夜伽よとぎに臨んでほしい! 僕だけのものになった聖女さまをいだかせてくれ」

「……つばさが……私の背中に……悪魔の翼が……ああっ! や、やめて、エリオット……私の身体を、あなたの烏夜うやころもつつみ込まないで……この悪魔の翼が……本当に、私のものになってしまう……」

「シーツの上に手足を置き、僕の方に大切な部分を向けてくれている姿も、とても美しかったよ。だが、ばくいてやりたくなったのは、やはり、君の表情の移り変わりを間近で眺めていたいと思ったからさ。胸の温かさややわらかさ、じかに感じたい。強く抱きしめていたい。花嫁として、永遠にそばにいてほしい」

「だめ……お願い……強く抱かないで……この黒い翼が生じたのは、あなたに『魔の力』を注がれた故だというのなら……今すぐ消して……お願い……そんなに優しく、抱きしめないで……魔王を愛してしまいたくない……聖女のとがを宿したまま、魔王を愛してしまいたくない」

「アリスは、すでに魔の者。僕に従うべき存在。この魔王エリオット・ジールゲンを愛したくないなど、どのような故でも許されるはずがないだろ。僕の掌中しょうちゅうたまとして、玉座ぎょくざでも、寝所ねどこでも、深い愛に溺れるのが君のさだめであり、円満な終幕。
 生まれ変わってまもなくで、今はまだ翼が縮んでしまっているようだが、僕の花嫁のうるわしいさまを見せてほしいな」

「……私のこんな姿を見ないで……だめ……だめよ……魔王を愛する気持ちが止められなくて……みだりがわしい想いに呑まれ、魔の者になり果てようとしている私の姿を見ないで……わずかでも、『聖なる力』が残っていたら……胸の内が、おかしくなってしまったら……取り返しがつかない事になってしまうかもしれないから……今すぐ、私を消して……お願い」

「もちろんだよ。アリス、君の内に、わずかでもおぞましい『聖なる力』が残っているのは望ましくない。願いを聞き入れ、人間どもの聖女であった君を、今すぐ消してやるつもりだ! さあ、君が魔の典籍てんせきにより描き出したこの大聖堂の広間で、二人の婚礼の大典たいてんを執り行おう」
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