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後ろから、社長に入れられて困っています

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 考える機能が、少しずつ戻ってきている。

 クラティアのコックピットのハッチが開いた瞬間、社長に襲われた。こじ開けられるとは思っていなかったので油断していた。
 アリストの意識を強めて思い起こしてみると、遠距離からゼルロットに攻撃されていた時も、格闘戦に持ち込まれてからも、コックピットのあたりを狙われていた。威嚇ではなく、最初からハッチに損傷を与えるつもりだったのだろう。

「アリス姉さん、もうすぐ準備が終わるからね。待たされて、退屈?」

「あ……あ……腕を、入れてこないで……む、胸……まないで……」

「ふむ。眠くなってもらうお薬が、まだ効いているようだね。反応が鈍いようだ。強いお薬ではないから、しばらくしたら頭が晴れてくるよ。準備が整うまでゆっくりしていて」

 社長は、そう言いながら、私の背中に指を走らせてきた。
 熱い息を吐き出す事はできたけど、状況把握を完了できていない。手足を拘束されていて、逃げ出せないのは間違いない。
 立て看板……? みたいなものの脚に、四肢それぞれが縛られている。伸びる素材っぽいから、ゴムバンドのようなもので拘束されているのかも。

 ここは、温室の中?
 クラティアと社長のゼルロットが抱き合う格好で、ここに突っ込んだ時に、外部を映すディスプレイ越しに見たこの場所の全容は、巨大な温室という印象だった。
 イアリーの丘にある石造りの半球体ポイン・トバルの中が、こんな風だったなんて。

「アリストメモリー。僕は、ここを、そう呼んでいる」

 内部から見た半球体は透明で、向こうがすべて見える気がするけど、顔を動かせる範囲にあるのは、雲一つない真っ青な空のよう。
 ポイン・トバルがある位置から考えると、大勢の機体が見えなければおかしい。巨大なボディを持つ、空中戦艦イレイサだって近くにいるはずだ。
 もう一つの疑問は、クラティア、ゼルロットの両機ともポイン・トバルに衝突したと思ったのだけど、まるですり抜けるように中に入る事ができた。あの時、「すり抜けろ! すり抜けろ!」と激しいぐらいに願ったけど――アリストの意識を強めてみても、けない謎が多過ぎる。
 薬の効果が薄くなってきているのが、唯一の幸いだろうか。

 古代の王さまがりょうをとる団扇うちわとしても使えそうな、巨大葉っぱが垂れさがっている。その長細い巨大植物の向こうで、小さな葉っぱをぶらさげた蔓草つるくさが、青々とした様子で場所を占めている。
 現代日本で、社長とデートに行った植物温室には、赤や黄色、そして白やピンクの可愛い花がたくさんあった。
 ポイン・トバルの中だと思われるここには、そういった観賞に向くおもむきは漂っていないようだ。
 まじまじと説明書きを眺め、意味を理解してからだと少しぞっとする食虫植物ウツボカズラに似たものが、緑のそのに、赤というより茶の色を添えている。

「あ……ああ……社長、後ろから……あは……後ろからさわらないで……はあ、はあ……あっ! ああっ! や、やめて……そこは、私の大切な部分なの……そこで……指を動かさないで……」

「裸のまま、こんな姿で拘束され、興奮しているんだろ? アリス姉さん、もう少し濡らしてほしい。今から、君の大切な部分の割れ目にさし込ませてもらわなくてはならないから」

「え……あ……いやぁ……やめて……わ、私、後ろから見られているのに……社長に入れられたら……いゃぁあ……や、やめてっ!」

 コックピット内で、注射器を持った社長に襲われた。
 朦朧もうろうとしているところ、パイロットスーツを脱がされた。クラティアの外に運び出され、太い木のたもとに連れて行かれた。
 身体が自由に動かなかった。
 下着だけの姿にされてしまったので、木の周りの尖った葉を持つ植物が肌に触れるのが少し気になった。でも、その刺激のおかげで、アリストの意識を強める事ができた。どうにか深い眠りに落ちずに済んだ。

 パイロットスーツ姿の社長が、ゼルロットのコックピット内から持ち出してきたのが、今、私が繋がれている立て看板みたいなもの。たいした抵抗もできないまま、下着すら脱がされ、手足を固定されてしまった。
 起こった出来事を思い返してみたところで、有効な打開策を見出せない。

 立て看板みたいなもの、飲食店入口のメニューボードとしてお馴染みのあれっぽく感じる。身体をくの字に曲げられ、手足を開かされている。私の大切な部分の割れ目は、当然のようにさらされてしまっている。これから、どのような扱いを受けるのだろうと怯える気持ちは、もう抑えられていない。

「い……いやぁ……社長、な、めないで……後ろから……あは……ああん……後ろから、私の大切な部分に、舌をあてないで……は、あは」

 社長に大切な部分をめられ、刺激の強さにたえられず身体を揺らすけど、手足がほんの少し動くだけ。やっぱり、伸縮性のあるゴムバンドのようなもので縛られているみたいだ。それが分かったところで、今すぐ対処できる事はない……

「アリス姉さん、そんなに緊張しないで。君の協力が必要なんだ。アリストメモリーに残る彼女の記憶と接続したい」

「彼女……アリストメモリー……アリストの記憶……? あっ! ああんっ!」

 社長の指先が、割れているところで縦に動いた。最後に、敏感な部分のあたりで指を回されてしまった。
 熱をびた息を吐くのとほぼ同時に、大切な部分が濡れていく……

「あ……あ……み、見ないで……」

「ふふふ。僕に見られていると改めて気づいてしまった事で、興奮が増したようだね。またしずくが生まれたようだ。あははっ。頬を赤くし、まぶたを閉じても無駄だよ! 僕の瞳には、君のすべてが映っている! うんうん。そのまま高みに向かってほしい――ここ。アリス姉さんのここを貸してほしいんだ。僕の指が触れている、ここだよ。そう、アリストメモリーには、アリストの記憶が残っている。僕は、それを知りたい。彼女の無念の記憶をね」

 社長が、『ここ』と表現した部分に、指がう感覚。

「あ、あ、ああっ! ゆ、指を、動かさないで……あは、あは……アリストの無念? あっ……あっ……え……ひっ! しゃ、社長……な、何をあてがって……私の大切な部分に、何をあてがって!」

「割れ目に、棒が触れただけさ。心配はいらない。今から、さし込ませてもらうが、アリス姉さんの様子を確認しながら、ゆっくりと奥に入れていくよ」

 弱々しく、「いやぁ……」という声を出すけど、棒だと言うものが、大切な部分を裂きながらさし込まれる。

 青いガラスのうつわに、ピンクの花が浮かんでいる演出がされていた。現実から逃げようと必死になった時、ふと頭に浮かんできたのは、現代日本で、社長と温室デートをした日の事。
 鉢植えを集めて作られた、お花のシャンデリアの写真が上手に撮れずに苦戦していたら、社長が、モードの切り替え操作をしてくれた。
 温室の鉄骨に、太陽の光が反射している箇所があるのもよい写真が撮れない原因だと教えてくれて、肩を支えるように移動を指示してくれた。
 綺麗な写真が撮れたと子供のようにはしゃぐ私を見つめてくれる社長の瞳は、優しさを感じるものだった。

『始発の時間に出発してもらう事になるので、誘うか迷ったが、天王寺先輩がここまで喜んでくれるのを見えて嬉しいよ。雑誌で見つけた時から、それほど大きな施設ではないと分かっていたが、ここで、君と過ごしたいと考えてしまったんだ。近い場所でもないのに、行きたい思いが止まらなくて……天王寺先輩、僕のワガママに付き合ってくれてありがとう』

 温室以外には、小さなカフェと産地直売所があるぐらいで、デートスポットとして、大々的に雑誌に掲載されるような場所ではなかった。ビジネス誌に『地元の取り組み』記事として紹介されていたらしい。写真をいくつか見ただけでとても気に入り、デートに誘ってくれた。
 開館時間より少し前に到着して、私たちが一番乗り。というか、そのまま一時間以上、誰もこなかった。
 温室内の木製ベンチに二人で腰掛け、気づけば肩を寄せ合い、恋人同士の一時ひとときを堪能。

 演出の為に用意された、大きな壺に水が流れ込む音が聞こえるだけで、あとは、二人のお喋りが響いていた。

 草木や花々に囲まれる中、温かい眼差しを向けてくれていた社長は、今、敵方であるジェネの白いパイロットスーツにつつみ、横から顔を寄せ、私の頬をめ回している……

「英雄だと祭りあげられ、身命しんめいし戦わされた挙げ句、彼女は、このアリストメモリーで最期を迎えるよういられた。彼女の悲痛の叫び、恨みつらみの記憶について教えてほしい。アリス姉さんの大切な部分の割れ目にさし込ませてもらった棒、この場所に残る、アリストの記憶にアクセスする為に僕が開発したものだ」

「あっ! ああっ! いやぁ……む、胸のところに手を入れてこないで……こ、これ以上……あは、はあ……」

 立て看板みたいなものに拘束されたまま、社長に胸の先をいじられる。
 無理な角度で腕を押し込むという強引な動きが、妙な興奮を与えてくる。
 鏡とかに映されなくても、自分がとてもむごたらしい目にあっているのは容易に想像できる。

『うわ! 写真よりも、おいしそうだ。君と、温室で過ごしたあと、このカフェで、フルーツいっぱいのパフェを食べるのも楽しみにしてきたんだ。仕事の移動中に、何気なく見つけた記事に目が釘付けだったよ。温かな一時ひとときに癒やされ、さらに、口の中も満たされるデートをする事ばかり考えてしまった。天王寺先輩が注文した方もおいしそうだね。お皿いっぱいにフルーツが盛られているし、クレープの上も、マロングラッセで飾られている』

 パフェを目の前にすると、社長は、子供に戻ったかのような様子をいつも見せてくれた。
 私と付き合う前は、パフェを食べた事がなかったと言っていた。
 よい家の生まれだから、庶民的なスイーツを食べさせてもらえなかったんだろうと簡単に納得がいった。御曹司――というのが、まさか、異世界のジェネの総帥一家だとは当時は思わなかったけど。

「……ん……んんっ! ん……ぷは……はあ、はあ……社長、私の口の中、舌でいじらないで……もう、やめて……どうして、こんな事を……んんんっ!」

 裸にされているのに、肌にあたる外気が嫌な思いを与えてくる事はない。空調管理が完璧みたい。そんな風に考えてしまうぐらい。
 社長に至るところをいじられ、身体が熱をびてきているけど、外気を要因にした不快感はない。
 ポイン・トバル――社長が、アリストメモリーと呼ぶこの場所も、あの日の温室のように、ほどよい温もり模様の空間だ。

「アリス姉さんの口の中が、おいしそうだったから。下唇を噛まれるのは好き? それとも、唇の上をめ回される方が、快感を得られる?」

 今、私に冷酷な仕打ちをするのは、温もりの一時ひとときをたくさん与えてくれた人だ。
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