R-指定ロリっ娘彼女

泣いた美琴

美琴は紗奈が凌央の事を好きなことに
気づいた。その理由は、観客席から
凌央に手を振っていた時の事である。

凌央が皆に手を振り返した時、
｢あれが、私一人のものだったらな...｣
紗奈はそう呟いた。それを知ったのは
ここでたった二人である。
紗奈と美琴である。
それにどう対応すればいいのか
分からなかった。凌央と釣り合うのは美琴か
紗奈か、それが分からなかった。
分かりたくもなかった。
紗奈は凌央の幼なじみだ。
さらに二人の仲はとても良かった。
そんな紗奈の気持ちを押しきってまで、
美琴は凌央に対する『好き』という
気持ちを貫き通す事は出来なかった。
する勇気さえなかった。

美琴はそんなことを考えているうちにふと
｢紗奈も凌央のこと好きなの？｣
と聞いてしまった。
｢ん？まぁ、ずっと一緒にいたしな、
そりゃぁ、恋愛感情の一つくらい
目覚めますよ｣
そう恥ずかしることもなく言った。
その瞳は何一つの障害を写すことも
なかった。
｢...だったらさ...告白しちゃいなよ｣
美琴がそう言うと
｢もう、いっそのことそうしたいんだけどさ
振られたらどうしよう、その後の関係は
どうなるんだろう、って怖くなるんだ｣
そう言った紗奈に美琴は
｢安心して！私が助けるから！｣
私は何を言っているんだ。自分の彼氏と
付き合わせるって、どういうことだ？
美琴は自分が何を言っているのか分からなく
なった。
｢ありがとう！｣
紗奈がそう元気な返事を返した時、
取り返しのつかない状況になってしまった。
取り返しのつかない状況を
つくってしまった。
それはちょうど凌央にバトンが行き渡った時の事だった。

その日の夜、美琴と紗奈は電話で
どうやって告白するかを考えた。
｢...やっぱりムードあるところでかな？｣
紗奈がそう言うと
｢でもまず凌央をムードあるところまで
連れていけるかな？｣
美琴がそう言うと
｢無理だね｣
そう紗奈は言った。
二人はまた振り出しに戻った。
紗奈と美琴はそれを何回もくりかえした。
その度に美琴の心は傷ついた。
だが、本当のことを美琴は言えなかった。
そんな自分が美琴は嫌で、
心臓がしまるような感覚があった。
電話がおわつた後、
気がついたら美琴は泣いていた。
電話を耳に寄せたまま泣いていた。
それは誰にも気づかれないほどの
気持ちだった。誰にも気づいてほしくない
ほどのあわれな気持ちだった。