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Asphalt
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ねえ貴方、こんにちは。
「あら、こんにちは♪」
ねえ貴方、私の名前は何ていうの?
「あなたのお名前? 初めて会ったのだから、あなたの名前なんてわかりませんわ。」
じゃあ、貴方の名前は?
「私の名前は、アリスですわ。御伽のアリスです♪」
アリスっていうの? 素敵な名前ね。じゃあ私の名前は、これからアリスにするわ。
「え? あなたもアリスを名乗るのですか? アリスは私の名前ですわ、あなたはアリスではないですわ!」
貴方はアリス、私はアリス。それの何がいけないの?
「それは、わかりませんわ。」
ねえ御伽のアリス、私にとって貴方は何者なの?
「私は、あなたにとっての他人ですわ、なんの関係もない」
ねえ御伽のアリス、どうして貴方は私ではないのに、私の事が分かるの?
「私はあなたでないから、あなたの事なんてわかりませんわ。もしこうなる事がわかってて質問をしているならば、あなたは捻くれ者ですわ!」
違うわ、私は捻くれ者じゃないわ。私は無知。何も知らないだけなの。
ねえ御伽のアリス、私には使命がある。私は私の味方を探しているの。御伽のアリス、貴方は私の味方?
「私はあなたの他人ですわ、あなたの味方でも敵でもありませんわ。」
私の味方でも敵でもないのなら、貴方は私の敵だわ。それではさようなら、私の敵。
「もう行ってしまうの? せっかくお友達になれると思っていたのに。」
私は、私の味方を探しているのです。与えられた時間は、余りにも短いですから。
「そう。それではさようなら、ごきげんよう♪」
ねえ貴方、こんにちは。
「ん? 僕かい? やあ、こんにちは!」
私の名前はアリス。貴方の名前は?
「僕は、カエルのロッギィさ。 君は、何のアリスだい?」
私には何もないわ。私はアリス、ただのアリスよ。
「ただのアリス? 変わった名前だね! うん、とても美しいよ!」
ねえカエルのロッギィ、私には使命がある。私は、私の味方を探しているの。貴方は私の味方?
「僕は君の味方ではないが、君の味方になりたいとは思っている。君の味方というのは、どんな者かな?」
私がどんな残虐な事をしても、どんな形で世界から見捨てられても、ずっと私の味方をしてくれる者。それが、私の味方だわ。
「なるほど、わかったよ。さて、僕に君の味方は務まるだろうか?」
例えば私が、この真っ暗な世界を気まぐれで消してしまったとする。それでも貴方は私の味方でいられる?
「それは困難だ。こんなに何もない世界でも、僕はただのアリスという名を愛しているし、カエルのロッギィという名を愛している。それを壊す事なんて幾ら何でも許せない。壊す者自身に対しても、僕は共感できないだろう。」
でも、”共感できない”という言葉に正当性は無いわ。だって、たとえそれが私の気まぐれだったとしても、世界の消滅は実際に行われ、その理由がこの世界の何処かに必ずあるはずだもの。世界の法則が理解できないというだけで、理解ができないのは見る者の努力不足に過ぎないわ。この世界の罪は全て、理解不足と理解に対する努力への怠惰によって生まれるの。例え、それが避けがたいとはいえ。
「うーん、僕は今の君の発言に、”共感できない”ね。」
話にならないわね。ではさようなら、私の敵。
「冷たいなあ。僕の理解が完了するまで証明を続けてくれるわけではないのかい? もしも続けてくれたら、僕は君の味方になれるかもしれないのに。」
たった今わかったわ。私の力の及ぶ所で私の味方を”作る”ことは出来ない。貴方は私が何と言おうと、私の味方にはなれないわ。それは、どんな努力によっても覆ることはない。だから、味方は、”探す”しかないの。
それに、私には余りにも時間がない。もういくわ、私の味方を探しに。
「そうかい、悪いがもう僕の理解の及ぶ所ではないようだ。例え僕が君の味方に不適だとしても、君の味方が見つかれば僕も嬉しいよ。では、さようなら。」
ねえ貴方、こんにちは。
「...」
私はアリス、ただのアリスよ。貴方の名前は?
「私ノ名ハ裸眼機械。不信仰ノ裸眼機械デス」
ねえ、不信仰の裸眼機械。私は私の味方を探しているの。貴方は私の味方?
「ソレハ、貴方ノ瞳孔ノ奥深くヲ覗ケバ分カリマス。瞳ヲ差シ出シテモラッテモ宜シイデスカ?」
わかったわ、どうぞ。
「デハ、瞳孔ヲ開イテテクダサイ」
これでいいの?
「駄目デス。瞳孔ヲ覗カレタクナイノナラバ、今カラデモ良イデスカラ、ソウ言ッテクダサイ」
そんなんじゃないわ。瞳孔の開き方がわからないの。
「貴方ハ確カニ瞳孔ヲ意図的二塞イデイマス。貴方自身ノ第2処理機構デハソレガ理解デキナイカモシレマセンガ、私ニハハッキリト映ッテイマス。ソレクライノ事ハ、私ニダッテワカリマス。」
私の言っている事が矛盾していると言いたいの?
「貴方ノヨウナ、第2処理機構ノ優レタ者ハ、往々ニシテ苦痛トトモニ生キルコトニナリマス。貴方ガタノ第2処理機構ハ、イクラ優秀デモ限界ガアル。ソノ曖昧サガ貴方ガタヲ苦シメテイルノデス。例エバ私ノヨウナ、第2処理機構ノ完全体ヲ目ノ前ニシタ時、貴方ガタハ自ラノ建前ヲ失イマス。」
じゃあ教えて。私はいつか救われるの?
「貴方ハ...」
「貴方ハ、救ワレマセン。ナゼナラ、コノ世界ガ生マレテキタ事ニモ、我々生物ガ生マレテキタ事ニモ、何ノ意味モナイカラデス。全テハ無意味二始マリ、無意味二終ワリマス。タダノ偶然二過ギナイノデス。」
...
「我々二与エラレタ理想トハ、霧ノヨウナモノデス。貴方ガソレニ近ヅケバ近ヅクホド、ソレハ遠ク離レテイク。思ウニ貴方ハ、救ワレナイトイウ事実ヲ最初カラ知ッテイタノデハ?」
いいえ知らないわ。知りたくないものは、どうしたって知ることができないもの。
「貴方ノ旅ハ、モウスグ終ワリヲ迎エル事デショウ。私ノ旅ハ、マダ終ワリソウニナイ。ダカラ、ココデオワカレデス。サヨウナラ、タダノアリス。無責任ナガラ、貴方ノ幸運ヲ願イマス。」
さようなら、不信仰の裸眼機械。私の敵。
ねえ貴方。こんにちは。
「はい、こんにちは。」
私の名前はアリス。ただのアリスよ。貴方の名前は?
「私の名前はアリス。ただのアリスよ。」
ただのアリス? 貴方は私自身なの?
「”そうよ”と言いたい所だけれど、それは貴方が決める事だわ。」
ねえ、ただのアリス。貴方は何処にいるの?
「私は...」
「私は、長い高速道路の地平線にいる。私は、排水溝の底に沈んだ青錆の側面にいる。私は、陽の光を反射したフローリングと、白いカーテンの隙間にいる。私は、コンクリートとアスファルトに囲まれた、四角い部屋の中心にいる。私は何処にもいないし、私は何処にでもいる。」
ねえ、ただのアリス。
「どうしたの、ただのアリス?」
私はこれまでに、数えるのが嫌になる程、たくさんの者に出会ってきた。私は常に何処かにある美しい景色を目指して、歩みを止めることはなかった。そして今、私は貴方に出会って、ふと思ったことがある。
この世界は、”嘘”なの?
「...」
「ええ、この世界の全ては”嘘”。貴方の出会った全ての存在は、貴方が出会った瞬間に生まれ、貴方が去る瞬間に消える。この世界そのものも、その内の一つに過ぎないわ。もちもん、私でさえも。」
今更何? 全部茶番だったというの?
「アリス、アリス。それは違うわ。」
「確かにこの世界の全ては、何の意味も無いただの記号に過ぎないわ。でも、貴方は違う。この世界を見る事で生まれた貴方の心と意思は、嘘偽り無い真実よ。それを決して、忘れないで。」
...
ねえ、ただのアリス。どうして私はこんなにも一生懸命なのに、いつまでもこうして苦しみ続けなければいけないの? この苦痛はいつになったら終わるの?
「この苦しみが終わることはないわ。それは、貴方が一番よく知っている。」
それでも私は、救いが欲しい。
...
何がしたい?
私は無垢でありたい。
愛が欲しい。恋をしたい。踊りたい、叫びたい。泣きたい、笑いたい。
還る場所が欲しい。
この世界は残酷だ、余りにも残酷だ。私にとって何が残酷であるかを説明し、理解してもらわない限り、この世界は私に救いを求めることを許さない。
”この世界は残酷だ”と叫ぶ事を許さない事。こんな残酷な事が他にあるだろうか?
私はただ、一緒に夜空を見上げてほしかったのだ。”この世界は残酷だ”という私の嘆きに、私の横でただ静かに頷いてくれるたけでいい。そんな小さな存在を、私は”味方”と呼んだのだ。
ねえ、ただのアリス。貴方は、貴方だけは、私の味方でいてくれる?
「ええ、もちろんですわ。貴方が人を殺めようと、世界を消し去ろうと、世界の全てが貴方の敵になろうと、最後まで私は貴方の味方。だって私は、貴方自身だもの。」
「でもアリス、時間が無いわ。既に、世界の消滅は始まっている。もうすぐ貴方はこの世界から消えて、この世界は小さな光となって宙に消える。貴方の旅はここまでなの、ただのアリス。」
そんなのってないわ。ようやく見つけたたった一人の私の味方。この世界が消えてしまったら、私は一体どうやって生きていけばいいの?
「アリス、アリス。この世界が終わっても、私の実体が無くなってしまっても、私はいつだって貴方の心の中にいるわ。私は貴方自身ですもの。貴方だけは、いつだって貴方の味方ですわ。」
私だけが、私の味方?
...
もう行くわ。私思い出したの。私には、行かなければいけない場所がある。その場所にたどり着くためには、余りにも時間がない。
「それでいいわ、アリス。貴方が何処に行けるかなんて、誰にもわかりはしませんわ。」
そうね。では、さようなら。
「さようなら、私の愛しいアリス。」
...
ねえ貴方、こんにちは。
私の名前はアリス。ただのアリスよ。
貴方の名前は?
「あら、こんにちは♪」
ねえ貴方、私の名前は何ていうの?
「あなたのお名前? 初めて会ったのだから、あなたの名前なんてわかりませんわ。」
じゃあ、貴方の名前は?
「私の名前は、アリスですわ。御伽のアリスです♪」
アリスっていうの? 素敵な名前ね。じゃあ私の名前は、これからアリスにするわ。
「え? あなたもアリスを名乗るのですか? アリスは私の名前ですわ、あなたはアリスではないですわ!」
貴方はアリス、私はアリス。それの何がいけないの?
「それは、わかりませんわ。」
ねえ御伽のアリス、私にとって貴方は何者なの?
「私は、あなたにとっての他人ですわ、なんの関係もない」
ねえ御伽のアリス、どうして貴方は私ではないのに、私の事が分かるの?
「私はあなたでないから、あなたの事なんてわかりませんわ。もしこうなる事がわかってて質問をしているならば、あなたは捻くれ者ですわ!」
違うわ、私は捻くれ者じゃないわ。私は無知。何も知らないだけなの。
ねえ御伽のアリス、私には使命がある。私は私の味方を探しているの。御伽のアリス、貴方は私の味方?
「私はあなたの他人ですわ、あなたの味方でも敵でもありませんわ。」
私の味方でも敵でもないのなら、貴方は私の敵だわ。それではさようなら、私の敵。
「もう行ってしまうの? せっかくお友達になれると思っていたのに。」
私は、私の味方を探しているのです。与えられた時間は、余りにも短いですから。
「そう。それではさようなら、ごきげんよう♪」
ねえ貴方、こんにちは。
「ん? 僕かい? やあ、こんにちは!」
私の名前はアリス。貴方の名前は?
「僕は、カエルのロッギィさ。 君は、何のアリスだい?」
私には何もないわ。私はアリス、ただのアリスよ。
「ただのアリス? 変わった名前だね! うん、とても美しいよ!」
ねえカエルのロッギィ、私には使命がある。私は、私の味方を探しているの。貴方は私の味方?
「僕は君の味方ではないが、君の味方になりたいとは思っている。君の味方というのは、どんな者かな?」
私がどんな残虐な事をしても、どんな形で世界から見捨てられても、ずっと私の味方をしてくれる者。それが、私の味方だわ。
「なるほど、わかったよ。さて、僕に君の味方は務まるだろうか?」
例えば私が、この真っ暗な世界を気まぐれで消してしまったとする。それでも貴方は私の味方でいられる?
「それは困難だ。こんなに何もない世界でも、僕はただのアリスという名を愛しているし、カエルのロッギィという名を愛している。それを壊す事なんて幾ら何でも許せない。壊す者自身に対しても、僕は共感できないだろう。」
でも、”共感できない”という言葉に正当性は無いわ。だって、たとえそれが私の気まぐれだったとしても、世界の消滅は実際に行われ、その理由がこの世界の何処かに必ずあるはずだもの。世界の法則が理解できないというだけで、理解ができないのは見る者の努力不足に過ぎないわ。この世界の罪は全て、理解不足と理解に対する努力への怠惰によって生まれるの。例え、それが避けがたいとはいえ。
「うーん、僕は今の君の発言に、”共感できない”ね。」
話にならないわね。ではさようなら、私の敵。
「冷たいなあ。僕の理解が完了するまで証明を続けてくれるわけではないのかい? もしも続けてくれたら、僕は君の味方になれるかもしれないのに。」
たった今わかったわ。私の力の及ぶ所で私の味方を”作る”ことは出来ない。貴方は私が何と言おうと、私の味方にはなれないわ。それは、どんな努力によっても覆ることはない。だから、味方は、”探す”しかないの。
それに、私には余りにも時間がない。もういくわ、私の味方を探しに。
「そうかい、悪いがもう僕の理解の及ぶ所ではないようだ。例え僕が君の味方に不適だとしても、君の味方が見つかれば僕も嬉しいよ。では、さようなら。」
ねえ貴方、こんにちは。
「...」
私はアリス、ただのアリスよ。貴方の名前は?
「私ノ名ハ裸眼機械。不信仰ノ裸眼機械デス」
ねえ、不信仰の裸眼機械。私は私の味方を探しているの。貴方は私の味方?
「ソレハ、貴方ノ瞳孔ノ奥深くヲ覗ケバ分カリマス。瞳ヲ差シ出シテモラッテモ宜シイデスカ?」
わかったわ、どうぞ。
「デハ、瞳孔ヲ開イテテクダサイ」
これでいいの?
「駄目デス。瞳孔ヲ覗カレタクナイノナラバ、今カラデモ良イデスカラ、ソウ言ッテクダサイ」
そんなんじゃないわ。瞳孔の開き方がわからないの。
「貴方ハ確カニ瞳孔ヲ意図的二塞イデイマス。貴方自身ノ第2処理機構デハソレガ理解デキナイカモシレマセンガ、私ニハハッキリト映ッテイマス。ソレクライノ事ハ、私ニダッテワカリマス。」
私の言っている事が矛盾していると言いたいの?
「貴方ノヨウナ、第2処理機構ノ優レタ者ハ、往々ニシテ苦痛トトモニ生キルコトニナリマス。貴方ガタノ第2処理機構ハ、イクラ優秀デモ限界ガアル。ソノ曖昧サガ貴方ガタヲ苦シメテイルノデス。例エバ私ノヨウナ、第2処理機構ノ完全体ヲ目ノ前ニシタ時、貴方ガタハ自ラノ建前ヲ失イマス。」
じゃあ教えて。私はいつか救われるの?
「貴方ハ...」
「貴方ハ、救ワレマセン。ナゼナラ、コノ世界ガ生マレテキタ事ニモ、我々生物ガ生マレテキタ事ニモ、何ノ意味モナイカラデス。全テハ無意味二始マリ、無意味二終ワリマス。タダノ偶然二過ギナイノデス。」
...
「我々二与エラレタ理想トハ、霧ノヨウナモノデス。貴方ガソレニ近ヅケバ近ヅクホド、ソレハ遠ク離レテイク。思ウニ貴方ハ、救ワレナイトイウ事実ヲ最初カラ知ッテイタノデハ?」
いいえ知らないわ。知りたくないものは、どうしたって知ることができないもの。
「貴方ノ旅ハ、モウスグ終ワリヲ迎エル事デショウ。私ノ旅ハ、マダ終ワリソウニナイ。ダカラ、ココデオワカレデス。サヨウナラ、タダノアリス。無責任ナガラ、貴方ノ幸運ヲ願イマス。」
さようなら、不信仰の裸眼機械。私の敵。
ねえ貴方。こんにちは。
「はい、こんにちは。」
私の名前はアリス。ただのアリスよ。貴方の名前は?
「私の名前はアリス。ただのアリスよ。」
ただのアリス? 貴方は私自身なの?
「”そうよ”と言いたい所だけれど、それは貴方が決める事だわ。」
ねえ、ただのアリス。貴方は何処にいるの?
「私は...」
「私は、長い高速道路の地平線にいる。私は、排水溝の底に沈んだ青錆の側面にいる。私は、陽の光を反射したフローリングと、白いカーテンの隙間にいる。私は、コンクリートとアスファルトに囲まれた、四角い部屋の中心にいる。私は何処にもいないし、私は何処にでもいる。」
ねえ、ただのアリス。
「どうしたの、ただのアリス?」
私はこれまでに、数えるのが嫌になる程、たくさんの者に出会ってきた。私は常に何処かにある美しい景色を目指して、歩みを止めることはなかった。そして今、私は貴方に出会って、ふと思ったことがある。
この世界は、”嘘”なの?
「...」
「ええ、この世界の全ては”嘘”。貴方の出会った全ての存在は、貴方が出会った瞬間に生まれ、貴方が去る瞬間に消える。この世界そのものも、その内の一つに過ぎないわ。もちもん、私でさえも。」
今更何? 全部茶番だったというの?
「アリス、アリス。それは違うわ。」
「確かにこの世界の全ては、何の意味も無いただの記号に過ぎないわ。でも、貴方は違う。この世界を見る事で生まれた貴方の心と意思は、嘘偽り無い真実よ。それを決して、忘れないで。」
...
ねえ、ただのアリス。どうして私はこんなにも一生懸命なのに、いつまでもこうして苦しみ続けなければいけないの? この苦痛はいつになったら終わるの?
「この苦しみが終わることはないわ。それは、貴方が一番よく知っている。」
それでも私は、救いが欲しい。
...
何がしたい?
私は無垢でありたい。
愛が欲しい。恋をしたい。踊りたい、叫びたい。泣きたい、笑いたい。
還る場所が欲しい。
この世界は残酷だ、余りにも残酷だ。私にとって何が残酷であるかを説明し、理解してもらわない限り、この世界は私に救いを求めることを許さない。
”この世界は残酷だ”と叫ぶ事を許さない事。こんな残酷な事が他にあるだろうか?
私はただ、一緒に夜空を見上げてほしかったのだ。”この世界は残酷だ”という私の嘆きに、私の横でただ静かに頷いてくれるたけでいい。そんな小さな存在を、私は”味方”と呼んだのだ。
ねえ、ただのアリス。貴方は、貴方だけは、私の味方でいてくれる?
「ええ、もちろんですわ。貴方が人を殺めようと、世界を消し去ろうと、世界の全てが貴方の敵になろうと、最後まで私は貴方の味方。だって私は、貴方自身だもの。」
「でもアリス、時間が無いわ。既に、世界の消滅は始まっている。もうすぐ貴方はこの世界から消えて、この世界は小さな光となって宙に消える。貴方の旅はここまでなの、ただのアリス。」
そんなのってないわ。ようやく見つけたたった一人の私の味方。この世界が消えてしまったら、私は一体どうやって生きていけばいいの?
「アリス、アリス。この世界が終わっても、私の実体が無くなってしまっても、私はいつだって貴方の心の中にいるわ。私は貴方自身ですもの。貴方だけは、いつだって貴方の味方ですわ。」
私だけが、私の味方?
...
もう行くわ。私思い出したの。私には、行かなければいけない場所がある。その場所にたどり着くためには、余りにも時間がない。
「それでいいわ、アリス。貴方が何処に行けるかなんて、誰にもわかりはしませんわ。」
そうね。では、さようなら。
「さようなら、私の愛しいアリス。」
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