56 / 57
〜55章〜
魔女の憂鬱 その六
しおりを挟む
「まったく。嫌になるわ」
魔女シニコローレは雲一つない空の下、枯れ果てて朽ちた大木に腰を掛け一人口笛を吹いていた。そこは魔女の「いつもの場所」であった。
「にゃーお」
小さな黒猫がそれに合わせるかのように鳴いている。
どこまでも果てしなく続く地平線はいつもと変わらず退屈で、照りつける陽光もまたいつもと変わらず意地悪であった。
七色に輝くパラソルに身を隠していた魔女はそれでもどこか晴れやかな顔をしており、いつまでも口笛を吹いている。
「噛ませ犬ね、完全に」
まったくもう、とため息をつきながらも優しく微笑んだ魔女は懐からそっとタバコを取り出し煙を巻き始めた。
コーラス相手がいなくなり退屈してしまったのか、黒猫はゆっくりとまどろみ始める。
「誰か教えてくれればよかったのに。・・・骨折り損だわ!」
魔女は黒猫の頭を優しく撫で回しながら、笑顔で悪態をついていく。
ほんの少しばかりの風がタバコの煙をゆっくりとさらっていく。
いつもと変わらぬ光景は、いつもよりも少しだけ輝いて見えた。
「はぁ・・・なんて素敵なのかしら」
うっとりとした表情を浮かべ、空を見上げる魔女。その目はどこか別のところを思い浮かべているかのようにぼんやりとしていた。
黒猫が不思議そうに片目を開けてその魔女を見上げる。
視線に気がついたのか、ふふっと笑顔を浮かべウィンクを送る魔女。黒猫は意に介さずといった様子で欠伸を一つ、吐き出した。
ふんっと再び空を見上げ、ゆっくりとタバコの煙を吐き出す魔女。
「またいつか、どこかで」
誰に言うでもなく、魔女は一人呟いた。
魔女シニコローレは雲一つない空の下、枯れ果てて朽ちた大木に腰を掛け一人口笛を吹いていた。そこは魔女の「いつもの場所」であった。
「にゃーお」
小さな黒猫がそれに合わせるかのように鳴いている。
どこまでも果てしなく続く地平線はいつもと変わらず退屈で、照りつける陽光もまたいつもと変わらず意地悪であった。
七色に輝くパラソルに身を隠していた魔女はそれでもどこか晴れやかな顔をしており、いつまでも口笛を吹いている。
「噛ませ犬ね、完全に」
まったくもう、とため息をつきながらも優しく微笑んだ魔女は懐からそっとタバコを取り出し煙を巻き始めた。
コーラス相手がいなくなり退屈してしまったのか、黒猫はゆっくりとまどろみ始める。
「誰か教えてくれればよかったのに。・・・骨折り損だわ!」
魔女は黒猫の頭を優しく撫で回しながら、笑顔で悪態をついていく。
ほんの少しばかりの風がタバコの煙をゆっくりとさらっていく。
いつもと変わらぬ光景は、いつもよりも少しだけ輝いて見えた。
「はぁ・・・なんて素敵なのかしら」
うっとりとした表情を浮かべ、空を見上げる魔女。その目はどこか別のところを思い浮かべているかのようにぼんやりとしていた。
黒猫が不思議そうに片目を開けてその魔女を見上げる。
視線に気がついたのか、ふふっと笑顔を浮かべウィンクを送る魔女。黒猫は意に介さずといった様子で欠伸を一つ、吐き出した。
ふんっと再び空を見上げ、ゆっくりとタバコの煙を吐き出す魔女。
「またいつか、どこかで」
誰に言うでもなく、魔女は一人呟いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悠久のクシナダヒメ 「日本最古の異世界物語」 第一部
Hiroko
ファンタジー
異世界に行けると噂の踏切。
僕と友人の美津子が行きついた世界は、八岐大蛇(やまたのおろち)が退治されずに生き残る、奈良時代の日本だった。
現在と過去、現実と神話の世界が入り混じる和の異世界へ。
流行りの異世界物を私も書いてみよう!
と言うことで書き始めましたが、どうしようかなあ。
まだ書き始めたばかりで、この先どうなるかわかりません。
私が書くと、どうしてもホラーっぽくなっちゃうんですよね。
なんとかなりませんか?
題名とかいろいろ模索中です。
なかなかしっくりした題名を思いつきません。
気分次第でやめちゃうかもです。
その時はごめんなさい。
更新、不定期です。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる