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〜38章〜
奪還
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首都ドゥロルパからそう遠くない郊外に海賊の根城はあった。
ソルとコーモスはもうかれこれ三十分以上、木の影からその城の様子を探っている。
入り口には門番が四人ほど。定期的に交代をしているようだが、一体何人の海賊たちがいるのだろうか。敵の人数の把握は難しいように思えた。
また定期的に運び込まれる布に包まれた何かは間違いなく植物人間の少女たちだろう。
・・・ここで間違いない。
覗き込んでいた双眼鏡を下ろし、二人は目を合わせ頷き合う。
「コーモス。いい作戦があるって言ってたけど、どうするの?」
万が一、居所がバレてはまずい、と二人は手話で会話をしていた。
「俺に任せておけ」とニヤニヤコーモスが手話を返す。
半信半疑であったが、ソルには何の策も思いつかなかったので仕方なく頷く。
コーモスなら良い案を持ち合わせており、うまいことやってくれるだろう。
が、一つだけ気掛かりなのは城の周りに置かれている巨大な何か、である。
一つ一つの山が城と同等ほどの大きさで、そのどれもが布で覆われている。
何のためのものなのだろう。
ただの丸太の山だったりするのだろうか。
コーモスもどうやらその何かが気になるようだ。
じっとその山を見つめ、ぶつぶつと何か口にしている。
気にしていても仕方がない、と腹を決めた様子のコーモスはソルへと合図を送った。
こっちに来い、と言っている。
身をかがめ素早く木の間を移動していくと、コーモスはすぐさま手を上げ魔法を唱えた。
「レレトロ・クイ・アサンコス」
すっとした心地よい風がソルを包み込む。自身にも同じ魔法をかけたコーモスは「よし!」と呟き城を見据えた。
「ねぇ。今の何の魔法?特に変化があるようには感じないんだけど」
すっとソルの方を振り返ったコーモスはニヤニヤと笑った。
「じきにわかるさ」
行くぞ、とソルの背中を軽く叩き静かに歩き出すコーモス。
その後をゆっくりとついていくソルであったが、果たして本当に大丈夫なのだろうか、と目の前を歩くコーモスの背中を不安げに見守った。
コーモスはどんどんと城の入り口目指し歩いていく。
まさか、正面突破⁉︎
「ちょ、コーモス!」
すでに門番たちはこちらに気がついているようだ。まだまだ距離があるが、こちらを警戒しはじめたようだ。
「何だよ」
腕にしがみつくソルを半笑いで振り返るコーモスは堂々としておりどこか楽しげだ。
「気でも狂ったの?まさかこのままあの門番のいるところまで行くつもり?」
遠くの門番の様子が気になりチラチラと振り返りながら尋ねるソル。
「まぁ、任せておけって。ヨキさんから色々いいものもらったんだ。他に手はねぇよ」
腹を決めろ、とソルの胸をど突いたコーモスは悠々と進んでいく。
ヨキさんから何をもらったのだろう。本当に大丈夫だろうか。
不安しかない状況ではあったが、仕方ない。
もう後戻りはできないのだ。彼の言う通り腹を決めるしかない。
門番たちとの距離がどんどんと詰まっていく。
城の入り口すぐ近くまで来ると、すぐに二人の門番が二人の前に立ちはだかる。
「おい、お前たち止まれ!」
ギロリと睨みつける門番の手には大きな槍が握られていた。あれで刺されたらひとたまりもなさそうだ。
ソルは思わず身がすくむのを感じたが、キッとそれを振り払い門番を睨みつけた。
「ここに俺の友達がいるんだ。返してもらうぞ」
コーモスはそう言うや否や、懐から何やら取り出して足元へと叩きつけた。
ボワっと煙が巻き起こり、辺りはたちまち真っ白なモヤに包まれた。
「うへぇ、何しやがったあいつ」と、海賊たちはたちまち混乱し、身をかがめた。
ソルもその煙に思わず咳き込み身をかがめたが、すぐさまコーモスに背中をど突かれた。
「何してんだよ。お前は大丈夫だろ。さっき魔法かけたんだから」
コーモスは呆れたようにそう言うとさっさと城の中へと走っていってしまった。
すぐさまボンっという音が鳴り響き、城の中から白い煙がモクモクと溢れ出てきた。
モクモクと立ち昇る煙に包まれた海賊たちはゲホゲホと咳き込みながら、手にした槍を乱雑に振り回している。
「あれ・・・」
煙に巻かれた海賊たちは視界を奪われ、空気を求め喘いでいる。
ソルはというと、落ち着いてみるとぼんやりとだが目の前の視界は良好で、また息を吸い込んでも咳き込むようなことはなかった。
コーモスのかけた魔法っていうのはこれか!
海賊たちの振り回す宛のない槍の切っ先を静かに交わし、ソルは急いでコーモスの後を追い、城の中へと飛び込んだ。
ソルとコーモスはもうかれこれ三十分以上、木の影からその城の様子を探っている。
入り口には門番が四人ほど。定期的に交代をしているようだが、一体何人の海賊たちがいるのだろうか。敵の人数の把握は難しいように思えた。
また定期的に運び込まれる布に包まれた何かは間違いなく植物人間の少女たちだろう。
・・・ここで間違いない。
覗き込んでいた双眼鏡を下ろし、二人は目を合わせ頷き合う。
「コーモス。いい作戦があるって言ってたけど、どうするの?」
万が一、居所がバレてはまずい、と二人は手話で会話をしていた。
「俺に任せておけ」とニヤニヤコーモスが手話を返す。
半信半疑であったが、ソルには何の策も思いつかなかったので仕方なく頷く。
コーモスなら良い案を持ち合わせており、うまいことやってくれるだろう。
が、一つだけ気掛かりなのは城の周りに置かれている巨大な何か、である。
一つ一つの山が城と同等ほどの大きさで、そのどれもが布で覆われている。
何のためのものなのだろう。
ただの丸太の山だったりするのだろうか。
コーモスもどうやらその何かが気になるようだ。
じっとその山を見つめ、ぶつぶつと何か口にしている。
気にしていても仕方がない、と腹を決めた様子のコーモスはソルへと合図を送った。
こっちに来い、と言っている。
身をかがめ素早く木の間を移動していくと、コーモスはすぐさま手を上げ魔法を唱えた。
「レレトロ・クイ・アサンコス」
すっとした心地よい風がソルを包み込む。自身にも同じ魔法をかけたコーモスは「よし!」と呟き城を見据えた。
「ねぇ。今の何の魔法?特に変化があるようには感じないんだけど」
すっとソルの方を振り返ったコーモスはニヤニヤと笑った。
「じきにわかるさ」
行くぞ、とソルの背中を軽く叩き静かに歩き出すコーモス。
その後をゆっくりとついていくソルであったが、果たして本当に大丈夫なのだろうか、と目の前を歩くコーモスの背中を不安げに見守った。
コーモスはどんどんと城の入り口目指し歩いていく。
まさか、正面突破⁉︎
「ちょ、コーモス!」
すでに門番たちはこちらに気がついているようだ。まだまだ距離があるが、こちらを警戒しはじめたようだ。
「何だよ」
腕にしがみつくソルを半笑いで振り返るコーモスは堂々としておりどこか楽しげだ。
「気でも狂ったの?まさかこのままあの門番のいるところまで行くつもり?」
遠くの門番の様子が気になりチラチラと振り返りながら尋ねるソル。
「まぁ、任せておけって。ヨキさんから色々いいものもらったんだ。他に手はねぇよ」
腹を決めろ、とソルの胸をど突いたコーモスは悠々と進んでいく。
ヨキさんから何をもらったのだろう。本当に大丈夫だろうか。
不安しかない状況ではあったが、仕方ない。
もう後戻りはできないのだ。彼の言う通り腹を決めるしかない。
門番たちとの距離がどんどんと詰まっていく。
城の入り口すぐ近くまで来ると、すぐに二人の門番が二人の前に立ちはだかる。
「おい、お前たち止まれ!」
ギロリと睨みつける門番の手には大きな槍が握られていた。あれで刺されたらひとたまりもなさそうだ。
ソルは思わず身がすくむのを感じたが、キッとそれを振り払い門番を睨みつけた。
「ここに俺の友達がいるんだ。返してもらうぞ」
コーモスはそう言うや否や、懐から何やら取り出して足元へと叩きつけた。
ボワっと煙が巻き起こり、辺りはたちまち真っ白なモヤに包まれた。
「うへぇ、何しやがったあいつ」と、海賊たちはたちまち混乱し、身をかがめた。
ソルもその煙に思わず咳き込み身をかがめたが、すぐさまコーモスに背中をど突かれた。
「何してんだよ。お前は大丈夫だろ。さっき魔法かけたんだから」
コーモスは呆れたようにそう言うとさっさと城の中へと走っていってしまった。
すぐさまボンっという音が鳴り響き、城の中から白い煙がモクモクと溢れ出てきた。
モクモクと立ち昇る煙に包まれた海賊たちはゲホゲホと咳き込みながら、手にした槍を乱雑に振り回している。
「あれ・・・」
煙に巻かれた海賊たちは視界を奪われ、空気を求め喘いでいる。
ソルはというと、落ち着いてみるとぼんやりとだが目の前の視界は良好で、また息を吸い込んでも咳き込むようなことはなかった。
コーモスのかけた魔法っていうのはこれか!
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