虹の樹物語

藤井 樹

文字の大きさ
上 下
23 / 57
〜22章〜

魔女の憂鬱 その二

しおりを挟む
 奇声に似た叫び声を上げ、向かって来たのはゴブリンの大群だった。
 鎖に繋がられた鎌を片手に振り回した、緑色のノーマルなゴブリン。
 黄色の両眼は明らかに怒りを露わにしている。

「キャァキャァキャァ」

 弱い癖に鬱陶しいぐらいに吠えるな。
 ルルにゴブリンの言語解釈をしてもらう。

「ドラグニエールは我々ゴブリン文明の偉大な功労者。その偉大なドラゴンを殺すとは何という悪の所業か。許せんからお前を殺すと言ってます」

「つくずく……愉快な仲間達だ。クックックックッ。わざわざ俺に殺されるに来るとはな」

 魔王は右手をゴブリンの大群に向け、対象範囲を拡大だけ、破壊の弾丸を放とうとする。
 しかし、目の前に両手を伸ばし、正義のアカリが立ちはだかった。

「何の真似だ?」

「私はお前を許さない。街に火を放ち、人を殺し、何の罪も無いドラゴンを殺した。許してはならない」

「本当に鬱陶しい性格だな。勝手に一生恨んでろ? あとな俺は貴様が嫌いだ……ハハハハハハハ」

 魔王は馬鹿馬鹿らしくなり、腹を抱えて笑う。
 アカリは紫色のリングを煌めかせ、凛々しい眦をし、剣を魔王に向けた。

「私もあなたが嫌い」

 魔王は笑いを一瞬で止め、上半身を上げ、不敵な青眼で、

「初めて意見が合いそうだな」

 その瞬間、アカリは恐るべき速度で魔王に襲いかかってきた。


「妖精の光」

 光の粉が横に一閃投じるが、魔王は瞬時に回避する。

「終わりか」

 アカリは天衣を揺らめかせ、分身したかのように移動し、

「光の高速」

 鋭い軌道を描く光の剣を魔王に投じるも、また回避されるが、連続で突き出し、追い掛けて、また横一閃、縦の一閃と乱舞を繰り返すが、全て魔王の掌の上。

「フフハハハハハハ」

「はぁはぁはぁ。強い」

「さて、こちらから行かせてもらう。ん?」

 すると、突如、頭上から数十体のゴブリンが襲いかかってきた。
 そういえば、忘れていたな。
 次の瞬間、魔王は右手に上に掲げ、瞬時に破壊の弾丸を構築し、凄まじき速度で、ゴブリンと衝突させ、刹那、弾丸から炎を発生させ、周囲にゴブリンの残骸を散らした。
 その脅威の力に恐れを為した、次の攻撃開始しようとする残りのゴブリンは、後退る。

「弱過ぎるな」
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

悠久のクシナダヒメ 「日本最古の異世界物語」 第一部

Hiroko
ファンタジー
異世界に行けると噂の踏切。 僕と友人の美津子が行きついた世界は、八岐大蛇(やまたのおろち)が退治されずに生き残る、奈良時代の日本だった。 現在と過去、現実と神話の世界が入り混じる和の異世界へ。 流行りの異世界物を私も書いてみよう! と言うことで書き始めましたが、どうしようかなあ。 まだ書き始めたばかりで、この先どうなるかわかりません。 私が書くと、どうしてもホラーっぽくなっちゃうんですよね。 なんとかなりませんか? 題名とかいろいろ模索中です。 なかなかしっくりした題名を思いつきません。 気分次第でやめちゃうかもです。 その時はごめんなさい。 更新、不定期です。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...