虹の樹物語

藤井 樹

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〜5章〜

黄昏の旅

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 眠らない街『インソムニア』。ソルマルク帝国の首都であり、全体の約半数に当たる人々が居住している巨大都市。人々は、暗闇の中、誘蛾灯に群がる虫の如く、ネオンで輝くこの大都市に密集している。

 天に突き出す巨大な摩天楼は主に氷、そして戦争によって生み出された新たな人工鉱石『トリニタイト』によって建造されている。

 郊外には、街の建設に欠かすことのできない鉱山や、巨大な都市を動かすための電力発電施設が、首都『インソムニア』と同程度の規模で置かれている。

 また、小さな集落も点々と存在しており、その地域一帯のことを『レズモン』と人々は呼ぶ。そこでは、人々は古き生活様式を模した、いわゆる『快適ではないが人間らしい生活』なるものを営んでいる。一般的に、変わり者の集まりとして認識されていることが多いところである。

 陽の射すことのないこの国は、年中極寒であり、雪も度々降る。しかし、独自の進化をし環境に適応した人々にとっては、大した問題ではなかった。

 ここで暮らす人々は、月の僅かな光を動力に人工体組織の活性を行い、後は自身の挙動から生まれるエネルギーを極限まで活用し、自身の動力を確保している。

 また、それゆえ街は至る所で月の光を利用した照明に溢れ、信号や看板、街灯までもが全て月の光を利用し循環させることによって成り立っている。

 こうした光の循環により、人々は空が雲に覆われようと、簡単に動力を失うことはなく、専門家によると丸々三年、空が雲に覆われようとも人々の生存を脅かすことはない、とされている。

 首都『インソムニア』は入り組んだ形を成しており、政府を中心に蜘蛛の巣状に広がっていく。大まかに六つのセクションに分けられ、合理的に設計された都市は、人々に快適な住環境を提供している。

 六つのセクションの間には、特に階級や地位等は存在せず、あくまで快適な暮らしを実現するための、街の設計上の都合、といったところであった。

 また、人々は基本的に労働をする必要がない。なぜなら、生活に必要なものは全て国から支給されるためだ。街には、当然様々な店舗やサービス施設が存在するが、基本的には全て国営で、ロボットが従事している。

 しかし、人々には多少の労働欲というものが存在するようで、芸術や趣味の追求以外にも労働を自主的に行う人々が多い。そのため、国はそんな人たちのための労働施設をいくつも管理しており、生活の質の一定値の担保までを担っている。

 人々は、平等で快適で、何不自由ない生活を営んでおり、幸福度は人類史で類を見ない程高いものとなっていた。

 こうしたことは全て、人工神『アイアス』が生まれてから徐々に、そして徐々に急速に築き上げられていったものであった。

 そんな街は今宵、粉雪が舞い、電光掲示板が放つ光をキラキラと反射し、輝いていた。

 ガヤガヤと人通りの多い通りを、小さな三つの影がそそくさと歩いていく。

 そして、小さな古いパブへと到着すると、その中へと消えていった。


「旧人類には、『海賊』っていう、海を舞台に旅をする人たちがいたらしいぜ」

『黒電ビール』を片手にトットが話し始める。彼は、首都『インソムニア』に複数ある大衆向けのバーにいた。

 彼の隣には兄、フランマが静かに話を聞いており、その向かいには親友であるソルの姿もあった。

「今でもいるぞ」

 兄フランマはグイッと黒電ビールを煽り、口を拭う。

「海賊ってどんなひとたちなの?」

 ソルは、目を輝かせて親友の兄に話の続きを促した。

 フランマは軍の海兵部隊所属で、時折ソルたちに面白い話をしてくれるのだ。


「迷惑な奴らだよ。そもそも海に出ることは禁止されているっていうのに。こないだだって、もうディラエ将軍はカンカンだったよ」

 その時のことを思い出したのか、フランマは冷や汗を拭う素振りを見せ、苦笑いを浮かべて見せた。

「ディラエ将軍ってどんな人?」

 すぐに興味の移ったソルのその問いに、フランマはお手上げだと言わんばかりに両手を上げると、深く息を吐き出してこう答えた。

「まさに『鬼将軍』ってやつだな。女の人だけど、誰よりも強くて、誰よりも怖い。あの人のことを知ってたら、勝手に海に出ようなんて馬鹿なこと、思わないんだけどな。それに海賊のことを知り尽くしてる。奴らが何を考えどう行動するのか、全てお見通しのようでさ」

 彼は空になったグラスを天に振り、おかわり!と威勢よく注文をした。遠くのカウンターにいる店員が手を上げそれに応える。

 周りはガヤガヤと一日を終えた人達で溢れかえっている。

 皆上機嫌で顔をキラキラと輝かせ、それぞれが興味のある話に花を咲かせているのだろう。

 フランマはソルたちに視線を戻すと話を続けた。

「まぁとにかく、すごい人なんだ。いつも的確に物事を見極めるし、とにかく無駄がない。まぁ、怒らせたら怖いけど、人望だってある。やっぱ上に立つ人間っていうのは一味違うって感じだな」

 フランマは尊敬の眼差しを浮かべ、自身の上官のことを雄弁に語っていた。

 ソルはどんな人物なのか頭の中で想像してみたが、女性が海賊とやり合う光景はなんだか現実感がなく、すぐに諦めてしまった。

 黒電ビールを少しだけ口に含んだソルは、思い出したかのように同じ質問を繰り返した。

「それで、海賊って?」

 ソルのその問いに「あぁ、そうだったな」と笑いを噛み殺したフランマはチラリとカウンターの方へと視線を送った。

 それに釣られて視線を移したソルの視界には黒電ビールを乗せた盆が見えた。

「待ってました!」トットが感嘆の声を上げる。

 フランマは黒電ビールを持ってきた店員にお礼を言い、改めて乾杯をした。

「トットが言うところの海賊は、まだ世界の気候が安定していた時代の人たちから見て、さらに昔に存在した海上のテロリストのようなもんだ。まぁ今もおんなじようなものだけど、昔ほどの力はない」

「鬼将軍のおかげだね」

 ソルはニヤリと笑い質問を続ける。

「それで海の上でテロって、どうするの?」

「平たく言えば、略奪だな」トットが続ける。

「当時は貿易が盛んで、それこそルナシリスとかとも交流があったらしいぜ」

 今もあるにはある、とフランマ。

 そうなの?とソルは驚き目を見張る。


 そんな彼を見てフランマは、新たな質問が飛ぶ前に、それを制し話を続けた。

「海を渡っていろんなものが運ばれていたんだ。それを狙って略奪を繰り返す、海の無法者。それが海賊さ」

 それでそれで、とソルが続きをせがむ。

「それで、って、それが海賊。自由を愛する海の男ってやつだな」

「なんかかっこいいなぁ」

「ロマンの塊だよな」うんうん、とトットが頷く。

 フランマは若い二人のやり取りに微笑みながら席を立ち、喧騒の中へと消えていく兄。

 トイレにでも行ったのだろう。

「海ってどんな感じなんだろうね」フランマの消えた方をぼんやりと見やる。

「映像で見たことあるだろ。あんな感じだよ」

 ソルは授業で見た海の映像を頭に浮かべる。

 水の塊がさまざまな形に姿を変え、押しては引いていた。

 真っ黒なその巨大な水の塊は一つの生き物のようで、漠然とした恐怖を抱いたことは、恥ずかしいので秘密だ。

「んーやっぱり直で見てみないと。そもそも海に出ることが禁止されているって言うのは、なんでなんだろうね」

「兄貴に聞けばわかるだろう」

 噂をすれば、と指差す先には、フランマが新たなグラスを三つ、抱えてこちらに向かって来る。

「なぁ兄さん、なんで海に出ることは禁止されているんだ?何か問題でも?」

 グラスが重かったのか、フランマはグラスを乱暴に手渡し、ダンっと腰を下ろした。

「単純に危険だからだよ。俺たちは水に浮かべないから、落ちたら一貫の終わり」

 おー怖い怖い、とわざとらしくその身を震わせグラスを煽る。

 あの黒い塊に飲み込まれる自分の姿を想像し、ソルは正にその身を震わせた。

「浮かべないけど、別に問題なくないか?歩いて帰ってくれば良いじゃん」

 弟の無垢な意見に、兄は豪快に笑う。

「試しに落ちてみるか?」と、弟の胸を突く。

 トットは憤慨した様子で、両手を挙げた。

 つまりだな、とその先を続ける。

「まず一つは、海は下に行けば行くほど水圧というものが増していくんだ。水の重みで動けなくなるし、恐らく潰れてしまう。この時点で厳しいな」

 星空が遠のき、闇に飲まれていく自分を想像し、ソルはまたも恐怖にその身を震わせた。

 そんな彼を知ってか知らずか、フランマは続ける。

「それに加え、海の水は塩が多く含まれている。この塩って奴が厄介で、俺たちの体をどんどんと蝕んでいくんだ」

「蝕むってどんな風に?」

 ソルは乾きもしない喉に渇きを感じた。怖いが興味もある。

「簡単にいうと、体を錆びさせる。錆びると脆くなるし動きも悪くなる。俺が任務で海に出た後は、必ず消塩洗浄をしてもらう」

 トットは興奮しながら、それめっちゃテロに使えるじゃん、と口にした。

 フランマは、甘い、と言いながら弟の脇腹を手刀で突く。

 うっと体を折りながら、異議を唱えるトット。

「迂闊なことを口にするもんじゃないぞ、弟よ。それに、海の水をかけられたところで、体が錆だらけになるのは何年もかかるだろうな。それこそ海に落ちない限りは全くもって問題ない」

 わかったか、と兄は笑いかけた。お手上げ、と両手を上げ降参のポーズを取る弟。そんな二人を眺めながら、ソルは海への思いを馳せていた。


 鏡に映る自分を見つめ、ふぅとため息をつく。

「飲み過ぎたな」ソルはぼんやりとする頭を抱えながら、再度ため息をついた。

 扉の向こうでは、現実の喧騒が鳴り響いている。その喧騒は酔いの回った頭をガンガンと叩いてくるかのようだ。

 もう少しだけ休もう、とソルはぼんやりと自分自身を眺めた。


「遅いな、あいつ」

 トットはもう何杯目かもわからない黒電ビールを飲みながら、そう呟いた。

「ソルはあんまし強くないからな。しばらくしたら戻ってくるだろう」

 兄のフランマは静かにそう言って、グラスに口をつけた。少し酔いが回ってきたのか、フランマは段々と口数が少なくなってきている。

 彼は酔っ払うと、静かになるタイプだ。お酒が回ると陽気になり暴れたりするものが多い中、段々と寡黙になっていく兄は、弟の目から見ても渋く、かっこいい。

 兄さんは全て持ってるなぁ。そんなことを思いながら、トットもお酒を煽る。

 店内は依然、喧騒に飲まれている。見慣れたいつもの光景だ。トットもどちらかというとその喧騒の一部になることが多いタイプで、よく羽目を外し過ぎて後悔をすることがある。しかし、目の前の兄を見習い、今日ばかりはクールに飲んでみよう、と密かに思った。


「兄さん、たまに海に出るって言ってたけど、軍は海で何してるんだ?」

 ゆっくりと弟の方へ目線を送り一言「なぜだ?」と呟いた。

「興味だよ、興味。好奇心。自分の兄貴がどんなことをしているのか、興味を持つのは普通のことだろ?」

 ふぅ、とゆっくり息を吐き少しだけ微笑みながらまた一言、機密事項だ、と呟いた。酔っ払った兄はとことん寡黙だ。真面目な兄が機密事項というならば、教えてもらえることはないだろう。トットは諦めて、やることもなく指の先をいじったりした。

「あぁそういえば、、、」と、フランマが言いかけた時、店内に怒声が響き渡った。

 客同士が喧嘩を始めたようだ。周りの客たちはやれやれとその喧嘩を煽っている。うるせぇな、とトットは喧嘩が行われている方を見た。

 と、そこにはトイレから出てきてとぼとぼと歩くソルがいた。酔ってぼーっとしているのだろう。目の前で繰り広げられている喧嘩にはまだ気がついていないようだ。

「ちっ、あぶねーな」

 トットはそう毒づき、腰を浮かす。

「面倒は起こすなよ」兄のフランマは弟に声をかけた。

 すぐに喧嘩に気がついたようだ。喧嘩に巻き込まれないよう脇の方を歩いていく。

 大丈夫か。とトットは安堵し席に腰を戻した。

 一人の男がもう一方の男を殴り飛ばす。どちらも酔っぱらいなので、その足元はおぼつかない。殴られた男はその勢いのまま、ふらふらとソルの方へ突っ込んでいく。

「あっ」

 ソルは危険を察したのか、スッと身軽にその男の不慮の突進をかわした。その男はそのまま壁へと激突していった。店内からは笑い声が上がる。それに釣られ、トットたちも目を見合わせ笑い合う。

「やるじゃん、あいつ」フランマはクックックと笑い、酒を煽った。
壁に激突した男は、大衆から笑われたことに苛立ったのか、ふらふらと立ち上がると、

「誰だ今俺は支えなかったのは!」と、周りに睨みを効かせた。

「あぁ今度こそまずいな、ちょっと行ってくる」

 トットはそう言い残しソルとその男の方へと駆け寄った。

「お前か!」

 ソルの胸元を掴み、詰問する。酔っ払った大衆は新たな喧嘩が始まると、期待に胸を膨らませその男を囃し立てた。ソルは恐怖に震え頭を横にぶるぶると振っている。無力なソルを見てその男はいい気になったようだ。ソルの頭を軽く叩き、ニヤニヤとした。

 トットはツカツカとその男に歩み寄ると、肩を叩き声をかけた。

「俺だ」

 そう言うなり、振り返った男の顔面に拳を打ち付ける。店内から歓声が上がる。解放されたソルは地面に疼くまり、放心状態のようだった。トットに殴られた男は今度は床に突っ伏し、獣のような呻き声あげている。

「兄さんのとこに行け、早く」

 トットは疼くまるソルにそう言うと、地面に突っ伏したままの男の方へと視線を戻した。ソルは駆け寄り、いいから逃げよう、とトットの腕を掴む。その目はひどく怯えている。それを見てトットの中の怒りがさらに勢いを増していく。

「テメェやってくれたな」

 ふらふらと地面から立ち上がり、鬼の形相でトットを睨みつける男。トットは友人を兄の方へと押しやり、親指を立てた。

「舐めやがって。このガキが!」

 男がトットへと突進していく。トットはさっと身をかわしその足を払った。再び男は地面へと突っ伏す。

 トットはいつもの如く足首をぐるぐると回している。普段の彼の癖である。それが喧嘩となればなおさらである。

「舐めてんのはお前だろ、この酔っぱらいが」

 喧嘩を囃し立てていた客たちは、子供に軽々とあしらわれた男嘲笑い、帰れ帰れ、と声を上げた。その男は、顔を上げ憎悪に震えながら再び立ちあがろうとしたが、足元がふらつきその場にしゃがみ込んだ。そして、その勢いのまま嘔吐した。

 周りの野次馬たちは、興醒め、といった様子でパラパラと散っていった。遅すぎるとは思うが、ついに店員が現れその男とその男の汚物は手際よく回収されていった。


「ごめん、ありがとう・・・・助かった」

 ソルは喧嘩に巻き込まれたショック、はたまた何もできない自分に対する無力感からか、ひどく意気消沈しており、ボソボソとお礼を述べた。

「大丈夫だったか?殴られてたけど」

 フランマはソルの様子を伺い、優しく問いかけた。

「うん、全然大したことない。・・・けど怖くて動けなかった」

 ソルは恥ずかしいそうに首をすくめ、ため息をついた。

「当然だ。普通絡まれたら誰だってそうなる」

 さっきの男の醜態が頭から離れないのだろう。トットは若干のニヤニヤ顔を抑えながらそう言った。

「トットは怖くなかったの?」

 店内はいつも通りの喧騒に戻っていた。喧嘩のあったあたりをぼんやりと見つめながら尋ねる。

「全然。酔っぱらいぐらいじゃなんともない。あんな奴よりよっぽど強くて怖いやつに毎日どやされてるからな」
 トットは今度は完全にニヤニヤしながらアイコンタクトを送ってきた。その意図がわからなかったソルは眉をひそめ、トットを見やった。

「兄貴だよ。こいつ、マジで強いし、ほんと怖いから」

 ソルの隣に座るフランマを指差し、トットは言った。

「怖いは余計だ」

 フランマはそう言うと、ニヤリと弟の方を向き、さっきのはよかったぞ、と手放しで褒めた。褒められた弟は、まんざらでもなく嬉しそうに頷いた。

「あぁ、あれは気持ちよかったな」

 ソルはそんな二人を憧れの眼差しで見ていた。自分も強くなりたい。そう思う機会は多いが、そう簡単に人は変われないもので、度々トットに救いの手を差し伸べてもらうのだ。

 淡い敗北感を味わったソルは、静かにグラスに口をつけた。

「あぁ、そういえばさっき何か言いかけた?」

 トットが兄に尋ねる。

「そうだった」フランマは指を鳴らし、机の上に手をかざし、何やら広告らしきものを映し出した。

「黄昏の旅?」横から覗き込んだソルが読み上げる。そこには明るい空の下、海に浮かぶ一石の船が描かれていた。

「そう、ツアーの案内だな。お前たち、『神の台地』についてはもう習ったか?」

 トットはツアーの広告をめくりながら、首を横に振る。

「神の、なんだって?」

「台地だよ、台地。海の上に巨大な岩壁が延々とのびているんだ」

「なんのために?」トットがツアー概要を読みながら尋ねる。

そんなこと俺は知らん。ただ、一般人はなかなかお目にかかれないぞこれは」

「黄昏ってなんなの?」ソルはトットがパッパとめくる誌面を必死に追いかける。

「ここがすごいんだ」

 フランマは楽しげにそう言って、ツアーの概要を説明してくれた。

 ソルは酔ってはっきりしない中、必死に聞いていたがつまり要約すると、こういうことらしい。

 海のはるか先に『神の台地』という巨大な岩壁が延々と続いている場所があり、その付近ではうっすらと陽光が射し込み、夜が薄くなるらしい。その空はとても美しく幻想的で、まるで黄泉の国を思わせるとのことだ。

 ソルは想像もつかないその『黄昏』というものに畏怖の念を感じ、物思いにふけた。

「決まりだな」
 
 トットはそういうと、黄昏の空に、と言ってグラスを掲げた。

 ソルははっと物思いから醒め、トットをみやる。

「もちろん、お前も行くよな?」

 友人が目を輝かせながらこちらを伺う。

 ソルはなぜか熱いものが込み上げてきた。親友と、ちょっとした冒険に出かけるような気持ちであった。

 返事の代わりに、掲げられたグラスに自分のをぶつける。

 三人の少年たちは互いに満足そうに頷き合った。
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