虹の樹物語

〜2章〜

天と地の戦い

　昔々、悠久の時を旅する星に、『ヒト』は突如発現した。

　星を統べる神々は、生まれたばかりの赤子へと、わずかばかりの知恵を授けた。

『赤』を統べる神は、『火種』を授けた。

『橙』を統べる神は、『地種』を授けた。

『黄』を統べる神は、『雷種』を授けた。

『緑』を統べる神は、『風種』を授けた。

『青』を統べる神は、『水種』を授けた。

『藍』を統べる神は、『生種』を授けた。

『紫』を統べる神は、『死種』を授けた。

　神々より授かった七色の贈り物を『ヒト』は胸に抱き、喜び感謝に沸き立った。

　そして、すぐに類の見ない程の発展を遂げることとなる。

『ヒト』の創造性溢れる発展を喜んだ神々は、更なる知恵を授けた。

　やがて、『ヒト』は星を支配するまでに、強大に発展した。

　驕れる『ヒト』の欲望は尽きることがなく、富を求め次第に互いを殺し合うようになった。

　そんな『ヒト』の成り果てを憂いた神々は、友好の虹橋を放棄し、飛び去った。

『ヒト』は、神より給えし七色の種を失った。

　神々の慈悲の光を失った『ヒト』は困惑し怒った。そして、神々への復讐を画策した。

　神々をも凌駕するまでに、『ヒト』の持つ傲慢さは膨れ上がっていたのだ。

　やがて『ヒト』は、失われた光を取り戻すため、自身を捨てた神々への復讐を果たすため、自ら神を生み出すことに躍起になった。

　そして、ついに新たな神の誕生を叶えた。

　名は、『アイアス』。

　七色の神々をも凌駕する完全神。『ヒト』の理想郷を叶える完全神。

　積年の恨みを果たすべく、『ヒト』は神々を呼び起こし、挑んだ。

『ヒト』の生み出した完全神『アイアス』の持つ歪な力の前に、神々は圧倒された。

　自らの消滅の刹那、神々は『ヒト』の傲慢さを憂い、また星の未来を夢見た。

　自らの肉体と引き換えに、七色の神々は完全神『アイアス』を封じ込め、残された『ヒト』へと『無の光』を放った。七色の神々の、最後の慈悲の光であった。
　
　そして、肉体を失った神々は、静かに星を飛び去った。静かに涙を流しながら。