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序章
プロローグ
しおりを挟むこの世には、化け物と言われる存在がいる。
それは、ひっそりと、または大胆に人間社会に溶け込み、人を食らう危険な種も存在する。
人類の天敵とも言える存在。だが、その個体数は非常に少なく、それらはひっそりと人間社会の闇に溶け込み、今日も人を食らっているのだ。
あなたのすぐそばに、そいつはいるかもしれない。
私の名前はジョシュア・ジョシバーナ(叙朱亜・序司華)、かの有名な名探偵・コンジ・キノノウ(崑児・輝乃皇)先生の助手のアルバイトをしている高校3年の女子なのです。
最初、コンジ先生とは私が高校1年の時、ある事件で出会ったんですけど、その後、私が一方的に押しかけアルバイト助手をしているという事情があるんです。
コンジ先生は、名門・輝乃皇家の次男坊。長男は警察関係のエリート。コンジ先生はIQは高いのですが、その気分にはムラがあり、非常に好奇心旺盛で先が読めない性格。
私ジョシュアの生まれはイタリア、育ちは日本、両親は日本人で、女子の名前と思ってジョシュアとつけたが、イタリアでは男性の名前であり、男の子っぽく育ってしまった。
その名前から、みんなから『ジョジョ』
……なんて呼ばれたりはしていないー。
ジョシュアって普通に呼ばれています。
すでにその活躍ぶりで世間から名探偵と呼ばれ、人気があったコンジ先生ですけど、私は偶然、ある事件で出会ってしまい、その際にちょっと思うところがあったのです。
コンジ先生の明らかな世間ずれしたところをほおっておけなかったと言うか、ちょっとコンジ先生のこと、カッコいいと思ってしまったりだとか、そこのところはいろいろ私も当時16歳だったし、若気の至りというかなんだとかいうか……うーん、やんどころない事情があったのだ……とにかく!
で、今にいたる……なんですけど、私が高校3年の冬、受験がちょうど終わった冬休みに、コンジ先生と出かけたある雪山の山荘、その名も『或雪山山荘(あるゆきやまさんそう)』へ、招待され出かけた1週間くらいの間に起こった残虐な事件……、その記録を、私が警察や出版社への報告ベースにまとめているということなんです。
コンジ先生の活躍された小説は、すべてペンネームを『黄金探偵』の名前で出版されますが、それはそれは大人気で、ベストセラーになるほどなんです。
コンジ先生は事件の謎を解くのはとても興味を持たれるのですが、いかんせん、報告したり記録したり煩わしいことは面倒がってやらないのだ。
ま、実際、コンジ先生の頭脳はIQ250~300と言われており、すべてを記憶しているので、先生自身が記録しないと困ることはなにもないというのもあるんですけどね。
コンジ先生はこれまで数々の難事件を解決してきたが、どれもすごいのですけど、その中でも人智を超える化け物の存在が本当にいるということを、コンジ先生は知っていらっしゃるだけでなく、いままで数多くの化け物を捕えたり退治してきたのです。コンジ先生の優秀さがどれほどかわかるでしょう。
そしてこういった化け物の存在は一般の皆様には知られていない。だから、事実をありのままに小説風に出版社に書き下ろして小説として出版しても世間ではフィクションと考えてしまうのだ。
吸血鬼事件、ゾンビ事件、人造人間事件、殺人鬼の悪霊事件などなど、数え上げればきりがないくらいなのです。"
一部の人は信じているかも知れないが、本当のことというのは実はけっこうそのままさらされているという事なんだね。まあ、愚かしいことだけど。
コンジ先生はお金のことや生活環境などには本当に無頓着なので、私がコンジ先生の活躍を小説として、世間に発表し、その印税やらなんやかんや生活の面などを面倒見ているんです。
またコミカライズ化や映画化・ドラマ化だって半端じゃないレベルである。
さらに「黄金探偵」のグッズも作られ販売されている商品の数々で、コンジ先生はものすご~~いお金持ちなんですけど、自らが保有する財産の詳細さえおそらくコンジ先生は把握されていないでしょう。
コンジ先生の興味は化け物退治とその謎解きにしかないんです……。
本当に変人・奇人となんとかは紙一重……あ、天才となんとかだったかしら? ま、コンジ先生はとにかく変な人……なんです。世間的には。
そして今まとめているのが『或雪山山荘』で起きた『人狼伝説殺人事件』の話というわけなんです。
あれは一通の招待状がコンジ先生宛に届いたところから始まったのでした―。
コンジ先生宛に冬の雪山の豪華な別荘、『或雪山山荘(あるゆきやまさんそう)』で面白い話を聞かせてほしいとあの大富豪パパデス・シンデレイラからの招待状が届いたのは、2月の前半の週だったと記憶しております。
普段はコンジ先生はそういったわずらわしいことには興味がなく、お断りすることがほとんどなのですが、今回は例外的に乗り気だったのです。
それはなぜかというと、その『或雪山山荘』がある地域は、カナダの山奥にあり、人狼伝説が盛んに囁かれていた土地だったからです。
雪山には人狼伝説があり、人狼は人に化けることができ、人の内蔵を食らうという……。
コンジ先生は以前からご自身の研究から、人狼の存在を確認しており、できれば捕獲したい、少なくとも観察したいと考えておられたからです。
そういった事情があったからコンジ先生はその大富豪からの招待状の件を告げると、二つ返事で参加の返事を送るように私に申し付けられました。
「ふん! 君さ、人狼は実在するよ? 彼らの種族はおそらく我々現生人類よりその発生の起源は早いと思われる。人類の先輩なんだぜ? 敬意を持ってもいいくらいだ。」
「そんなものでしょうか? それなら、ゴキブリも数億年前から存在しているから敬えと言いますか?コンジ先生。」
コンジ先生は当たり前だろって表情を浮かべ、こう答えた。
「ああ、君は虫嫌いだったね……。昆虫こそ我々生物の大先輩でもあるんだよ?そして、地球環境を維持してくれている恩人でもある。ゴキブリ先輩には敬意しかないよ?」
ああ、こういう人でした……。コンジ先生は。
いずれにしても、1週間の予定でその別荘、『或雪山山荘』に滞在するための持ち物の準備を私はするのでした。
とはいえ、コンジ先生はほとんど無頓着なので、主に現役の女子高生だった私の着替えやお風呂セットや、その他身だしなみのためのもの、それにコンジ先生の着替えが少々、あとは『探偵グッズ』でした。この『探偵グッズ』はいろんな種類がありますが、まあ、今はその説明は省略しましょう。
そして、2月半ば、私とコンジ先生はカナダの『或雪山山荘』への旅路に出発したのでした。
私は大富豪の豪邸で出される食事が楽しみでしたね。これはおかわり必須ですね……。いやいや、決して私が大食いなわけないじゃないですよ? やだなぁもう。
飛行機で行くのであまり面倒なことというものはありませんでしたが、コンジ先生がパスポートの期限がギリギリだったので、直前に更新手続きを行ったりなどは……、まあ、そこはいつものコンジ先生ということで……。
カナダのエドモントンから飛行機を乗り継いで、北極圏方面へさらなるフライトを行く私達。
飛行機の中ではコンジ先生は、ずっと眠っておられました。本人は瞑想をして宇宙の神秘を計算しているとかなんとか言ってましたが、飛行機が怖いってことはなんとなくわかっています。だって、気絶していたんですもの……。
「いいかい? まだ飛行機がなぜ飛べるのか?それは正確には理論的に解明されていないんだよ。ベルヌーイの定理により、上面の気圧が下面より低くなり、翼は上に押し上げられる、あるいは吸い上げられるからであるということは、その意味では簡単であるがね……。詳細のところはまだわかっていないんだよ?ゆえに、こんな鉄の塊が絶対的に飛び続けるということは、誠に持って保証されている現象とは言えない……ということなんだ。ジョシュア、君はそんなこともわかって……あ……ぐぅううう~。」
とかなんとかおっしゃっておられましたが意識を失われたので、私はその後、毛布をおかけして、
「おやすみなさい。コンジ先生。」
と声をかけ、 そのおかげで私はコンジ先生の分まで機内食をいただき、舌を堪能させてもらいましたけどね。
え? 二人分も食べたのかって……? いや、もったいないじゃないですか。ホントは私もダイエット中なので食べたくはなかったんですよ。まあ仕方がなかったんです。はい。
その後はずっと飛行機内の映画鑑賞を楽しんでいましたよ。
そして、北のイエローナイフ空港に到着し、コンジ先生を起こしましたら、先生ってば、こんなことを言いましたの。
「ふぅ、宇宙の広さをまじまじと感じる計算が、たった今終わったよ、ジョシュア。」
……とね。
~続く~
※ホラーミステリー大賞、応募しています。
「続きが気になる!」
「犯人、わかった!」
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と思ったら、
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あっちゅまん
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