上 下
243 / 256
空中戦

第227話 空中戦『天地展開』

しおりを挟む




 そりゃさ……。

 オレのいた時代は科学全盛の時代でさ、『魔力』はその存在さえなかったんだよ……。

 そんな時代から冷凍睡眠されてきたオレに『魔力』なんて、あるはずないだろ?

 魔力ゼロだよ!

 ゼーロ!!



 オレの周りでパタつく闇のカラスどもを払いのけようとするが、魔力の塊であるカラスに触れることさえできなかった……。


 (マスター! カラスどもの解析が完了いたしました!)

 (おお! アイ! ……解析完了はいいけどさ。こいつらがオレの魂とか生命エネルギーとかを吸い取るような魔物だったら、危なかったんじゃあないか?)

 (いいえ。マスター。魔力で他のエネルギーに変換されたものは物理防御か、電磁気バリアで防ぐことが可能です。それをすり抜けてくる時点で『魔力』そのものをぶつけてくる攻撃だということは確定しておりました。つまり、魔力は魔力に影響するもの……。マスターやワタクシたちのような旧世界の遺物たる者にはその攻撃は無効であります! ……ですが、それをお伝えする時間がなくてマスターを不安にさせてしまいましたね。申し訳ありません。)




 (いや……。まあ、いいんだよ。オレもちょっとびっくりしただけだから……。それにしても、こいつらをどうやって追っ払えばいいんだ?)

 (イエス! ダブルフォトン(二重光子)によるフォトンバリアを生成し、反発させれば、闇のカラスは99.9%の確率で消滅します!)

 (ダブルフォトン……って?)

 (はい。光の粒子、フォトンを強い力によって二重光子とした光エネルギーによる防御シールドを生成します。)

 (お……、おぉ……。)



 まあ、なんでもいいけど、フォトンバリア……だな。


 「フォトンバリアァーーーッ!!」

 オレがそう叫ぶと、オレの体全体が光の重粒子で作られたバリアに包まれた!



 「カァカァアアアーーーッ!?」

 「クァアアーーッ!!?」

 カラスたちが鳴き声を上げ、弾き飛ばされ、消滅していく……。

 そうか!

 闇の魔力は光に弱いのか……!?



 「なん……だと!?」

 アスワングが自分の闇の魔法が破られたことに驚いている。


 「おお! ジン殿! 聖なる魔力で光のシールドを張ったのだな! さすがだ!」

 「ジン殿……! あれはレベル6の光魔法『聖者の行進』か……!?」

 アテナさんとグラウコーピスさんも驚きを隠せない。


 「いや……。『聖者の行進』は私も使うが……。それとは威力が違うような……?」

 エリクトニオスも光魔法の使い手なのだ。



 「もしや……!? レベル7の光呪文・光の防御壁・バリアの上位呪文『イッツミーオオロード』なのでは!?」

 ニーケさんが思い出したように指摘する。

 「おお!? 『イッツミーオオロード』か!? そんな上級呪文……。さ……、さすがはジン殿……。」

 「本当ですね……。レベル7の光魔法……。英雄レベル……、まさにアテナ様と同じか、それ以上ということに……!」

 「ジン殿はやはり底が知れぬ御方ですなぁ……。」

 「すごっ! やっぱジンさん、すごっ!」


 アテナさんたちのオレへの評価が勝手にどんどん上がっていくぅ!

 いや……。

 魔力ゼロなんですけどっ!



 「なに……を、してくれたんあだぁーー!? 私の可愛いカラスたちを……。」

 アスワングが怒りに身を震わせ、オレのほうへ向かってきた。


 『鬼のパンツは いいパンツ! つよいぞ~! つよいぞ~! トラの毛皮で できている! つよいぞ~! つよいぞ~!!』

 アスワングが吸血鬼の強化呪文『鬼のパンツ』を唱えた。

 アスワングの身体が一回りも大きくなり、その手に翡翠の剣を握り締め、切りかかってきた。

 なんとも怪しげな妖気を放つ剣だ……。



 だが……! 

 オレにもアダマンタイト・ソードがある……。

 そして、この剣の刀身にダブルフォトンを集中させ……。


 「ダブルフォトンソードォォォーーーーーッ!!」

 オレはその剣を一閃した!



 オレとアスワングが空中で交差して双方が反対へ行きすぎ、停止した……。

 そして……。

 アスワングが振り返る。


 「き……、きさま……! とんでもないヤツだ……ったわ……。ぐはぁっ……っ!!」

 アスワングの身体が真っ二つに裂けていく……。



 「こ……、こうなったら、きさまも道連れじゃあぁああああああーーーっ!!」

 アスワングが最後の魔力を振り絞り、オレ目がけて突っ込んできた!




 「こ……、このドぐされがぁーーああああああっ!!! よくもワタクシの大事な御方に!! マスターに向かってとんでもないことをしてくれたわね!?」

 すると、そのアスワングとオレの前にアイが割り込んできたのだ!

 そして、アスワングを超ナノテクマシンの巨大シャドウアームで掴むと、一瞬にしてシャドウアームの両手で握りつぶした……!


 「ぷぎゃ……!!」


 ドグシャッ……

 シュゥゥウウウ……




 アスワングをアイが葬り去ったときとほぼ同時期、猿に似た吸血コウモリ・ラングスウィルと人の顔をした巨大なコウモリ・ウプイリが、体勢を立て直し、イシカとホノリに向かって再度、突っ込んできたところだった。

 だが……。


 「「ワーン……パァーーーーンッチィーーーッ!!」」

 二人が揃って吸血鬼どもの魔核のある心臓を貫くパンチを繰り出し、一撃で消滅させたのだ。


 「ぐぎゃはははぁっはぁ~~~んっ!!」

 「くぅっふふふふぅううーーーん!!」

 二匹はなぜか嬉しそうに断末魔をあげて消滅していった……。



 オレたちはその勢いのまま、『トゥオネラ』の街の地上へ降り立った。

 上空ではアテナさんたちがまだ吸血鬼どもと乱戦になっているのが見える。


 「ジン殿! 卿らはそのまま『トゥオネラ』のトゥオニ王らを探索してくれ! 私たちはこのまま空中で吸血鬼たちを足止めします!!」

 「アテナさん! わかりました! では、空の戦いはおまかせします! アテナさんたちもお気をつけて!!」

 「ああ! ジン殿らも……、ご武運を!!」

 アテナさんたちは空中でそのまま戦って地上のオレたちを後追いしようとする吸血鬼どもを足止めしてくれるというのだ。

 たしかに……、この死の街『トゥオネラ』の中心はこの街の王トゥオニ王その人というわけだからな。

 天をアテナさんたちのパーティーが……、地をオレたちがそれぞれ分かれてそのボスを倒す……ということになるな。



 *****




 一方、その頃……。

 はるか上空をものすごい速さで飛んでいる蛾の化け物がいた。

 吸血蛾・モスマンである。



 「もうすぐ……。『ジュラシック・シティ』に着く……はずで?」

 モスマンがつぶやいた。

 だが、モスマンの行く先に見えてきたのは……。

 とてつもなく巨大なクレーター……、『チクシュルーブ・クレーター』であったのだ。



 「こ……、これは!? いったい、どういうことなんでぇ……?」

 モスマンは眼前の光景を見て、自身の目を疑ってしまったくらいだった……。



 「ジュラシック・シティはいったいどうなったというのでぇ……!?」

 「ふふふ……。あの恐竜種どもは我が主が滅ぼされたのだ……。街ごとな……。」

 モスマンの背後から声がした。

 驚いたモスマンが振り返ると、そこには巨大なフクロウが大空に静止してモスマンをじっと覗き込んでいたのだった……。




 「な……!? おまえは……!?」

 「貴様は『不死国』の者だな……? 生きて帰すわけにはいかないな……。」

 「なんだと!? 魔獣ごときがあっしを? てやんでえ! ばーろーめ!!」




 モスマンがその目をギラギラと赤く輝かせたのだったー。




~続く~

©「聖者の行進」(曲/アメリカ民謡 詞/アメリカ民謡)
©「イッツミーオオロード」(曲:黒人霊歌/ 詞:黒人霊歌)
©「鬼のパンツ」作詞者不詳・L.デンツァ作曲





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。 そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。 しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。 けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。

処理中です...