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恐竜の街へ

第205話 恐竜の街へ『合流』

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※『ジュラシック・シティ』周辺地図




 オレたち一行は、ホッドミーミルの大森林を北上する。

 『チチェン・イッツァ』の街まで来る際にオレたちを運んでくれたオオムカデ爺やはもういない……。

 うっそうとした森の中を竜馬の馬車のような乗り物で進むことはできない。



 (アイ。サルガタナスさんたちのいる地点まで、距離はどのくらいある?)

 (イエス。マスター。200ラケシスマイル……、約300kmの距離でございます。)

 (うぅーん……。歩いていくとなると、けっこうな距離になるな……。)

 (あら? マスター。あの化け物をお忘れじゃあありませんか?)

 (あ……!! デモ子か!)

 (イエス! マスター! 私たちだけならコタンコロが運んでもよろしいのですが、銅像群はさすがにコタンコロだけでは運びきれませんからね?)

 (そうだな。よし!)



 「デモ子! また『異界の穴』で頼むぞ!」

 「あいあい! まあ、いいですけどね……。でも、あたしにも何かご褒美くれちゃってもいいんじゃあないかしら?」

 「あ……!? そっか!? おまえ、帰ってから何もあげてなかったっけ?」

 「いや、そりゃ、『霧越楼閣』で『砂漠ウサギのサソリパウダー焼き』や『ふかしスナイモのココヤシ酒焼き』は、いただきましたよ? でも……、あたしもマツサカウシとかコウベウシとか食べたいんですもの!!」

 「いやぁ……。そうだったな。おまえも活躍してくれたもんな。ごめん! じゃあ、次に帰ったら一緒に焼肉パーティーしような!」

 「や……、焼肉パーティー!? そ……、そいつは響きだけでヨダレが垂れてくるんですけど!!」

 「うん! 約束するよ。」

 「やっほぉおおおーーーっい!! 俄然、やる気が出てきましたわ! よっシャァアアアアアーーーーッ!!」



 うん……。

 やる気出してくれてよかった。

 アイが恐ろしく殺意のある目で一瞬、デモ子を見たけど、オレの態度を見て元の表情に戻ったようだ……。



 「アテナさん。ヘルシングさん。このデモ子が『異界の穴』でサルガタナスさんたちのいる場所へつなぎますので、行きましょう!」

 「ほお? それはジン殿があの『餓者髑髏』を葬った際に使用したスキルだな?」

 「ふむ……。その化け物はなかなか役に立つのだな?」

 「あ……! アテナさん。アナタ様の影の従者『聖なる工芸の九柱神(ミューゼス)』の方々も呼んでくださいませ。彼の地に一緒に参りましょう。」

 「おお! なんと!? アイ殿にはまいったな。『ミューゼス』のことを知られていたとは……。さすがはSランクの賢者というわけだな……。」



 その次の瞬間には、オレたちのまわりに、アテナさんの影の従者『聖なる工芸の九柱神(ミューゼス)』の者たちが現れた。

 みな、美しい女性たちばかりである。

 さすがは女神アテナの従者たちだな……。



 「ジン様。お初にお目にかかります。アテナ様が影の従者、カリオペーです。」

 「クレイオーです。」

 「エウテルペーです。」

 「タレイアです。」

 「メルポメネーです。」

 「テルプシコラーです。」

 「エラトーです。」

 「ポリュムニアーです。」

 「ウーラニアーです。」


 おお……。

 みな間近で見ると美しい……。

 美女ばっかだな。



 ピクリ……

 ん?

 アイのまゆげがつり上がったような気がしたけど……、気のせいかな……?


 「では、みなさぁーん! 黄色の線まで下がってくださぁ~い!」

 デモ子がはりきって手を挙げた。



 「開け! 『異界の穴』っ!!」


 すると、目の前の空間に巨大な穴が空いた!

 うん。じゃあ、行くとするか。


 こうして、オレたちは『異界の穴』をくぐって、出口へ向かった。

 その後ろを日本の銅像群がぞろぞろとついてくるのであったー。



 トンネルをくぐると、そこは……、まだ森林だった。

 木々の影の向こうに、人影が見える。

 サルガタナスさんたちだ。


 「おおーーいっ!!」

 オレは呼びかける。



 「これは……、ジンさん!? 今、空間から出てきましたわよね!?」

 「ああ。デモ子っていうオレのペットのスキルなんだよ。」

 「はぁ~いっ!! あたしがデモ子ですぅ! よろしくです~!」

 デモ子がその頭部の大きな口を開いて、舌をベロベロした。



 「き……キモ……! 私の美的センスに合わないわっ!」

 「なんちゅう化け物を飼ってるんや! あんた……。」

 「ジン様……。趣味が悪いと思いますっ!」

 「おいらもこれは料理の食材にはしたくねぇだす!」

 サルガタナスさんたちがドン引きだ……。



 「まあまあ……。これでも役に立つんですよ。」

 オレはフォローを入れた。


 「ああ! ジンの旦那! あたしをかばってくれるなんて! ……やっぱり優しいおヒトだわぁ!」

 デモ子がその目をキラキラさせている。


 「当たり前です! マスターのお優しさは全次元で一番ですわ!」

 アイが誇らしげに言うのだった。



 「そうだよぉ! ジン様はみんなに優しいんだよぉ!」

 「うんうん! イシカもそう思うであるゾ!」

 「はい! ホノリもそう思うのだ!」

 「我もその意見に賛同するである!」


 ここぞとばかりにヒルコ、イシカ、ホノリ、コタンコロも賛成してきた。

 いや、まあ、褒めすぎだよ。

 オレのいた元の世界じゃあ、普通なんだけどね……。



 「ところで、サルガタナスさん。『ジュラシック・シティ』からの猛攻をよくしのいでくれましたね!?」

 「ほぉ……? 私たちが防衛していたってよくわかりましたね……?」

 「アイの偵察の索敵スキルで見させてもらったんです!」

 「はい。現在『チチェン・イッツァ』の周囲に半径600ラケシスマイル(約1000km)の範囲で索敵可視が可能な状態となっております。」

 「それは、ものすごいな……。我が盗賊のスキルでもそんな広範囲は感知不能だぞ!?」

 サルガタナスさんの隣りにいたウァレフォルさんが息巻いて声を荒げた。



 「造作も無いことですわ。」

 アイがすました顔で答えた。

 うん。この冷たい感じ……、美人な顔がなお映えるなぁ。


 「ふふふ……。さすがはジンさんのパーティーの方というわけね。サルワタリがジンさんに心酔するのも理解できたわ。」

 「うむ。ジン殿はオレたち『ヴァンパイア・ハンターズ』と同じSランクの冒険者だからな。」

 「そうそう……。我が『法国』も準後見役なのですよ? 私が担当につかせていただこうかしら?」

 サルガタナスさんも、ヘルシングさんも、アテナさんまでもがオレたちに一目置いてくれるようになった。

 やはり、Sランクという称号は大きいな。



 オレたちはいったんここで野営をし、『ジュラシック・シティ』攻略の作戦を立てることにした。

 敵は『ジュラシック・シティ』の恐竜……、いや、ディノエルフ種族の者たち、約10万なのだ。

 しかも、相手はおそらく吸血鬼になっているだろう……。

 そう……。青ひげ男爵がそうであったように……。



 「では……! 作戦会議を開きます!」

 「「おお! 」」

 アテナさんの号令のもと、話し合いが始まった。



 「まずは、敵の街の情報だな……。誰か、かの『ジュラシック・シティ』のヤツラについて知っている者はいるか!?」

 「うむ……。オレの聞いたところでは気さくな連中だった……というところだな……。今や裏切り者の吸血鬼に成り下がったというわけだ!」

 ヘルシングさんが憎々しげにそう答えた。


 ああ……。まったく、そのとおりだ。

 助けに行こうとしたオレたちを平然と目の前で裏切ってくれたお返しはたっぷりと喰らわせてやる。

 爺や……。

 カタキは取るぞ!!



~続く~



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