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吸血鬼殲滅戦・波
第168話 吸血鬼殲滅戦・波『援軍を待つ』
しおりを挟む※『龍国』イメージ
オレの後見国が『龍国』ということを聞いたのだが、『龍国』とはコタンコロが交易路を開いてくれたんだよなぁ。
「コタンコロ! 『龍国』ってどういう国なんだい?」
「そうですねぇ。我は龍王アヌ陛下と面会しましたが、龍族という存在が意外にも思慮深いと感じましたな。」
「へぇ!? 自由極まりない存在と聞いていたけどね。そうなのか……。」
「ああ。それはアヌ龍王だからだな。アヌ龍王は『龍国』の最高指導者であるが、八大龍王という存在たちのまとめ役だからな。自然と思慮深くなるのであろう。」
「ヘルシングさんは『龍国』に行ったことがあるのですか?」
「過去に何度かな。だが、他の龍王は決して穏やかな存在ではないぞ?」
「そうなんですね……。オレの後見役を買って出てくれたってのはいいけど、誰が窓口になってくれるのかなぁ……。」
「たしかに! 気になりますね。コタンコロ。この『不死国』の件が片が付いたら、『龍国』に問い合わせをして参りなさい。」
「アイ様。承りましたぞ。」
それに『海王国』も『法国』も準後見役ってさ、誰なんだよ、オレを推したの……。
ああ、そっか! 『海王国』はおそらくハスターさんだろうねぇ。
『法国』の知り合いって言うと……、あ! アテナさんかな?
まあ、いずれにしてもそのあたりは今後、良い付き合いをして行けばいいか……。
『チチェン・イッツァ』の街は今、厳戒態勢で防衛にあたっている。
この街の防衛軍隊であるクラウン・バジリスク防衛軍長官が率いる『ククルカンの蜥蜴』と呼ばれる者たちが昼夜にかけて四方の防護壁を守っていた。
また、ククルカンさんの直属の近衛軍『ジャガー近衛軍』をバラム戦士長が率いて、警戒にあたっている。
だが、『ジュラシック・シティ』のあの軍勢と、『人ごろし城』から本格的に攻めてこられた場合、正直、この『チチェン・イッツァ』も長くは持たないだろう。
ヤツラはそれほど強大で、また数が多い。
数が多いというのは単純だが、それは明確に脅威なのだ。
(アイ。現在の索敵範囲はどうなっている?)
(イエス。マスター。現在この『チチェン・イッツァ』の周囲に半径300ラケシスマイル(約480km)の範囲で索敵可視が可能な状態でございます。)
(それは、『人ごろし城』や『ジュラシック・シティ』の街は視えるのか?)
(申し訳ございません。そこまでは不可視でございます。現在はケルラウグ川のこちら岸で川の手前60ラケシスマイル(約96km)地点までの範囲と推定します。)
(なるほど。川を越えてこちら側に攻めてくる様子はあるか?)
(いいえ。今のところはございません。野生の魔物は数十匹、確認しておりますが、おそらく問題ないと判断いたします。)
(わかった。なにか動きが荒ればすぐに知らせてくれ。それと索敵範囲の拡大を急いでくれ。)
(イエス! マスター! 二度とぬかりなく監視体制を確立してみせますわ!)
(うん。頼むよ。アイが頼りなんだ。)
(まぁ! マスター! く……、くふぅ! 身に余る光栄! マスターに安心していただくよう張り切って努めますわ!)
ククルカンさんの話では、『エルフ国』の援軍が動いているということだ。
ここは、この街の防衛に努め、援軍と合流するのを待つのが賢い選択だろう。
しかし、『霧越楼閣』や『楼蘭』は大丈夫なのかな……。
(マスター。現在、ワタクシの配下の三匹に『楼蘭』の街の防衛に当たらせてございます。そして、援軍も呼び寄せておりますわ。)
(援軍だって!? いったい誰を呼んだの?)
(はい。デモ子と……。)
(ああ。あいつか……。なんだか気持ち悪いやつだったけど、役に立つのか?)
(役に立たなければ消滅させますから、死にものぐるいで働いてくれましょう。)
(それなら、いいんだけど。)
(えっと、あと他にもいるの?)
(はい。巨大なものは残せませんでしたが、日本が滅ぶ前に全国の名所の銅像を保管しておりましたのですが……。)
(え!? 銅像? あの、上野の西郷さんとかの!?)
「イエス! マスター! お好きでございましたでしょう!?」
アイが思わず声を出したので、まわりのサルガタナスさんや、ヘルシングさんが一瞬、何事かとこちらを見た。
(ああ、そういえば、オレってああいう銅像を見るの好きだったんだよなぁ……。……ってまさか!?)
(そのとおりでございますっ!! マスターがお好きでしたので、我が『霧越楼閣』の無限倉庫に保管しておりましたのです。)
(うお!? それ、すごいな……。でも、その保管していたことはわかったけど、それが何なの?)
(はい。それを……、そのぉ……。悠久の時がありましたものですから、イシカやホノリのアラハバキの制作のための実験台に少々……。)
(え……!? アラハバキの実験台に? ……ということは?)
(はい! すべて銅像戦士としてライブメタルで動くロボット兵と化しております!)
「なんだってぇーー!?」
今度はオレが思わず声を大にして驚いてしまった。
「どうしたんだ!? ジン殿!?」
「あら!? ジンさん。いかがしたのかしら?」
「ジン殿! 驚くではないか!?」
ヘルシングさん、サルガタナスさん、リザードマンのクェツパリン兵長までもが驚いて声をあげた。
「あ……。いや、ちょっと思い出しただけです。なんでもありません……。」
「そうか……。敵が攻めてきたのかと思ったぞ……。」
「そうよ。びっくりさせないでくださいよ?」
「ごめんね。」
オレはみなに謝った。
(そ……、それで、その銅像戦士たちってみんなイシカとホノリみたいに、その……、『心』があるの?)
(マスター? おっしゃる意味が理解できませんが……。イシカもホノリも『心』は持っておりませんよ? 機械でございますから。)
(いや、そんなことはないとオレは思うんだけどな……。)
(銅像戦士たちはマスターのおっしゃるところの『心』は持ち合わせておりません。マスターのかつての世界の『ロボット』と呼ばれるものと同様の存在でございます。命令に従う従順な戦士でございます。)
(そうかぁ……。まあ、その銅像が感情持ってたら、けっこう怖いしなぁ……。そう言えば、夜中に動く二宮金次郎の銅像とかあったもんなぁ……。都市伝説か怪談話だったけどな。)
アイがオレがそう思念を送ったところで、きょとんとしてこちらに思念を送り返してきた。
(マスター! よくおわかりですね。二宮金次郎もおりますよ。もちろん。)
(マジで!? となると、上野の西郷さんとかも?)
(それは当然でございます。)
「え……。えぇええええーーーっ!?」
「なんだなんだ!? ジン殿! 敵襲かっ!?」
「今度は何事なの!?」
「ジン様! 驚き過ぎであるゾ!」
「ジン様! 驚くことはないのだ!」
「うむ。ご主人様。我らと同様に下僕である。」
「あ、いや。ちょっとですね……。援軍が来ることになってるようでして……。」
「ああ。ククルカンさんの言ってた『樹上都市トゥラン』からの援軍のことだろう?」
「いえ……。オレの街『楼蘭』からの援軍です。」
「なんだって!? それはありがたいな!」
「ええ。ジンさんの援軍なら、さぞ頼りになりそうですわね……。」
「あ、あは……。あはははは……。」
これは援軍の銅像戦士たちが到着したら、みんな驚くだろうなぁ……。
この世界の人たちから見ると、ゴーレムの大群、いや、大軍隊ってことになるのか。
これは、みんなの反応が今から思いやられるなぁ。
まあ、援軍が来るのは喜ばしいことだから、それは良いんだけどね。
~続く~
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