上 下
143 / 256
黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレの日常

ありふれた日常 第3話『社会科見学』

しおりを挟む





 黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。

 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。

 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたジンはなんと蘇生されてしまったのだ。


 ジンが目覚めたのは自分の自宅が魔改造された超人工頭脳のアイが管理する『霧越楼閣』。

 そして、その中でジンの下僕であるコタンコロが管理する農園は、空間収縮技術工法によって作られた東京ドーム5個分の広さの『コタンコロ農場』と呼ばれている。



 さて、ある日のオレの自宅『コタンコロ農場』でのこと……。


 「コタンコロ! いますか?」

 アイがズッキーニャとモルジアナを連れて『コタンコロ農場』にやってきた。


 この農園のはるか空の上ー。

 その大空を悠然と飛ぶ巨大なフクロウ……それがコタンコロだ。

 そして、今、その翼をふわりとはばたかせ、アイたちのいるそばの地上に降り立った。



 「アイ様。ようこそお越しで。」

 「ああ。今日はズッキーニャたちと農場の見学に来ましたよ。」

 「しゃかいかけんがくぅ!」

 「そうです。社会科見学に参りました。コタンコロ様。」

 「おお! ズッキーニャにモルジアナ。よくぞ我が農場に参られた。存分に楽しんで行かれよ。」



 「コタンコロの農場はお花も見れて遊べるところもあり、農業体験できる所もあり、楽しいことばかりですよ?」

 アイがまるで観光案内のように説明をする。

 「わーい! わーい! モルジアナ! あの花、綺麗だねぇ!」

 「本当ですね。ズッキーニャ。」



 「あっちの果樹園に行ってみましょう。おいしい採れたての葡萄が食べられますよ?」

 コタンコロが果樹園に案内する。


 果樹園に行くと、背の高いスラリとしたロボットが静かに歩いてきた。

 両手両足が非常に長い人型ロボットだ。

 その両手いっぱいに採集した葡萄を抱えている。



 「あ! ゴーレムがいるよ!」

 「まあ。本当ですね。果樹園の管理をしているのかしら?」

 「ああ。あれは園庭ロボット・ラピュ太郎です。ラピュ太郎! こちらにおいでなさい。」


 ラピュ太郎が静かに歩いて近寄ってくる。

 落ち着いたロボットだ。

 そして、少し離れた位置で止まり、抱えていた葡萄をその長い手でアイたちのほうへ差し出してきた。



 「まあ! なんて美味しそうな葡萄なの!? こんな美しい葡萄は見たことないわ……。」

 「うん! 輝いてる!! こんな葡萄見たの初めてっ!」

 「この品種はこの美しい光沢から、かつて古代では『輝いている葡萄』と呼ばれていたそうですよ。」

 「へぇぇ。すごいね。」

 「じゃあ、さっそくいただきましょうか?」

 「うん!! 食べたぁい!」




 さっそく、輝く葡萄をみんなでいただきます。

 「うわぁ! 美味しいっ!」

 「なんてみずみずしいの!? こんな果物がこの世に存在するなんて!?」

 「ええ。美味しいですわ。コタンコロ。ラピュ太郎。いつもご苦労さまです。」

 「はい。我も喜んでもらえて嬉しい限りです。」

 ピコーン……。

 ラピュ太郎もなにやら反応し、喜んでいるようだ。



 「あれ? なにか変な穴が見える?」

 ズッキーニャが指をさした方向に、突然、空間に大きな穴が空いたのだ。


 頭部にある大きな花が開いたかのようなデカい口の中で、異常に長い舌がうごめいた奇妙な生物がその穴の中から這い出てきたのだ。


 「シャァアアアアーーー!!」

 その生き物が叫ぶ。



 「きゃあああ! こわいっ!」

 「ズッキーニャ! 私の後ろに!」

 モルジアナがズッキーニャを後ろにかばった。


 しかし、その瞬間ー。



 その生き物が途端に地面にへたり込んでしまったのだ!


 「あいて! 痛ててててっ! 痛い! 痛い! アイ様ぁ! 勘弁してくださいなぁ!」

 「デモ子……。あなた、いったい何しに来たの? 可愛いズッキーニャを脅かすなんて……。そんなに消滅したのかしら?」

 「違います! 違いますって! あたしもその輝く葡萄をいただきたいなぁ……なんて思ったりしただけですってば!」

 「デモ子よ。我の農場に許可なく入ってきたら、害虫と判断して退治してしまうぞ?」

 「ええええっ!? そんなぁ……。コタンコロの兄貴も勘弁してくださいよぉ?」




 どうやら、美味しい葡萄に釣られてデモ子がやってきたようだ。


 「あ! ああ!! あああ! 魂魄消滅プログラムがっ! 来てるって! また流れて来てるって!」

 「あら? ごめんなさい。つい……。」

 「もぉ。アイ様。スパルタ過ぎですって。あたしにだけ厳しすぎません??」



 「て……敵じゃあないんですか?」

 「魔物じゃあないの?」

 「あい! あたしはデモ子。アイ様の忠実なる下僕にして、ジン様に忠誠を誓うものですよ。可愛いお嬢ちゃんにきれいなネズミちゃん?」



 「そっかぁ……。じゃあ、よろしくね? デモ子さん!」

 ズッキーニャがニコリと微笑む。


 「おお!? 可愛い! この娘、食べちゃいたいくらい可愛いんですけどぉ!」

 「デモ子? ズッキーニャはワタクシの保護対象ですよ。もし、ちょっとでも傷つけようものならぁ……?」

 「あ! ああ!! あああ! また! またっ!? 魂魄消滅プログラムがっ! また流れて来てるって!」

 「容赦なく消滅させますからね?」

 「はいはい! わかりました! わかりましたってば!!」



 「わかればよろしい。じゃあ、また葡萄の試食をいただきましょうかしら? 仕方ないからおまえも食べていいわよ。デモ子。」

 「ありがたき幸せぇ!!」

 「わーい! いただきまぁす!」




 今日も『コタンコロ農場』は平和なのであったー。




~続く~


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...