黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。

あっちゅまん

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波紋と波動

第96話 波紋と波動 『デモ子と無名都市』

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 あーっ!! なんっ……って、気持ちがいいんだ!?

 あたしはデモ子。

 実は、あたしはこの世界とは違う世界から来たんですよね~。

 元いた世界から、なんとも言えない破滅の気持ちいい香りの波動につられてこの世界にやってきて大暴れしたんだけど……。最後の最後に化け物に捕まってしまった……。




 いや、淡島様……おっと、今はアイ様だった……、アイ様はあたしのことを化け物って言うけれど、あたしからすりゃ、アイ様のほうこそ真の化け物だっつーの。

 はるか異次元の彼方まで逃げても捕まえられたし……。

 そして、極めつけのあの牢獄……。異界の壁に穴を開けて、世界を平行移動できるあたしを囚えておける牢獄なんて有り得ないんだけどねぇ……。



 あのたった1つであらゆる惑星を崩壊させうるという超危険物質で作られた牢獄だけはヤバい……。

 うかつに壁に触れようものならこっちの身が消滅してしまうわ……。


 しっかし、長かった……。

 やっと解放されたわ。

 まあ、だからといって逃げられるわけもないんだけどねぇ。


 アイ様に逆らえるはずもない……。そりゃ言うこと聞くしかないよ……。



 アイ様からお仕事をいただいたので……。これを速やかに片付けて、お役に立つということを示すしかない!

 というわけで、『無名都市』に今、向かってるわけなんだわ。


 それにしてもこの世界もすっかり様変わりしたものだ……。

 あたしが牢獄に囚われてから、いったいどれほどの時間が経ったのかは知らないけど。

 まあ、そんなことはどうでもいい……。



 さきほど、新しい大ボス、ジン様の邸宅『霧越楼閣』の外に、次元の裂け目を作った。

 そして、次元の裏に入りこみ、今、『無名都市』があるだろうポイントに向かって進んでいるのだ。

 そぉーら……。このあたりかな?



 次元の裂け目の出口を空間に切れ目を入れて作り出す。

 ほら? 穴が空いたよ……。


 「よいしょーっと!」

 あたしは穴から這い出る。

 注意深く辺りを見回すと、少し先になにか廃墟のような遺跡が見えた。



 んんーー? 周囲に変な生き物がいるねぇ……。

 砂漠のモンスター、『砂に棲むもの』だ!

 ざらざらの肌をした瘦せた忌わしいコアラのような顔を持つ怪物である。


 ふふふ……。そういえば、アイ様にもらったおやつ……砂漠ウサギだっけ……だけじゃ物足りないねぇ。

 デモ子の頭部にある大きな花が開いたかのようなデカい口の中で、異常に長い舌がうごめく。





 次の瞬間ー!

 デモ子が『砂に棲むもの』に飛びつき、一気にその口を広げ、かぶりつき、飲み込んでしまった。

 『砂に棲むもの』の集団は散り散りになって逃げる……。

 決して勝てない相手だとわかっているようだ。



 デモ子は一番遅く逃げ遅れた『砂に棲むもの』をもう一匹素早く捕まえて、やはりさきほどと同じように丸呑みしてしまった。


 「うーん……。味は微妙……。アイ様の砂漠ウサギのほうが何倍も美味しいや……。」

 そう言って、頭部のデカい口をふたたび開いたかと思うと、その口から骨をペッと吐き出した。


 ドチャッ……!


 『砂に棲むもの』二匹分の骨がきれいに骨だけになって地面の砂に落ちた。



 「まあいいや。早くたのまれごとを片付けないとね。アイ様に消されちゃう……。」

 デモ子はすばやく移動し、『無名都市』に入ったのだった。



 蜘蛛の魔獣と、サソリの魔獣が多少いたが、デモ子の姿を見るとこそこそと逃げていった。

 目の前の岩にある暗い洞窟に向かって、デモ子はずんずんと進んでいく。

 すると、洞窟の中から、這って歩くワニのような爬虫類種族、ワニ人間が数名出てきた。



 「シャァアアアアーーー!!」

 デモ子が叫ぶと、ワニ人間たちは恐れおののいて、叫んだ。


 「アナタ様はいったいナニモノでございましょうか!? ここはダークネステントの魔神ジン様ゆかりの地であるぞ!? それを知っての狼藉か?」

 「あん? ジン様? ああ。君たちがこの都市の住民ってやつか……。『海王国』のハスターって人の支配下じゃないの? あれ? 聞いてた話と違うなぁ……。」

 「え? ハスター様の使いの方ですか? し……失礼しましたーーーー!!」

 「いや。違うけど?」

 「へ?」



 「あたしはそのジン様の忠実なる部下・デモ子だ! ここには『海王国』の使いの者がいるのだろ? ジン様と商売したいって言ってるって聞いてるけど?」

 「は……はいぃ! ジン様の使いの方でしたか!? 失礼しましたーー!!」

 「はいはい。いいから案内してよ?」

 「はい! こちらへどうぞ!」



 クロコ・コローラー種族のワニ人間たちの案内で地下都市に降りていく。

 背が低い彼らに合わせた造りで身をかがめなければ歩きにくいが、二足歩行も四足歩行もどちらもできるデモ子には容易い。

 非常に天井が低く作られた洞窟を進んでいくと、その先に扉が現れ、そこの下の方に丸い穴が見えたところで、ワニ人間が這いずりながら、そこへ近づき、何やら合言葉めいたことを言った。



 「風!」

 「ハスター!」


 すると、扉が開いていく……。



 出てきたクロコ・クローラー種族の者が、さらに奥へと案内する。

 地下都市の内部は、通気口や水路といったインフラを備えた巨大居住空間や調理場、ワイン醸造所、礼拝堂、階段などから成る多層構造になっていた。

  知能も高く、文明的な生活をしているのだ。この地下都市の地下水脈部分の地下水路から海へとつながっている。

 クローラーたちは家畜として、上半身が羊で下半身が魚の海羊(シーシープー)を飼っていた。



 女王ヤヒロのいる王座の間についた。

 「ヤヒロ様。ジン様の御使いをお連れしました!」

 部屋に入ると、女王ヤヒロが奥の王座の台に座っており、その傍にアメミットが控えていた。

 さらにその隣に背が高く人間に似た輪郭を持ち、人間を戯画化したような顔、鮮紅色に燃え上がる2つの目を持ち、足には水かきがある。「眼のある紫の煙と緑の雲」に包まれし者がいた。



 「あたしはジン様の使い、デモ子。えっと、あーたはヤヒロね? そっちがアメミット。じゃあ……そちらさんが『海王国』の?」

 「そうだ……! 我がイタカ。ハスター様の眷属。『風に乗りて歩むもの』とは我のことだ。」

 二人(?)はお互いをじっと睨む。



 「デモ子……とか言ったな……。ハスター様から聞いているぞ。貴様らが我が『海王国』と交易を申し出てきておるとのことらしいな?」

 「へぇ……? あたしはアイ様からそちらさんが商売にいっちょ噛ませてほしいと言ってきてるって、仰せつかってますけど……?」

 「そっちが言ってきたんだろ?」

 「いやいや。そちらさんでしょ?」



 「「ああぁ!?」」


 二人はぎろりと睨み合った。



 「お……おふたかた……。ちょ……ちょっと……!」

 「イタカ様! デモ子様! 冷静に……お願いします!」

 ヤヒロとアメミットは急に険悪になった二人の剣幕に驚き、恐怖を覚えた。



 「いーや! あたしはあーたんところのハスターってのが泣いて頼んできたって聞いたね!」

 「なんだとぉ!? 我は貴様のところのジンとかいう野郎が頭下げてきたって聞いてるんだよ!?」


 「なにをっ!?」

 「なんだよっ!?」



 「ええーーーっい! おもてに出ろ! 貴様!」

 「ああ! あーたこそ! 異界の混沌と夜の恐ろしさを味わうがいいさ!」


 『暴虐の雲、光をおおい、敵の嵐は荒れくるう…、ひるまず進め、我らが友よ、敵の鉄鎖をうち砕け!』

 イタカが呪文を唱えた!



 とてつもない暴風がこの地下の部屋を一瞬にして襲いかかり、天井に大穴を開けてデモ子とイタカを巻き上げていく……!


 「ッシャアアァアアアアアーーー!!」

 デモ子が大口を広げ、イタカに食いつく!



 「ぐぁああっ! 貴様ぁ! よくも!」

 「ッシャアア……!」


 はるか上空にまで風にのって舞い上がった二匹の化け物が戦っているその真下の女王の間では……。


 ヤヒロとアメミットがお互いを見ながら、ぽかんとしていたのであったー。



~続く~

©「ワルシャワ労働歌VARSHAVIANKA」(作詞:ヴァツワフ・シフィエンチツキ/作曲:グルジシャノフスキー/ロシア語訳詞:KRZHIZHANOVSKIJ GLEB MAKSIMILIANOVICH/日本語訳詞:鹿地亘)"


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