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クエストを受けよう!

第69話 クエストを受けよう! 『家を借りよう』

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 軍資金は確保できていた。

 オレたちはまた『円柱都市イラム』に向かい、そこで人員募集をすることにした。

 ヒトが集まるまでにやることは2つだ。



 街頭テレビを設置する場所探しと、シバの女王に許可をもらうことが1つ。

 それと冒険者ギルドのクエストを2つ、依頼を受けて消化することだ。

 冒険者ギルドのギルド長アマイモンさんの言うことには、あと2つ依頼を達成すれば、オレの冒険者ランクがSランクに昇格できるらしい。

 そうすれば、オレたちのパーティー『ルネサンス』もAランクになるかもしれない。



 まあ、いずれにしても今後、商売を拡大していくにも、ランクをあげ、知名度を上げておくに越したことはないだろう。

 ということで、オレたちは再び、『円柱都市イラム』に向かうのだった。

 表で待っていた砂竜ガレオンがその間に料理用バイオロイド、クックドゥー・ドゥルドゥーから、マツサカウシの丸焼きを2頭も与えられて、むさぼり食べていたところだった。

 ガツガツと食べる姿は大きな爬虫類って感じだな。



 「ジ……ジン様! これは美味である! 本当に美味である! 俺様は一生、ジン様についていくぞ!」

 「お……おぅ……。それはよかった。満足してくれたようだな。じゃあ、さっそく、『円柱都市イラム』までオレたちを運んでくれるかな?」

 「もちろん、構わない。」

 「向こうについたら、グガランナ牛をごちそうしてやるよ。」

 「おおお!! ぐわぁーーっはっはっ!! 俺様は生涯の主を見つけたり!」



 ……砂漠ではよほど美味いものがなかったようだな。

 こちらとしても、ありがたい。無理やり言うことをきかせるのは、趣味ではないからな。

 では、行くとするか!



 ◇◇◇◇


 今度の旅は、めちゃくちゃ短かった。

 なんといっても砂竜の足が速い。

 前は数日間かかったところを『円柱都市イラム』に着いたのは、たったの半刻後(約1時間後)であった。


 門番のテン・グースカがオレたちの顔を見て、話しかけてきた。

 「ジンさんじゃないですか! また『イラム』へおかえりですか。ようこそ。」

 「ああ。テンさんも元気そうでなにより。」

 「いやいや。ジンさんが『赤の盗賊団』を倒してくれたからですよ。あ。一応、規則なんですみませんね。」



 そう言ってテン・グースカが『解析魔法』を唱える。

 『とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの ほそみちじゃ てんじんさまの ほそみちじゃ ちょっと とおしてくだしゃんせ ごようのないもの とおしゃせぬ
このこのななつの おいわいに おふだをおさめに まいります いきはよいよい かえりはこわい こわいながらもとおりゃんせ とおりゃんせ』

 (マスター。『イステの歌』によると、解析魔法『通りゃんせ』はレベル3の魔法でございます。)

 門番の専門の呪文のようで持ち物検査の呪文だそうだ。

 特に怪しいものなど持ってないオレたちは、持ち物検査を無事終えた。

 だが、テンさんは別れ際、オレのことをちらちら見ていた……。まぁ、おそらく大量の金貨がわかったんだろうな……。




 「数日ぶりの『イラム』だな。まずは、ベン・シラさんに会いに行こうか。」

 「そうですね。マスター。門番の者に伝えておきましょう。宿はいかがいたしますか?」

 「そうだな。また『湖畔亭』に泊まってもいいけど、今度は長期滞在になりそうだからな。家を借りてもいいかもね。」

 「ジン様。それなら不動産屋の『ホーン・メイド』に寄ってみましょう。」

 アーリくんがそう提案する。



 『ホーン・メイド』は角の生えた獣人たちが経営する不動産屋さんだ。

 大通りに面した一等地に店を構えている。

 女王の宮城の門番に言伝を頼んだ後、不動産屋に向かう。



 「へい。いらっしゃい! 物件をお探しで?」

 店舗に入ると勢いのある声で出迎えたのは、メイド姿の牛の獣人だった。

 「わしは店主のレイ・ブルだ。この街一番の不動産屋へようこそ。おい。カッパ・マン。お茶をお客様に用意しろい!」

 牛の獣人レイ・ブル、店主ということだが、彼が後ろにいた店員らしき角の生えたメイド姿のカッパに指示を出す。


 ……つか、オスなのかよ! メイド姿は意味あるのか!?



 「へぇい。」

 そう言って店の奥にいくカッパ。……こいつもオスかよ!


 オレたちはとりあえず、椅子に座る。



 「では、どのくらいのご予算でお探しですか? ひと月1金貨から1白金貨まで幅広く物件をご案内できますが?」

 「そうだなぁ。広い家がいんだよね。家賃は問わないよ。あと、家とは別に、あの中央の円柱、借りられないかな?」

 「ふむ。広い家ですね。わかりました。それと、あの円柱ですか……。まあ、かけあってみましょう。シバの女王様に。」

 「ああ。やっぱり、シバの女王様の持ち物なんだね。そりゃそうか。」

 「ですね。あと、広い家をお探しでしたら、ちょうどいい物件がございます。」

 「おお! それはよかった。」





 ****


 レイ・ブルさんが紹介してくれた家は、『円柱都市イラム』の居住区の北東の端に位置する館だった。

 所有者はセイレーン種族のカザマという人らしいが、不動産管理『ホーン・メイド』のアユ・タウロスという牛獣人の方がすべて管理しているとのことだ。

 現地にさっそく向かったオレたちが目にしたのは、無数の黒猫が住む館だった……。

 近所でも黒猫たちに迷惑しているようで、近づくものはほとんどいないという。

 その名も『黒猫館』……。 その昔、殺人事件があったようななかったような……。



 だが、ここはとにかく広大な土地があり、庭はまさに森と言っても過言ではないほど木々が生い茂っている。

 そして、家賃がとにかく安い。なんとひと月銀貨3枚でいいという。管理費込みでだ。

 オレは値段よりもその広さに惹かれた。

 なんといっても今後いろんな商売を展開していくのに広さが欲しかったのだ。



 




 しかし、魔女でも住んでそうだな……。

 オレたちは門の前に辿り着いた。

 鍵もかかっていない。



 「おーい! すみませーん! レイ・ブルさんから紹介されてきたんですけどぉ!! 管理人さん! いませんかー!」

 「マスター! 館内に無数の気配を感知いたしました!」

 「う……うん……。それはたぶん、あの黒猫たちだろうねぇ……。」

 「ジ……ジン様……。猫族は月氏にとっては恐るべき存在なのです……。」

 「え? やっぱり食われちゃうの?」

 「ジン様! 今は決してそのようなことは公には許されませんが……。かつては天敵の種族であったと聞いております。」



 オリンがそう教えてくれる。

 ……種の本能ってヤツかな? ネズミと猫だもんね。

 「まあ。苦手なら追い払ってもいいけどね。とりあえず、管理人のアユ・タウロスさんって方がいるらしいんだけど……。」



 「とりあえず、玄関まで行ってみようか!?」

 「は……はい……。」

 アーリくんは完全にぶるってしまっている。

 そのしっぽがカチコチになって震えている。

 オリンもそうみたい。



 「心配するな! アーリ。イシカに任せろだゾ!」

 「安心するのだ! オリン。ホノリにお任せなのだ!」

 イシカとホノリがアーリくんとオリンを守るようにその横に立って歩く。

 うんうん。いい子たちだよ。ホント。



 「あん! マスターにはワタクシが! って、今はこんなに小さな姿ですけど! お守りいたしますわ!」

 「お……おぅ……。ありがとな。アイ。」

 オレたちが歩いていくと、警戒した黒猫たちが離散して森の中に入っていく。

 だが、その目は森の中からじぃーーっとオレたちをなめるように見ている。



 玄関にたどり着き、呼び鈴を鳴らす。


 リンリンリィーーーーン!!



 館の中からなにか気配がした。

 そして、玄関の扉が開き、ぬっと出てきたのは肩に黒猫を乗せたメイド姿の牛の獣人だった。

 「はいよ。あら? お客さんかしら?」

 「ああ。オレはジン。この館を借りようと思っているものだ。レイ・ブルさんから紹介されてきた。」



 「あら? うちのボスから? まあまあ。それはそれは。わたしはアユ・タウロス。『ホーン・メイド』の社員ですわ。こっちはわたしの愛猫のカーロちゃんよ。」




 アユ・タウロスはそう言ってオレたちを見て微笑んだのだったー。


~続く~
©「通りゃんせ」(曲/わらべ歌 詞/わらべ歌)


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