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ルネサンス黎明期

第58話 ルネサンス黎明期 『霧越楼閣の晩餐』

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 ****

 オレたちは『霧越楼閣』で久々に夜を過ごした。

 玄関から入ったらそこには、ズッキーニャとドクドク・ドクター、メンテ・ナースが出迎えに来ていた。

 「おかえりなさいませ! ジン様。」

 「ああ。ドクター! ズッキーニャの健康状態は大丈夫だったかい?」

 「はい。異常ございません。」

 ふむ。それはよかった。

 ドクドク・ドクターは医療用のバイオロイドで、メンテ・ナースはあちこちのメンテナンスもできるし、看護能力も持ってるメンテナンスのバイオロイドだ。





 「お……おかえ……なさい。」

 聞き取ることができる限界の音量で、ズッキーニャがはにかみながら、そう言った。

 なんだか照れくさそうにしている。



 「おう。ただいま。ズッキーニャ。ご飯はちゃんと食べたかい?」

 「うん! すっごく美味しかった!」

 「へぇ? 何食べたの?」

 「あれ!『ゴハントミソシル』っていうスープとウケモチ米の炊いたやつ!」



 お! ご飯と味噌汁か! 和食も口に合うようで良かったな。

 ウケモチ米ではないけどね。コシヒカリだよ。我が日本の誇る美味い米なんだよ。

 「それは良かった。だけど、もっと美味しいものを今夜は食べさせてあげるよ!」

 「ホント!? ジン! 嬉しい!」

 「いやいや。いいんだよ。」

 んーー! 可愛いなぁ。ズッキーニャ。赤い頭巾の超絶かわいい幼女って……最高!!



 ん……? なんだか、アイやヒルコたちの視線が痛い……。

 あ、オレがズッキーニャにデレデレしてるからか!

 「……ごほんっ! ああ、アイがいない間に誰が料理担当してくれたの?」

 「はい。クックドゥー・ドゥルドゥーというニワトリ型の料理用バイオロイドです!」

 「お……おぅ。そっか……。まあ、アイのほうが料理は美味しいだろうね。」



 すると、アイがズッキーニャに少し殺気を出していたのが一瞬でなくなり、興奮ぎみに言ってきた。

 「マ……マスター! 今夜の食事はもちろん、このアイの手料理をみなに振る舞いますわ!」

 「わーい! アイ様! ありがとう! 楽しみぃ! あ、そういえば、アイ様ってジン様の奥様なのですか?」

 「え!?」

 と、オレ。



 「まま……ままままままさか! ワタクシごときがそんな奥様だなんて……! はぁ。そりゃそうなってももちろんワタクシはかまわないですけど……。」

 「えー!? そうなんだぁ? とってもお似合いだと思うんだけどなぁ。」

 「まぁ! なんてこの子はいい子なんでしょう!? 今夜はワタクシが手に手をかけて美味しい料理を食べさせてあげますからね? ズッキーニャ!」

 「わーい!わーい! ありがとぉ!」


 アイはズッキーニャを重要保護対象に指定したようだ……。



 2階のコントロールルーム兼ダイニングルームで、みんなで夕食を食べることにする。

 とりあえず、一同全員集合してみるか。

 「アイ。全員集めてくれ。みんなにズッキーニャを紹介しようと思う。」

 「マスター。かしこまりました。」



 ****


 『霧越楼閣』の一同が介し、長テーブルに着席したー。



 オレが議長席に着席していて、その隣にアイが立っている。

 オレの右隣の席に近い方から、ヒルコ、コタンコロ、ズッキーニャが座り、左隣にはイシカ、ホノリが座っている。

 そして、テーブルの後方に一列にバイオロイドやロボット達が並んでいる。


 紹介していくとー。



 ルン婆: 自動お掃除型ロボットをアイが魔改造したアンドロイドで、家政婦的な存在だ。

 アカナ・メイド: 屋敷の拭き掃除を担当しているルン婆の孫という設定らしい。

 エア・クリーナ: 空気清浄機が魔改造された存在。常に屋敷内の空気をきれいにしてくれている。

 ドクドク・ドクター: 医療用バイオロイド。あらゆる医療の技術と知識を持っている。

 メンテ・ナース: 屋敷の機械のメンテナンスから、看護の能力まで備えた万能アンドロイド。

 ラピュ太郎: コタンコロの農園にいる園庭用のアンドロイド。

 マッパ・マッパー: 地図作成技術を持つバイオロイド。なぜか真っ裸。かろうじて局部は葉っぱで隠している。

 タダタカ: 記録専用のバイオロイド。歩くだけで、測量ができてしまうすごい技術を持っている。

 ピリー・レイス: 飛行能力のあるナノテクマシンの集合体。霊体のような存在だが、空間認識能力が高い。

 クックドゥー・ドゥルドゥー: 料理用バイオロイド。アイには劣るが一流のコック並みの腕前を持つニワトリ型のバイオロイド。





 「みんな! すでに知っているメンバーもいるとは思うけど。この子、レッド・ズッキーニャが新しくこの『霧越楼閣』の一員となります!

 仲良くしてやってくれ! よろしく頼む!」

 「マスターのいうことはーっ?」

 アイがみんなに問いかけた。

 すると……。



 「ぜったーーーっい!!」

 みんなが声を揃えて言う。

 「お……おぅ……。ま……よろしくね。」

 「ズッキーニャです。よろしくおねがいします。」

 「ズッキーニャ。よろしくね。僕も歓迎するよー。」

 ヒルコが一番に言ってくれた。いつも、朗らかなヒルコ。かわいいな。



 「我ももちろん、歓迎する。」

 コタンコロもそう言ってくれる。もちろん、コタンコロはいつも冷静で頼りになるな。

 「イシカも歓迎するのであるぞ!」

 「ホノリも歓迎するのだ!」

 ああ。イシカもホノリも真っ直ぐなその気持が伝わってくる。彼女たちは本当に機械とは思えないな。



 「じゃあ、食事にしよう! 今日は……。すき焼きだーーーっ!!」

 「イエス!マスター! かしこまりました! 『円柱都市イラム』で買ってきたグガランナ牛肉で、たっぷり美味しいすき焼き、作ってみせましょう!!」

 アイが快く引き受けてくれた!


 「おおおおおお!!」

 一同が歓喜の声をあげた。



 「すき焼き、大好きー!」

 ……と、ヒルコも嬉しそうだ。


 「我もすき焼きは好物である!」

 ……と、コタンコロが興奮している。



 「すき焼きである!!」

 「すき焼きなのだ!」

 イシカもホノリも食べられないでしょ!!




 「すき焼きは医学的にも最適でございますぞ。」

 ……と、ドクドク・ドクターが言う。

 バイオロイドは有機生命体だから、食事もするんだね。



 「あっひゃっひゃー! キテマス!」

 ……って、マッパ・マッパー、やっぱり変な性格だわ……。

 真っ裸なんだもん……。そりゃそうか。



 「わたくしめは……見学させてもらいます……。」

 あ……。ピリー・レイスは亡霊みたいなものだもんな。

 でも、気にしてなさそうだな。



 「拙者も久しぶりの肉でございます!」

 ……って、やっぱ、タダタカってモデルはあの江戸の人っぽいね。

 地図作成班だもんね。


 「私も調理を手伝わせていただきます! アイ様!」

 ……って、クックドゥー・ドゥルドゥーはまともだ!

 ニワトリ頭がなんとも言えないけど、どういうセンスなんだとは思うけど……。

 ズッキーニャの料理も作ってくれていたんだもんな。あとで褒めておこう!



 こうして、アイとクックドゥーが料理をしてくれて、みんなで美味しくすき焼きを食べたのだ。

 ズッキーニャが目を丸くして驚いていた。

 「こんなの初めて!! なにこの美味しさの・・・爆裂呪文やーーーーっ!!」

 と、なんだか聞き覚えのあるようなないような感想を述べながら、むしゃぶりついていたのは良かったな。



 なんだかんだいろいろあったが、我が家が一番だなぁ。

 それに、この砂糖醤油の染みた味がまた、最高!



 たとえ黙示録戦争が起きて、こんなふうに世界が終わったからといっても……。

 和食って、なくなってほしくないな。

 うん。『霧越邸』名物ということで、和食レストランチェーンを展開してみるのも、いいかもしれないな。

 この世界のみんなにも味わってもらいたい。





 オレの今は失われた祖国の料理を……。



 これも『ルネサンス』活動のひとつに含めよう。

 そう思うジンだったー。



~続く~


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