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赤の盗賊団

第25話 赤の盗賊団 『ルネサンス結成』

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 「みなさんのランク判定の試験結果を発表します。」

 フルーレティさんが深呼吸をしてそう言った。

 ちょっとドキドキしてきたな。そういえば高校のテスト、いつも赤点ギリギリでドキドキしたっけ・・・。

 それとは違う。なんだかやってやった感があるな。



 「では、まず、カシム・ジュニアさん!」

 「はいっ!!!」

 ジュニアくんが精一杯デカい声で返事した。・・・いや、卒業式かっ!!



 「カシム・ジュニアさんは、冒険者ランク・Fランク補欠です! えっと、まあギリギリ合格ですね。
マルタドールにはぜんぜん叶いませんでしたが、そのギルドにもたらした情報の確度から考慮させていただき、『情報』技術はお持ちであると見させていただきました。

 職業は、『商人』です!」

 「わかりました。以後、頑張りマウス!!」

 ん? 新たなネズミアピール!? 職業は商人・・・当たり前といえば当たり前すぎるな。

 まあ、ジュニアくんは妥当なところか。登録できただけよしとしよう。まあ、ジロキチがついてるからな、心配ないだろう。



 「続いては、ジロキチさんです!」

 「は! どうでございやすか?」

 ジロキチの番だ。ジロキチはマルタドールもなんなく倒していたし、問題ないだろう。



 「ジロキチさんは、冒険者ランク・Cランクです! マルタドールを一瞬で葬り去ったあの剣技、お見事でした。瞬発力・スピード・技巧、どれも素晴らしかったです。

 職業は、『忍者』です!」

 「ははー!! 拙者にぴったりでございやすな。」

 ほうほう、職業は忍者か・・・って、おい! 忍者ってバレてるやないかーーーい!! 忍ぶ者の意味、どこ行ったんだよ・・・。

 思わずツッコんでしまうくらい、当たり前だな。つか忍者って職業あるんだな。後で他にどういう職業があるか聞いてみよう。



 「では、続きまして、ヒルコさんです!」

 「はいはーい! 僕はなんだろねぇ~。」

 うん、ヒルコ、あいかわらずのほんわかっぷり。かわいいぞ。うんうん。



 「ヒルコさんは、冒険者ランク・Cランクです! ジロキチさんと同様にマルタドールをあの必殺技っぽいヤツで倒した手腕はお見事でした。

 職業は、『侍』です! ジン様のそばにいつも控えていることからも護衛に適性があると判断致しました。」

 「おお! サムライ! かっこいい! 僕、それ気に入ったよー。」

 ヒルコがぴょんぴょんはねて喜んでいる。まあ、よかったな。しかし、ヒルコが『侍』か、メイド姿なんだけどな・・・。



 「では続きましては、アイ様です!」

 「いつでもどうぞ。まあ、あなたの見る目とやらを拝見しましょう。」

 「アイ様。私は公平ですわよ?」

 「あら? ワタクシは何も言ってませんけど?」

 な・・・なんだかいつもこの二人、バチバチなんだよな。



 「アイ様は、、、冒険者ランク・Bランクです! 悔しいですが、あの魔法の腕、まったく魔力が働いた形跡もなかった上に、ジン様の魔法を利用したところが素晴らしかったです。

 職業は、『賢者』です! 『賢者』の職は魔法の知識や魔力だけでなく、その知恵・判断力などが問われます! アイ様はそのいずれも兼ね備えているかとお見受け致しました。」

 「ふぅーん。あなた、見る目はあるようなのね。」

 「私は仕事には私情は挟まないタイプなのです。」

 うわぁ、なにか私情があるって言ってるようなもんじゃないか!?



 「では、最後にジン様でございます!」

 「ゴクリ・・・。オレだな。」

 いよいよ、オレの番か、まあ、マルタドールは瞬殺だったから、大丈夫だよな・・・。



 「ジン様は、、、冒険者ランク・Aランクです! 文句ないあの魔法の威力! しかもまったく魔力をいつ発動させたのかこちらも計測できませんでした!

 職業は、もちろん、『魔法使い』です! まだまだその魔力を温存されているとお見受け致しました。魔法使いの中でもトップクラスだと判断致しました。」

 「なっ・・・!? 『魔法使い』か!! 」




 よりによって『魔法』が使えないオレが、なにゆえ『魔法使い』なのだ?? 

 この残された世界の『魔法』について知りたいのは、こっちのほうなんだよー!! 一個も魔法、使えないんだよーーーー!!

 「ん? ジン様?? どうかなされましたか?」

 「あ・・・いや・・・。」



 しかし、ここで、そう言ったとしたなら、この科学の力を説明しなければならない・・・。それは無理だ・・・。

 しかも、冒険者登録できなくなっても嫌だしな。ま、いっかw

 「よし。オレは『魔法使い』だな。わかった。」



 「では、この場にいない、コタンコロ様と、イシカ様、ホノリ様は、冒険者ランク・Fランクということで登録させていただきます。」

 フルカスさんがそう言ってなにやら、ぶ厚い本に記載する。

 「あの、それで、パーティーの名前はいかがいたしますか?」




 フルーレティさんがそう言いながら、オレに近寄ってきた。

 「愛・・・Ich liebe dich(イッヒ・リーヴェ・ディッヒ)・・・。」

 フルーレティさんが、かすれそうな声で囁いた。



 ドキっとするような、メガネの奥の瞳・・・なんだか、涙でうるうるしていて・・・吸い込まれそうな・・・。
 
 「こほんっ!! マスター? どうかなさいました?」

 「えっ!? あ、いやいや、何でもない・・・よ。」

 アイの声で思わず、ハッとなった。

 (マスター! お気をつけください。恋の魔法とやらにかからぬように・・・。)

 (あ、ああ。そうだな。)



 「ジン様、パーティー名を登録させていただきます。何としますか?」

 また、フルーレティさんが言ってきた。が、その眼はうるうるはしてなかった。気のせいだったのか・・・。

 「そうだな。何にするかな。」

 「マスターの目的に合致した名前がよいですね。」

 アイがそう言った。



 「そうですなぁ。妖精族の彼らのパーティーは、まさに冒険者たらんと『アドベンチャーズ』と名付けられたと聞いております。

 また、『ドッコイ兄弟』は彼らオーガの一族の名を世の中に知らしめんと結成されたとのこと。

 吸血鬼狩りを主に活動しているヘルシングさんのパーティーは、『ヴァンパイア・ハンターズ』です。

 やはり、その目的や象徴などがパーティーの名前にされているみたいですね。

 かの有名なSランク冒険者チーム、『モーニング・スター』も愛と美の女神を信奉しているからだとか。」

 フルカスさんがそう解説してくれた。



 なるほど。オレの目的・・・それは、オレの好きだったアニメやマンガをもう一度復活させて、思う存分、楽しむこと・・・。

 文芸復興・・・ルネサンスとでも言うのか。

 「ルネサンス・・・。」ぼそり

 「ルネサンス!? まあ、それはよい響きですね。では、ジン様たちのパーティーは『ルネサンス』で登録しますね。」

 「あ・・・! まぁ、それでいいかな。」

 「マスター! ルネサンス!! それは素敵な名前ですわ!」

 「うんうん。僕もすごく気に入ったよー。」

 「ジン様のつけられた名前、僕も絶対よいと思います。」

 「拙者も賛成でございやす。」



 あれよあれよという間に『ルネサンス』に決まってしまった。まあ、何でもいいか。

 「では、冒険者パーティー『ルネサンス』のパーティーランクは、Bランクとさせていただきます!」

 「わかった。では、そういうことで。」

 「正式に、冒険者パーティー『ルネサンス』には、ギルドから『赤の盗賊団』討伐依頼を出しますね。報酬は、白金貨1枚です。経費は別途お支払いしますので、領収書はお忘れなく。」

 「お・・・おぅ。」





 経費が出るのか・・・。うん、領収書って、なんだかとたんに現実味を帯びてきたなぁ。

 ま、いずれにせよ、明日、『赤の盗賊団』討伐へ出発だな。

 今夜はえらく月がキレイな夜だったー。



~続く~
©「愛 Ich Liebe Dich」(詞:K.F.ヘルローゼー/曲:ベートーベン)

※ルネサンスは「再生」「復活」を意味するフランス語であり、一義的には、古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動であり、14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まった(文化運動としてのルネサンス)。"

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