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プロローグ

第1話 プロローグ 『目覚め』

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 意識が……目覚めてくる感覚がする……。
いや、夢を見ているのか……?

 だんだんと……目覚めてくるにつれ、なんだかやわらかい温かなものに包まれている感覚がする。

 や……やわらかい!!

 なんて気持ちいいんだ!!

 このやわらかいものはいったい、なんなんだろう……?




 「んん!? なんだっ!」

 目の前に柔らかい2つの大きな……胸!!!

 こ、これが柔らかいものの正体かっ!



 「お目覚めになられましたか? 葦亜・仁(アシア・ジン)様、いえ我がご主人様・マスターよ。」

 すぐ目の前のきょぬーの女性がオレに語りかけてくる。とっても優しい声で。

 そうだ、オレの名前は、葦亜・仁(アシア・ジン)……名前を思い出す。




 「え……えーと。ちょっと記憶があいまいで、説明してくれるとありがたいんだが……。」

 オレは努めて冷静を装いながらそう答えた。



 「ああ、ワタクシとしたことが……! そうですね、そのご説明の前にまずはお召し物をご用意しましょう。」

 あ、今、そう言われてオレは真っ裸だったことに気がついた。

 目の前の女性は、なんだか高級そうな、中国風というか和風というか貴婦人です……みたいな服装をしていた。



 そして、オレは彼女にしっかり抱きしめられていたが、全身マッパな上に濡れていた。

 なんだか、卵型のカプセルのような中に二人で抱き合っているといった様子だ。

 いまさらながら、よくわからないが、恥ずかしい気がしてきた。



 カプセルの前に、メイドの姿をした女性……これまたかわいい女性が現れ、学生服のような服装を持ってきた。

 「AI(アイ)様、ジン様のお召し物をお持ちしました。」

 「ヒルコ。よろしい。では、マスターのお着替えをお手伝いして差し上げなさい。」

 「かしこまりました。」




 そしてヒルコと呼ばれたそのメイドに、言われるがままに服を着せられた。

 うん、これ、どこから見ても学生服だな。なんで、学生服なのかはわからないけど。

 ここで、ようやく、あたりを見回す心の余裕ができたので見回したところ、どうやら、何か病院のような施設の部屋のようだった。



 あ!これ、わかったぞ!アレだ。オレがよく読んでいた、WEB小説とかのお決まりの異世界転生ってやつだ!

 なるほど、なるほど。これで、チート能力とかもらえるわけね。このきょぬーのお姉さまは、女神様的な存在だろうな……。うん、うん。

 オレがそう考えながら、二人に案内されるがまま、病室のような部屋を出て、階段を登り、廊下を進み、荘厳な造りの広間を抜け、扉の前に着いた。



 その間、二人を観察していたのだが……。

 まずオレを抱きしめていたAI(アイ)と呼ばれていた女性だが、オレが好きだったヴァーチャルアイドル・Vドル「猫ミミク様」と呼ばれた姿にめちゃめちゃ似ていた。

 髪の毛のリボンが猫耳のようで、金色の美しい髪がロングツインテールで、足元まで届くほど長く、顔は超美少女。
服はセーラー服とブレザーを合わせたようなコスチュームで、ネクタイがその胸の前にかかっていて、それがまた可愛い。



 もうひとりのメイド姿のヒルコと呼ばれていた女性だが、とにかくロリ少女といったイメージだ。
黒髪の長い髪が美しく、まあ、お胸のほうはほっこりといった感じだな。いや、それもまあ、いいんだけど。

 オレは自分で言うのも何だけど、性格は控えめでおとなしく、あまり主張を強く言うことはないけど、
自分の好きなことには一途・努力家だった。とくに、アニメ・漫画・映画・ゲームが大好きで本当の意味で死ぬまでやっていたなぁ。

 パソコンオタクで自分で組み上げたパソコンに人工知能も作ったし、フィギュア作りもよくやってた……土偶とかのw

 生物オタクでもあったから、フクロウとか粘菌(アメーバみたいなの)とか飼ってたっけ。

 もちろん、彼女なし……って、オレってなんで死んだんだっけ?



 はっ!! 思い出した……。

 たしか、思い出せる最後の記憶の日……、オレは唯一の親友の佐馬江・瑠太郎(さまえ・るうたろう)と、いつもどおり、高校から一緒に家への帰路についていた。

 この親友、るーたろうはオレと小学校からの幼馴染で、めちゃくちゃいいヤツだった。

 そして、オレの妹・葦亜・端万恵(あしあ・はまえ)と付き合っていた。まあ、オレもるーたろうなら、妹の彼氏としては何の文句もなかったし、喜んでいた。




 「仁……!オレさ、ハマエちゃんに……今度の休みに、一泊旅行に一緒に行こうって誘ったんだ。」

 「え!? ……ということは……ついに? あーあ、我が妹と親友にまさか先を越されるとはなぁ……るーたろう、ちゃんと避妊してくれよ?」

 「ば……ばっかやろ! そりゃそうだけど、仁、あのさ、もうちょっとオブラートに包んで言ってくれる?」

 「まあまあ、いいんじゃないの? るーたろうなら、オレは妹を任せていいと思ってるし……。」



 「ま、仁は僕の親友だし、ハマエちゃんは、仁の妹だしな……。なんか何も言わずにっていうのは良くないと思ったんだ。」

 このるーたろうってヤツのいいところはこういう素直で、正直なところだ。オレはるーたろうだけは、何が起こってもわかり合えるし、信用できると思っていた。

 「ま、オレもすぐ彼女見つけてやるさ! って言っても今はVドル(ヴァーチャルアイドル)の「猫ミミク様」が今はオレの彼女だけどな……ははは。」

 「ふー。仁も早く、三次元の彼女、作ってくれよな? Wデートとかしたいじゃん?」

 「え!? やだよー、妹と一緒にWデートだなんて。」

 「そっかなー。ハマエちゃんってブラコンかっていうくらい、仁のこと大好きっ子じゃん、いいじゃんかー。」



 で、その後、交差点に差し掛かった時、一台のトラックがオレたちの方へ突っ込んできたんだ……。

 運転席のドライバーは居眠り運転をしていた。意識がないようだった。

 オレはとっさに、親友のるーたろうをトラックの前から思い切り突き飛ばした。



 ブレーキがかけられることもなく、歩道を乗り上げ、壁にぶつかってトラックは止まった。

 るーたろうは、オレが突き飛ばしたから、トラックを避けられた。

 が、オレはトラックにまともに突っ込まれ、跳ね飛ばされた・・・。



 血がどくどく流れ出ている……。うわあ、目の前の世界が赤く見えてきた。

 レッドアウト!? 周りの人たちが騒いでる声が聞こえるけど、どこか遠くで聞こえる気がする……。

 こりゃ、ヤバいな。



 そして、駆け寄ってきたるーたろうに、オレは……。

 「オレの家のパソコン、あれにはオレが一生懸命作った人工知能プログラム『淡島(AWASIMA)』があるから壊さず保管してほしい……。
 ……あと、土偶フィギュアの『アラハバキ』……あれは売らないでくれ……。」

  
 そこまで言って、力尽きた……。




 ……と思ったが、まだ言い残すべきことがあった……。必死に声を出す。

 「あ、あと、飼ってるフクロウの『コタンコロ』と、水槽で飼ってる粘菌の『ヒルコ』の世話を妹に頼むと……。」

 オレは飼っていたフクロウと粘菌に名前をつけていたんだ。妹のハマエは粘菌だけは嫌いだったな……。




 「いや、仁! 何言ってるんだよ! 死ぬみたいなこと言わないでくれよ……。」

 るーたろうがガチで大泣きしている。

 いや、だって、オレの下半身……るーたろうの後ろに転がってるんですけど……。

 今は全身麻痺して痛みは感じないけど……血が周りに飛び散っていることもわかっていた。

 これは、さすがに助からないでしょ……。




 「いや、いいよ。るーたろう、ハマエを頼んだぞ! あと、親父とおふくろによろしく言っておいてくれ……。ありがとうってな……。」

 オレはけっこうな重傷の割に、いろいろ遺言してから、だんだん意識が遠ざかっていった。

 るーたろうが必死にオレの名を叫んでいるのが、遠く……遠く……そして、意識は薄れ……オレは死んだ……。



 ……はずだったんだよな……。で、異世界転生なのか!?

 ふむふむ……とりあえず、話を聞こうか? 女神様!?


~続く~







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