「こんにちは」は夜だと思う

あっちゅまん

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エピローグ

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 テレビでニュースをやっている。

 「本日、10月31日午後2時ごろ、東京、ハロウィンの仮想で賑わう渋谷で警官含め死者9名・重軽傷10名を出した通り魔事件について続報です……。」

 「S県立●●高校で起きた爆破テロ事件については、県警本部の発表では、死者37名、重軽傷9名という史上最悪の死者を出した事件として捜査の遅れが指摘されています……。」

 「S 県●●市で玩場隆三(がんばりゅうぞう)さん(38才)とその妻である玩場莉奈(がんばりな)さん(37才)の夫婦が自宅で遺体で発見された事件について、S県警本部は殺人の疑いが濃厚との見解を示しました。S県史上最悪のテロ事件との関わりがあるか現在捜査中とのことで……。」





 私は此花篠希依(このはなしのきい)。

 S県立中央病院で念のための精密検査を受けるため入院中だ。

 今、私は、テレビのニュースを見ながら、事件について考えていた。

 というより、事件のことが頭から離れてくれないのだ。



 私をあのサバイバルナイフで脅して、無理やりに一緒に行動をさせられた意味も結局わからなかった。

 あの犯人の玩場玲威(がんばれい)という少年とは、全くの初対面だった。

 あのハロウィンの仮装でごった返していた渋谷で私は飲みすぎてしまって、警官に職務質問されていた時だ。

 急に彼が現れて、警官をあのナイフで刺したんだ……。

 私はいきなりのことで状況がわからず、ただただ彼が怖かった。



 それに、一緒に行動していたときでさえ、あいつは一人で何かぶつぶつと会話でもするかのように喋っていたんだ。

 それが怖くてしょうがなかった……。

 新幹線に乗せられ、S県に向かったところで、あいつがあの学校爆破事件も起こした犯人だということがわかった。



 しかも、実の両親をもあいつは殺していたんだ……!

 殺人鬼……!

 しかもとんでもないサイコパス!



 東京に出てくる前に、実の両親をまずその手にかけた彼は、学校に爆弾を仕掛けていた。

 幼少の頃から化学には精通していたらしい。

 コツコツとあれほどの惨劇を生むほどの規模の爆弾を作っていたというのだ……。



 元力士の父親は、彼を小さい時から虐待していた……。

 相撲で言うかわいがりと称して、彼に日頃から暴力を奮っていたらしい。

 また、母親の方も虐待をしていて、教育と称して、冬の真っ只中に冷たいプールで泳がせたり、真夏の盛りに暖炉に火をくべその近くでずっと勉強させていたらしい。

 そんな虐待ばかりの両親に対して、彼の行った行動は決して認められるものとは思えないが、私は同情の余地を感じてしまう。



 ひょっとしたら、私はいわゆる被害者が犯人と心理的なつながりを築くことについて「好意をもつ心理状態」と解釈して表現しているストックホルム症候群になっているのかもしれないな……。

 彼はさらに小中学校でもいじめに遭っていたというのだ。

 家でも虐待され、学校でもいじめに遭っていた彼は精神的な逃げ場所がなかったのだろう。

 それで、自身の心の中に別人格であるイマジナリーフレンドを創り、精神のバランスを取ってきたのだろう。



 彼がフーリンと呼んでいたのを私も少し聞こえたのだ。

 彼の親友という位置づけだったようだ。

 そして、彼はいじめに加担していた学校のクラスメイトごと爆弾で吹き飛ばしたんだ。

 思えば、彼らが死んだというニュースを聞いて、彼は笑っていたんだよね……。



 彼には世界がねじ曲がって見えていたみたいだった……。

 魔界に飲み込まれた……とか、魔物が……とか、彼がおかしなことを言っていたのを私は聞いた。

 警官がなんだか化け物とか魔物の類に見えていたみたいだった。



 なにかの異世界での主人公になりきったみたいに、ヒーローになったかのように、彼なりに一生懸命だった。

 私は一緒にいたときはただただ恐ろしくて、冷静ではなかったけど。

 今考えると、彼の行動は終始一貫していたとは思う。



 だけど、私を殺さなかったのは、いったいどういう気持だったのか……?

 彼は私を守るってずっと言っていた。

 彼の見ていた世界で、私は彼にとってどう見えていたのか?

 彼が死んでしまった今ではそれはもうわからない……。


 とにかく、私は全世界に衝撃を与えたハロウィン・ナイトの惨劇『10・31事件』と後に呼ばれる事件について、一生涯忘れることはできないだろう。


 さようなら……。


 架空の世界のヒーロー、愛しき殺人鬼さん。





~あとがきへ続く~


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