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第38話 勇者一行の役目

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 外はすっかり暗くなり、キシャナは余程疲れていたのか椅子に腰掛けて眠っている。
 ルトルスはキシャナを起こさないように空いているベッドへ移動させる。

「ありがとう。ルトルスも疲れているだろう? ベッドで休むといいよ」
「……そうだな。リィーシャが行政地区全体に網を張って警戒しているし、お言葉に甘えようか」

 ルトルスも空いているベッドへ横になると、天井をじっと見つめてシェーナに語りかける。

「私はリィーシャを含めた勇者一行と剣を交えたことがあると話したことはあるだろ?」
「ああ、ルトルスがガフェーナの暗黒騎士として勇者一行と戦った武勇伝はハシェルでも有名だったよ」
「ガフェーナは魔王を復活させる前はリンスルと宗教戦争を繰り広げていたが、復活後からは五大国と勇者一行を巻き込んでからは互いの滅亡を賭けた戦争へと変化した」

 ガフェーナの古参の将であったルトルスはリンスルの神官戦士と幾度も剣を交えて命を葬ってきた。魔王復活前まではリンスル以外の五大国は静観を決め込んで直接的な介入はなかった。魔王復活後からは強大な力を手にしたガフェーナだったが、五大国と勇者一行の攻防は激化していった。

「それからのガフェーナは衰退の一途を辿って今に至る。魔王を倒した勇者一行は五大国から称賛されて中立国家を建国した」
「……そうだね」

 ルトルスにとって皮肉なことだが、魔王討伐をきっかけに中立国家プライデンは建国されたと言ってもいい。魔王討伐後は、戦争孤児や他種族同士の小規模な戦闘が問題視されて、その受け皿に中立国家の建国を勇者一行が提案すると五大国は賛同してくれた。

「困惑させてすまなかった。少し休んだら警護に戻るよ」
「過去は何であれ、二人は大切な仲間だよ。リンスルや他の五大国の風当たりは強いかもしれないけど、いつか必ず分かり合える日が来ると信じている」

 魔王討伐より難しい課題で、時間はかかるかもしれないが、実現は不可能ではない。
 これから求められる勇者一行の働きは魔神復活の阻止は勿論だが、精神面で人々を支えられるような存在であり続けることも大切だとシェーナは思う。
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