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「それでこれはどういうことなんだ?」
  鬼気迫る表情で相模に迫られる。
  5月6日ゴールデンウィーク最終日。姫条の家で食事会のため集まっていた。しかしそこには呼ばれるはずもない人物がいた。
「いや~話の成り行きでさ。」
「何が成り行きだ!黄泉嶋悟、ちゃんと説明してもらうぞ。」
「そう怒るな相模。」
「黄泉嶋君、私からも説明を求めるわ。何故彼はあそこまで気まずそうにしいるのかしら。」
  俺は姫条に大体の事情を話した。相模との動画を撮られていたこと、それを2人で解決したこと。
「まぁゴールデンウィーク中はそんなことがあったんだ。それで動画の件もあるしここは穏便に済まそうと思って、警察に通報しないことを条件に部活に入ってもらうことになった。」
「本当にあの時はすみませんでした。」
  白野は深々と頭を下げる。あの時の傲慢さはカケラも残っていないように感じた
「お前、正気なのか。あれだけのことをやってのけて今更部活に入れるなんて頭がおかしいとしか思えないぞ。」
「まぁまぁそう言いなさんな。こいつ、これでも頭いいし、パソコン関係は最強なんだぜ。俺らのやれることが増えるはずだ。それにこんだけ謝ってんだ、そろそろ許してやってもいいと思うぜ。」
  相模は手を額において頭が痛そうにしている。すると不意に姫条が微笑みだした。
「まったく貴方のお人好しにはあきれるわ。いいわ。よろしく白野君。」
「お姉様がそこまで言うなら私に異論は無い。しかし白野景、貴様がお姉様に危害を加えるつもりなら容赦はしないからな。」
「というわけだ白野、これからよろしく頼むぞ。」
「はい!先輩方よろしくお願いします。」
  白野は爽やかに言う。
「そうだ白野、お前に最初の仕事を与えよう。この部活の名前をつけてくれ。」
「丸投げね。」
「いやー1人だとなかなかいい名前が浮かばなくてな。どうだ白野、いい名前あるか?」
「そうですね…学園補助救済部、略して補済部とかどうですか?」
「いいんじゃん補済部。うんうん、いい響きじゃないか。」
「悪くないんじゃないかしら。」
「白野、お前お姉様からお褒めいただくなんてなかなかやるじゃないか。」
  満場一致で白野を褒め称える。
「そ、そんな大したことじゃないですよ。」
  白野は照れながら言う。
「それにしても白野、お前だいぶキャラが変わったな。」
「あ、あの時は何故だか気が大きくなってしまって、皆さんにご迷惑をおかけしちゃいました…。」
「そのくらい遠慮深い方がいい。あの男を見ろ、お前はあんな風になったらダメだぞ。」
「そうね。白野くん、黄泉嶋くんを反面教師にして過ごすことをおすすめするわ。」
「二人とも酷くない?あんまりいじめられると悲しくなっちゃうんだけど。」
「事実だしな。」
「事実だし仕方ないわね。」
  二人とも頷きながら言う。俺には威厳というものが微塵もないようだな…悲しい…
「何はともあれ乾杯しましょう。お料理も冷めちゃうわ。」
「そうだな。じゃあ、新部設立記念と新部員歓迎会を兼ねて、乾杯!」
「「「乾杯~」」」
  各々が料理を取り始め宴は始まる。紆余曲折はあったが皆が喜び楽しそうに話す。何だかんだ言いながら俺はこの光景が好きなのだろう。
  宴も静まりかえった姫条家。家の遠い白野と一応女性である、相模はすでに帰り、俺と姫条しか家には残っていなかった。
「片付けなんて、私が全部やるのに。貴方結構律儀なのね。」
「一応言い出しっぺだからな。このくらいはするさ。」
「ふーん。意外に気を遣ってるのね。」
「道化師は人の顔色伺いながら、気を遣わないとできないですからねお姫様。」
「まったく、貴方の減らず口には感服するわ。」
「お褒めにあずかりこう…えいです…。」
  不意に来た頭痛。呼吸が荒くなる。
「黄泉嶋くん大丈夫?」
  姫条が駆け寄る。呼びかけてくれているみたいだが、頭痛が激しくて聞き取れない。ここで俺の意識は途切れた。
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