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5話
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話が前後するが、航太の通夜までの跳一は、とりわけ結婚願望も強くなく、また拒否反応を起こすこともなかった。
だが、航太の通夜の日に間男の子を産んだ妻と妻に不貞された夫を実際に自分の目で見てしまい、結婚に対して急ブレーキが掛かってしまった。
また、航太の戸籍上の父親の親族達から言われたことも心に絡みついてしまった。
とりわけ、まだ特定の女性と付き合ったことのなかった跳一にとっては、不安に陥ってしまうものとなった。
真っ赤なワンピースの女から「もし、あなたの妻になったらいっぱい不倫して、不倫の子を産んじゃうかもね」と言われたことで、自分は女性からこんな目で見られている、という思い込みもするようにもなってしまった。
このことで跳一には女性に対する警戒心や猜疑心が芽生えてしまい、それが日々大きくなっていった。
さらにテレビや週刊誌で芸能人の離婚や、男と女の愛のもつれによる殺人・傷害事件のニュースが報道されたり、電車の中で人妻の不倫を特集する記事の題名が書かれた週刊誌の中吊り広告を見つけたりすると、跳一の女性に対する警戒心や猜疑心がますます強大なものになってしまった。
その後、五年にわたり、跳一は結婚というものに極めて強い拒絶反応を起こすようになっていた。
忙しい思いをしてやっと稼いだ金が、妻が不倫するためのラブホテル代や、実の父親が自分でない子のタダ飯代などで消えていくなら、一生独身でいた方がましだと考えていた。
親や親戚から見合いを勧められても、とても応じる気にはなれなかった。航太の母親の例を挙げて、強く拒絶し続けた。
「世の中、そんな女ばかりじゃない」
と言われても、全く納得できなかった。
それでもしぶしぶ見合いに応じたことがあったが、最初から相手の女性に対して、
「この女は不倫をするだろう。絶対にするだろう。最初から不倫の子を産んで俺に育てさせる魂胆があるに決まっている」
と、強い猜疑心を抱いていた。
女性の方もそれとなく疑われていることに気付き、全く話にならない状態で終わってしまった。
そればかりではなかった。
職場の既婚女性が産休に入ると、口先では
「安産を祈るよ。いい赤ちゃんを産んでね」
と笑顔で優しい言葉を掛けたが、心の中では
「おいっ、その子は本当に旦那の子なのかよ。もしそうでないなら、難産になり、出血多量で、母子共に死んじまえ」
と、罵倒していた。
また、男性同僚が結婚すると、口では
「おめでとう、よかったなぁ」
と、祝福の声を掛けたものの、心の中では
「その女に不倫の子を産まれないように注意しろよ。子どもが生まれたら、不倫の子ではないかと、まずは疑ってみるんだぞ。生まれてから一年以内なら戸籍も訂正できるのだからな」
と、忠告してあげたい気分になった。
「妊婦=不倫の子を宿している女」という目で世の中の妊婦を見るようにもなり、街中で見かけた時もその妊婦に対しても、
「不倫の子を産むつもりなら、死んじまえ。地獄に落ちろ」
と、心の中で叫んでいた。
電車の電車の中で座っている時、近くに妊婦が立っていても、絶対に席を譲らなかった。
「間男の子を宿し、自分の夫に『あなたの子よ』と噓をついて墓場まで持っていこうとしている女なんかに、誰が席を譲るもんか」
と、その妊婦に敵意を抱き、睨みつけた。
子どもを連れた母親を見れば、
「おいっ、その子は本当に旦那の子か?もし間男の子だというなら、てめえなんか、性病に罹って死んでしまえ」
と、心の中で憎しみや怒りの炎を燃やしていた。
だが、航太の通夜の日に間男の子を産んだ妻と妻に不貞された夫を実際に自分の目で見てしまい、結婚に対して急ブレーキが掛かってしまった。
また、航太の戸籍上の父親の親族達から言われたことも心に絡みついてしまった。
とりわけ、まだ特定の女性と付き合ったことのなかった跳一にとっては、不安に陥ってしまうものとなった。
真っ赤なワンピースの女から「もし、あなたの妻になったらいっぱい不倫して、不倫の子を産んじゃうかもね」と言われたことで、自分は女性からこんな目で見られている、という思い込みもするようにもなってしまった。
このことで跳一には女性に対する警戒心や猜疑心が芽生えてしまい、それが日々大きくなっていった。
さらにテレビや週刊誌で芸能人の離婚や、男と女の愛のもつれによる殺人・傷害事件のニュースが報道されたり、電車の中で人妻の不倫を特集する記事の題名が書かれた週刊誌の中吊り広告を見つけたりすると、跳一の女性に対する警戒心や猜疑心がますます強大なものになってしまった。
その後、五年にわたり、跳一は結婚というものに極めて強い拒絶反応を起こすようになっていた。
忙しい思いをしてやっと稼いだ金が、妻が不倫するためのラブホテル代や、実の父親が自分でない子のタダ飯代などで消えていくなら、一生独身でいた方がましだと考えていた。
親や親戚から見合いを勧められても、とても応じる気にはなれなかった。航太の母親の例を挙げて、強く拒絶し続けた。
「世の中、そんな女ばかりじゃない」
と言われても、全く納得できなかった。
それでもしぶしぶ見合いに応じたことがあったが、最初から相手の女性に対して、
「この女は不倫をするだろう。絶対にするだろう。最初から不倫の子を産んで俺に育てさせる魂胆があるに決まっている」
と、強い猜疑心を抱いていた。
女性の方もそれとなく疑われていることに気付き、全く話にならない状態で終わってしまった。
そればかりではなかった。
職場の既婚女性が産休に入ると、口先では
「安産を祈るよ。いい赤ちゃんを産んでね」
と笑顔で優しい言葉を掛けたが、心の中では
「おいっ、その子は本当に旦那の子なのかよ。もしそうでないなら、難産になり、出血多量で、母子共に死んじまえ」
と、罵倒していた。
また、男性同僚が結婚すると、口では
「おめでとう、よかったなぁ」
と、祝福の声を掛けたものの、心の中では
「その女に不倫の子を産まれないように注意しろよ。子どもが生まれたら、不倫の子ではないかと、まずは疑ってみるんだぞ。生まれてから一年以内なら戸籍も訂正できるのだからな」
と、忠告してあげたい気分になった。
「妊婦=不倫の子を宿している女」という目で世の中の妊婦を見るようにもなり、街中で見かけた時もその妊婦に対しても、
「不倫の子を産むつもりなら、死んじまえ。地獄に落ちろ」
と、心の中で叫んでいた。
電車の電車の中で座っている時、近くに妊婦が立っていても、絶対に席を譲らなかった。
「間男の子を宿し、自分の夫に『あなたの子よ』と噓をついて墓場まで持っていこうとしている女なんかに、誰が席を譲るもんか」
と、その妊婦に敵意を抱き、睨みつけた。
子どもを連れた母親を見れば、
「おいっ、その子は本当に旦那の子か?もし間男の子だというなら、てめえなんか、性病に罹って死んでしまえ」
と、心の中で憎しみや怒りの炎を燃やしていた。
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