ワールドトランスミッション

メイビス

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三章

進入者

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ルキアに蘇生され、個室で宙に浮いてる不思議な感覚でうっすらと目を開けるとそこには、大きな窓と小さなテーブルが浮いた。ふと脇をみるとアスカがそばで寝ていた。
しばらく寝顔を見て癒されていると、アスカが目を擦りながら目を覚ました。
「おはよう~具合はどう?」

水月は寝起きのアスカにドキドキながら答えた。
「だ、大丈夫、心配してくれてありがとう」

欠伸をすると、アスカは窓際まで移動し話を始めた。
「ユウナの説明ほとんど死んでて聞けてないと思うから、寝起きで悪いけど聞いてくれる?」

こちらを見るアスカから恥ずかしそうに顔を背けて返事をした。
「あぁ」

顔を背けた水月を見て少し嬉しそう微笑み、説明を始めた。
「私たちの世界はアーク様の死後、崩壊を始め、一部大陸は消滅しました。それをユウナの発明したエネルギーフィールドによって食い止めている状態です。
アーク様の死が発端のようですが、原因が分からない状態です。
ユウナの技術でアーク様を一時的に憑依させる事で原因の究明や終息を測りたいのです。ご協力をお願いします」

アスカは説明を終えて再び振り向くと目が合い、赤面して下を見るわいい男の子がいた。
「これから俺はどうしたらいい?」

アスカは水月の元へ近づき、目を合わせて説明を始めた。
「あなたは、アーク様を憑依させる為に、膨大な魔力を身に付けてもらいます。その為に下界にある魔法学校で魔法を学び、魔力を蓄えられる量を上げてもらいます」

水月は困った顔をしながら、頭を抱えた。
「明日から仕事なんですよ?それに憑依されたら俺はどうなるんだ?」

和かに水月の顔に近づきながら答えた。
「アナザーワールドは魔力の存在しない場合のみ発動できる魔法、時間停止魔法によって時間を止めてありますから仕事に影響はありません。そして憑依期間は長くても1日しか持続しない。ですから身体を1日借りるだけで悪影響はほとんどありませし、何をしているかも認識できます」

それを聞いてホッとするのもつかの間、水月は学校と言う言葉に、耳を疑い驚いた表情でアスカに問う。
「学校って俺、26だぞ?よりにもよって天使や悪魔まで存在する世界の学校に通うのか?」

そんな驚く顔をみてアスカは笑顔で答えた。
「そうです。入学の手続きはこちらでしておきます。天使や悪魔、そして人間は全て共学です。しかし人類の人口は3種族の中で最下位ですので、人間の生徒は少ないですが、、、、、、」

話を聞いた水月は、久々の学校生活と魔法と言う言葉に、胸躍らせていた。

アスカは水月の様子を見た後、説明を再開する。
「崩壊を止めているエネルギーフィールドは、残り5年しか持ちません。3年の間に魔力と魔法の知識を蓄えてください。その間に私たちワールドトランスは、他の解決策を模索しておきます。他に何かありますか?」

水月はずっと疑問に思っていた事をぶつけた。
「科学と魔法、見分けがつかないのですが、見分ける事は出来ますか?」

水月の質問に応えている、その時!
「特性のみ見分ける事が、出来ます。手練れほど偽装して魔法か武器による攻撃か分からなくしま、、、、、、ドン」

急に地鳴りが鳴り響き、窓の向こうに広がる下町の空に亀裂が入る。

何が起こっているのか、分からず窓の方へと移動したアスカは亀裂の隙間に赤い液体が流れているのを確認。
「ま、まさか、エネルギーフィールドが破壊されたのか?」

グラグラと揺れる部屋に、閃光が走るとユウナの姿があった。
「ち、違うあれはドラグーン。謎の惑星にしか生息しない怪物だ」

赤い液体が溢れ始め、500メートルはあろうか、深紅の龍に姿を変えた。

人間と変わらない大きさの無数の天使と悪魔達が深紅の龍へ魔法陣?を展開、龍の正面に光が一点に収束を始めた。
龍も迎撃態勢に入り、豪炎を口に含み、爆音と閃光がはしる。
豪炎と光の矢は双璧となって天と地を焼いた。
双璧が途切れたと同時に、深紅の龍は進撃を始めた。
無数の天使と悪魔は後退を始める中、猛スピードで深紅の龍に近づく影をユウナ達は見逃さなかった。
「アン、、、、、、ナ?」

アスカはアンナの姿を見ると頭を抱えて説明の続きを始めた。
「魔法は武器と組み合わせたりもするんだけど、魔法にしか出来ない大きな特徴は、、、、、、神の召喚。召喚魔法よ」

その説明にタイミングを合わせるように、龍の正面に立ったアンナは右手を天に挙げると、巨大な六重魔法陣が出現。
そこから龍の倍はあろうかという巨大な焔の手だけが現れ、龍を一瞬で掴んだ。

アスカは心配そうにつぶやいた。
「ま~た食べる気だ、お腹壊さなきゃいいけど、、、、、、」

宙に浮いた深紅の龍は魔法陣やアンナに火炎弾を放とうとするが、魔法陣の中へ焔の手と共に飲み込まれた」

辺りは昼間なのに薄暗くなっていた。

水月は今のは何か尋ねる。
「い、今のは?この世界はいつもあんなのが出るのか?」

ユウナは首を傾げ、腕を組みながら応えた。
「今回が、初めてです。アーク様の子孫が現れたのを察知したのでしょうか?タイミングが良すぎますね。進入経路を早急に調べて来ます」

そう言い残すと、霧の様にユウナは消えた。

水月は目の前で起こった僅か10分あまりの出来事が信じられず、不安と恐怖に押し潰され錯乱した。
「き、きっとこれは夢だ、夢なんだああああ!」

そんな水月を抱き寄せて励ました。
「大丈夫、私達が必ず守ります。ですからあなたも出来る事を最大限に行ってください」

しばらくアスカの腕の中で涙を隠していた頃、亀裂の入った大地は魔法科学によって再生され元の姿へと戻り、双璧ができた辺りは未だ微かに火の粉がパチリと音を上げていた。

黒く焦げた焼け野原に雨の足音がザーっと迫ってきた、曇天の空を見上げアスカは不安を抱いている彼を更にギュッと抱きしめ思った。
「これから私達はどうなるのだろうか、、、、、、」


あの出来事から3日、水月は彼女のことを好きになっていた。自分が不安なのに、こんなダメな俺を守ると言ってくれた彼女の優しさが水月の心を動かし、彼女を守りきる力が欲しいと本気で思った。
彼女とはあれ以来あっていない。
会いたいのに、、、、、、



平行世界はいつもと変わらない日常へと戻り始めた。
アンナの召喚魔法により一瞬で消え去ったドラグーン、しかし、絶対安全と言われていたエネルギーフィールドに進入された事が皆を不安を植え付け、平行世界の崩壊はいつ進行が始まってもおかしくない事を痛感した出来事となった、、、、、、
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