私が遊んだファミコンソフト

矢木羽研

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桃太郎伝説(ハドソン・1987年)

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 プレイ時期:2023年
 ソフト入手:中古で500円ほどで購入
 クリア状況:エンディングまで
 おすすめ度:★★★

 *

 時系列でいえば、今のところ初プレイが最も新しいソフトである。きっかけは、拙作『令和の中学生がファミコンやってみた』のネタとして「筆者自身も全くプレイしたことがないRPG」で遊んでみるという、一種の企画ものである。以前から興味があったのだが、たまたま遊ぶ機会がなかったのだ。

 プレイ自体は実機を使ってノーヒントで行った。当然、パスワードも毎回入力する。とはいえスマホで画面撮影するのでそれほどの手間ではない(これは二十数年前にドラクエをやったときもそうだったのだが)。

 内容は、ドラクエ1風の一人旅。一応お供の動物が攻撃してくれるが、あまりに頻度が低いので存在を忘れがちである。むしろ加入時のステータスアップのほうが本質か。せめてきびだんごを使った戦闘中は積極的に戦うとか、そういう要素があっても良かったのに。

 鬼の金棒という、攻撃力が非常に高いが素早さが下がる武器が印象的。実はレアドロップらしいのだが序盤であっさり手に入れてしまった。やや手間がかかるが、戦闘中に持ち替えることでデメリットをほぼ無視できる。このあたりは『ヘラクレスの栄光』と似ている部分かも知れない。

 ドラクエ1と比較すると、戦闘中に攻撃系の術を使う機会が多いと感じた。特に「MPの割合消費で確実にクリティカル」という鹿角の術の存在は割と革命的。まあ強すぎて、これを使うことが前提になっている感じは強いのだが。回復アイテムが強力な分だけ消耗も激しく、中盤以降のダンジョンは逃げまくることになる。

 この時代のRPGらしく経験値稼ぎを強要するデザインなのだが、氷の敵を弓矢で狩るというあからさまな稼ぎポイントが設置されており、単調なのには代わりはないが工夫はされていると思った。プレイ時間(年齢)の可視化もあり、どこまで稼ぐかはプレイヤーの判断に委ねられているのだろう。

 レベルアップといえば、レベルアップと同時にHP/MPが全回復するシステム、今では珍しくなくなったが当時としては非常に珍しいと思う。ピンチでの大逆転の演出や、レベルアップのタイミングを回復リソースとして利用するなど、プレイヤーにとっては面白い体験につながる要素なので、他のゲームでも積極的に採用してほしいと思っている。

 桃太郎と竹取物語を軸に、色々な昔話を取り入れたストーリーはよくできていた。あちこちに混ぜ込まれたギャグは時事ネタが多くてわかりにくい。なるほど・ザ・ワールドあたりはともかく、突然自分の名前をアピールする村田さんが演歌歌手の村田英雄だとか、わかるわけがない。

 一対一の戦闘だが、敵の攻撃が多彩なのも特徴。イベントアイテムまで盗んでくるとは思わなかった(再入手は可能だが)。中には敵ではないお助けキャラ(福の神、ユキだるま)がエンカウントしたりして面白い。敵以外との遭遇というのは、もっと流行ってもよかったのに。

 ラストダンジョンではいわゆる「道中」がなく、ほぼボス戦のみというのは、現代の感覚でもRPGというのをよく理解していると思った。リソース管理の後のラスボス戦というのは盛り上がりに水をさされるので、全力で戦えるようにして正解。もっとも、もう少し後になると「セーブポイント&全回復アイテム」が標準になるのだが。

 全体的には、ドラクエ1を強く意識しつつも個性的なシステムが目を引く。もっと早いうちに遊んでおきたいソフトであった。
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