4 / 6
触れ合い
しおりを挟む
とっくに覚悟は出来ていたはずなのに、それでも裸の胸を自分から見せる勇気は無かった。両胸を隠す手をどけてくれと頼まれたら、あるいは力ずくでどけられてしまったら……話は違ったのかも知れない。でも少なくとも、私から見せるのはまだできなかった。
決意が薄れてしまうのが嫌だったし、また家に誰もいないというチャンスもそうそう無かったから早めの日付を指定したのだが、本当は少しダイエットするつもりだった。もし、無駄な肉を少しでも落とせていたら、正面から堂々と裸を見せられたのだろうか。今となっては後の祭りだけれど。
描くのは背中でいいと言ってくれた。思えば、先日のヴィーナス像のときも後ろから描いていた。ヌードという題材は必ずしも正面からだけではないということは私も理解していたとはいえ、アキがそれで手を打ってくれて、ひとまず安心した。
自分の背中をまじまじと見る機会はあまり無い。先日、鏡の前でヌードをチェックしたときも背中は見ていなかった。アキのデッサンを見せられた時、「これが私?!」というありきたりな反応が口から出かかったが、これは正面を描いてくれたときのためにとっておくことにした。
一段落して、アキにちょっとしたサプライズを見せてあげたいと思った。先日買ったブラだ。一旦外に出して着替えることにする。なおセットのショーツも穿いているが、さすがにこちらはまだ見せる気になれないのでスパッツでガードする。ドレッサーを見ながら、まだ付け慣れていない補正ブラを頑張って付け、深呼吸をしてドアをノックする。
*
「どう? この前買ったばかりのブラなんだけど」
「……気のせいか、普段より大きく見えるかも」
あまりにも直接的な言い方に少し吹き出してしまったが、まさにその通りである。
「当たり。やっぱり、服の上からでもわかる?」
「そうだな。体操服で薄着の時とかはだいたい大きさがわかるかも」
「もう、どこ見てんのよ」
思わず肘で彼を小突いたが、下着一枚で近い距離で触れるという自らの行為に少しドキドキしてしまった。
「それ、パッドでも入ってるの?」
「はぁ~、なんにも知らないのね」
まあ、私も知らなかったんだけどね。というわけで私は彼に説明をする。と言っても、下着屋さんの受け売りだけれど。
*
「なるほど、平たく言えば寄せて上げる、ってことか」
「まあ、そうかもね」
「それにしても、アオイってこういう下着持ってたんだ、なんか意外な感じ」
「そりゃ、高校生だからね」
まあ、私も先週買ったばっかりなんだけどね。下着を褒めてくれたことは嬉しい。
「もしかして、上下揃いの下着だったりする?」
「うん……見たい?」
「そりゃ、ね」
下着のデザインに芸術性を感じたのか、あるいは単なる性欲からなのか。とにかく、アキは下着に興味を持ったようだ。
「別にいいけど……引かないでね」
「なにそれ、そんなに過激なの?」
私は返事の代わりに、スパッツを下ろしていった。半透明のレースから、うっすらとヘアが透けてしまっているデザインがあらわになるが、もう覚悟は決めたのだ。
「……なんか言いなさい」
「……えっと、アオイも大人になったんだなって」
「なにそれ」
私のショーツから透けるヘアを見てそう言ったのか、それとも全体的なプロポーションか。まあどちらでもいいか。嫌な気はしない。
「アキだって大人だよ。背も伸びたし、肩幅も広くなったし」
「確かに、昔はアオイのほうが高かったもんな」
「本当に、いつの間に抜かされちゃったんだろうね」
私は身長差を確かめるように、後ろからアキに抱きついてみた。そして手を前に持っていって、彼のパーカーのジッパーを下ろす。
「おい、何を」
「私だって見せたんだから、あんたも見せなさい」
後で思い返せば大胆な行動だったと思う。私は有無を言わさずに、彼のTシャツも脱がせて、裸の背中に抱きついた。
「あったかい……」
「……抱きつくのはいいけど、俺だって健康な男子なんだぞ?」
「どういう意味?」
私の問いかけに対して、アキは返事の代わりに私の腕を引き剥がし、振り向いて正面から抱きついた。
「柔らかいな、いい匂いもする。それに比べて俺は……わかるだろ?」
「うん……硬くなっちゃってる」
どこがとは言わないが、彼の下半身の一部分が硬くなっていることはズボン越しでもよくわかった。
「ごめん、もうやめよっか」
「やだ」
手を離して離れようとする彼の背中を、今度は私が抱きしめる。彼は戸惑いつつも、再び私を抱いてくれた。
「……これ、邪魔だよね」
私は自分の背中に両手を回し、ホックを外す。アキは少しだけ驚いたようだが、肩のストラップは彼の手で下ろしてくれた。抜き取ったブラをベッドに放り投げ、今度は二人で同時に抱きしめ合う。私たちはお互いの心臓の音を直接感じた。
決意が薄れてしまうのが嫌だったし、また家に誰もいないというチャンスもそうそう無かったから早めの日付を指定したのだが、本当は少しダイエットするつもりだった。もし、無駄な肉を少しでも落とせていたら、正面から堂々と裸を見せられたのだろうか。今となっては後の祭りだけれど。
描くのは背中でいいと言ってくれた。思えば、先日のヴィーナス像のときも後ろから描いていた。ヌードという題材は必ずしも正面からだけではないということは私も理解していたとはいえ、アキがそれで手を打ってくれて、ひとまず安心した。
自分の背中をまじまじと見る機会はあまり無い。先日、鏡の前でヌードをチェックしたときも背中は見ていなかった。アキのデッサンを見せられた時、「これが私?!」というありきたりな反応が口から出かかったが、これは正面を描いてくれたときのためにとっておくことにした。
一段落して、アキにちょっとしたサプライズを見せてあげたいと思った。先日買ったブラだ。一旦外に出して着替えることにする。なおセットのショーツも穿いているが、さすがにこちらはまだ見せる気になれないのでスパッツでガードする。ドレッサーを見ながら、まだ付け慣れていない補正ブラを頑張って付け、深呼吸をしてドアをノックする。
*
「どう? この前買ったばかりのブラなんだけど」
「……気のせいか、普段より大きく見えるかも」
あまりにも直接的な言い方に少し吹き出してしまったが、まさにその通りである。
「当たり。やっぱり、服の上からでもわかる?」
「そうだな。体操服で薄着の時とかはだいたい大きさがわかるかも」
「もう、どこ見てんのよ」
思わず肘で彼を小突いたが、下着一枚で近い距離で触れるという自らの行為に少しドキドキしてしまった。
「それ、パッドでも入ってるの?」
「はぁ~、なんにも知らないのね」
まあ、私も知らなかったんだけどね。というわけで私は彼に説明をする。と言っても、下着屋さんの受け売りだけれど。
*
「なるほど、平たく言えば寄せて上げる、ってことか」
「まあ、そうかもね」
「それにしても、アオイってこういう下着持ってたんだ、なんか意外な感じ」
「そりゃ、高校生だからね」
まあ、私も先週買ったばっかりなんだけどね。下着を褒めてくれたことは嬉しい。
「もしかして、上下揃いの下着だったりする?」
「うん……見たい?」
「そりゃ、ね」
下着のデザインに芸術性を感じたのか、あるいは単なる性欲からなのか。とにかく、アキは下着に興味を持ったようだ。
「別にいいけど……引かないでね」
「なにそれ、そんなに過激なの?」
私は返事の代わりに、スパッツを下ろしていった。半透明のレースから、うっすらとヘアが透けてしまっているデザインがあらわになるが、もう覚悟は決めたのだ。
「……なんか言いなさい」
「……えっと、アオイも大人になったんだなって」
「なにそれ」
私のショーツから透けるヘアを見てそう言ったのか、それとも全体的なプロポーションか。まあどちらでもいいか。嫌な気はしない。
「アキだって大人だよ。背も伸びたし、肩幅も広くなったし」
「確かに、昔はアオイのほうが高かったもんな」
「本当に、いつの間に抜かされちゃったんだろうね」
私は身長差を確かめるように、後ろからアキに抱きついてみた。そして手を前に持っていって、彼のパーカーのジッパーを下ろす。
「おい、何を」
「私だって見せたんだから、あんたも見せなさい」
後で思い返せば大胆な行動だったと思う。私は有無を言わさずに、彼のTシャツも脱がせて、裸の背中に抱きついた。
「あったかい……」
「……抱きつくのはいいけど、俺だって健康な男子なんだぞ?」
「どういう意味?」
私の問いかけに対して、アキは返事の代わりに私の腕を引き剥がし、振り向いて正面から抱きついた。
「柔らかいな、いい匂いもする。それに比べて俺は……わかるだろ?」
「うん……硬くなっちゃってる」
どこがとは言わないが、彼の下半身の一部分が硬くなっていることはズボン越しでもよくわかった。
「ごめん、もうやめよっか」
「やだ」
手を離して離れようとする彼の背中を、今度は私が抱きしめる。彼は戸惑いつつも、再び私を抱いてくれた。
「……これ、邪魔だよね」
私は自分の背中に両手を回し、ホックを外す。アキは少しだけ驚いたようだが、肩のストラップは彼の手で下ろしてくれた。抜き取ったブラをベッドに放り投げ、今度は二人で同時に抱きしめ合う。私たちはお互いの心臓の音を直接感じた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
女性画家と秘密のモデル
矢木羽研
大衆娯楽
女性画家と女性ヌードモデルによる連作です。真面目に絵を書く話で、百合要素はありません(登場人物は全員異性愛者です)。
全3話完結。物語自体は継続の余地があるので「第一部完」としておきます。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる