14 / 95
本編
悪魔合体!暗殺者のナポリタンドッグ
しおりを挟む
日曜の昼前、いつもの後輩女子から写真とともにメッセージが送られてきた。
「焼きたてパン買いました!」
メッセージはそれだけだ。写真にはコッペパンや丸パンのような、シンプルなパンが写っている。それ以上は敢えて何も言わないつもりのようだが、おそらく「このパンに合うパスタを作って欲しい」ということだろう。
パンとパスタという組み合わせ。例えばファミレスでもパスタにフォカッチャを付けたりするときがあるが、俺にとって馴染み深いのは学校給食だ。ナポリタンなどのパスタに丸パンという組み合わせが、小学校のころによく出たのを思い出す。
*
「おはようございます!……あ、さっそく何か作ってますね」
「おはよう。玉ねぎの匂い、玄関まで来てたか」
俺は仕込みとして玉ねぎを薄切りにしていたところだった。
「今日は何を作ろうとしてたんですか?」
「ナポリタン、それも暗殺者のナポリタンってとこだな」
「ということは、暗殺者のパスタをナポリタン風に作るってことですね!」
以前、普通のナポリタンを作ったことがある。暗殺者のパスタもカットトマトを使う簡易的なものだが作ったことがある。今回はそれを組み合わせてみようというわけだ。
「さっそく、パスタを焼いてくぞ。パンもあるから2人で120グラムってとこか」
フライパンにオリーブオイルを引き、刻んだ唐辛子とニンニクを入れ、1.4ミリのフェデリーニを半分に折って敷き詰めたら、弱火で炒めていく。
「ここにケチャップだ。とりあえず大さじ2杯っと」
油が熱くなって、乾麺を軽く揚げたような状態になったところでケチャップを入れる。
「水は入れないんですか?」
「ああ、まだ入れない。ここで煮詰めて焼きケチャップにしていく」
ケチャップは油で炒め煮にしていくと酸味が飛び、甘みが濃縮されていく。
*
「1分経ったな。ここで具を入れて、と」
あらかじめスライスしておいた玉ねぎとウインナーを加える。
「あとは少しずつお湯を足しながら、暗殺者のパスタと同じように作っていくんだ」
「先輩、塩は入れなくていいんですか?」
「ああ、今回はケチャップの味のみだな。なぜか味が濃い目に感じられるんだよな」
1人前のナポリタンをケチャップ大さじ2杯のみで味付けるのは、やや物足りない。しかし軽く焦がすことで風味を補えるのだ。あとは粉チーズなり、追いケチャップで調整していけばいい。
「いつものようにミックスベジタブルも入れて、っと」
「これが入ると先輩のナポリタンって感じしますもんね」
*
「パンとパスタという組み合わせ、俺としては給食のイメージが強いんだよな」
調理中、後輩に話しかける。
「あ、なんとなくわかります。ソフト麺に付いてきたりしましたよね」
「ソフト麺か。聞いたことはあるけど、俺の地元では見たこと無いんだよな」
「へえ、そうなんですか!」
「うちの学校では、パスタや焼きそばは調理済みの状態で出てきたんだよ。大きなバットにまとめて入ったのを一人分ずつ取り分けるんだ」
「上手にやらないと足りなくなったりしそうですね」
「そう、だから上手いやつがやることになってたな」
全体的な量だけでなく、具の配分もあるのでなかなか難しい。最後に玉ねぎばかりが残ると、おかわりの楽しみが薄れるので文句を言われたりした。
「パスタ系のときはパンが一緒に出ることが多かった。ちょうど、そういう丸いやつだったな」
彼女が持ってきたパンの袋を見ながら言った。
「ブリオッシュですか。なかなかおしゃれですね」
「そういう名前だったか忘れたけど、まあ似たようなやつだった。ほんのり甘くて好きだったな」
「私のところではだいたいコッペパンでしたよ」
「確かにコッペパンもあったな。そういえば学校でしか聞いたことがないかもな」
ジャムが挟んであったり、ホットドッグや焼きそばパンの土台としては見る機会はあっても、「コッペパン」そのものを買ったことは、そういえば無いような気がする。
*
「そろそろかな。仕上げに砂糖を小さじ1杯、っと」
「やっぱりナポリタンには甘みが必要ですからね」
「だな。そして最高に美味しく食べるには、やっぱりこれだな」
俺はコッペパンを手に取り、包丁で切れ込みを入れた。そこに出来上がったナポリタンを挟んでいく。
「絶対やると思いました!」
「名付けて、暗殺者のナポリタンドッグ!」
「よーし、私も!」
小ぶりのコッペパンに、あふれるようにパスタを盛り付けていく。そして粉チーズをたっぷり振りかける。
「いただきます!」
そして、勢いよく頬張る。もちろん、俺もそうする。
「美味しい! なんていうか、ジャンクの極みって感じですね」
「適度に歯ごたえがあるのがまたいいよな」
二人して、あっという間に平らげてしまった。
「もう一つお楽しみだ。このブリオッシュを……」
まずはそのまま、一口ちぎって口に入れる。しっとりとした甘めの生地だ。今度は、それでフライパンにこびりついたケチャップをぬぐって食べる。
「うん、甘めの生地にはケチャップ味がよく合うな」
「うわ、もう反則級じゃないですか!」
皿はまだしも、鍋にこびりついたソースまで舐めるように食べられるのは、家庭料理だからこそだ。食事は気心の知れた相手と自由にするのが一番だ。
*
「ごちそうさまでした! それにしても炭水化物に炭水化物、罪な組み合わせですね」
「イメージは悪いけどな、そんなに大量に食べてるわけじゃないから気にしなくてもいいと思うぞ」
実際、お互いが食べたのは半人前のパスタと、小ぶりのコッペパンを1つずつ、ブリオッシュを半分ずつだ。昼食の摂取カロリーとしては標準的な範囲だろう。
「今度は焼きそばパンもいいかも知れませんね。まあパスタでやる意味なさそうですけど」
「ソース焼きそばなら柔らかめの中華麺が一番だろうからなぁ」
とはいえ、パンとパスタの組み合わせ自体は可能性がありそうである。今度はペンネあたりで試してみようか。とりあえず俺はもう少し食べたいので、コッペパンにウインナーを挟んでホットドッグでも作って、おやつにでもしようかと考えているのであった。
「焼きたてパン買いました!」
メッセージはそれだけだ。写真にはコッペパンや丸パンのような、シンプルなパンが写っている。それ以上は敢えて何も言わないつもりのようだが、おそらく「このパンに合うパスタを作って欲しい」ということだろう。
パンとパスタという組み合わせ。例えばファミレスでもパスタにフォカッチャを付けたりするときがあるが、俺にとって馴染み深いのは学校給食だ。ナポリタンなどのパスタに丸パンという組み合わせが、小学校のころによく出たのを思い出す。
*
「おはようございます!……あ、さっそく何か作ってますね」
「おはよう。玉ねぎの匂い、玄関まで来てたか」
俺は仕込みとして玉ねぎを薄切りにしていたところだった。
「今日は何を作ろうとしてたんですか?」
「ナポリタン、それも暗殺者のナポリタンってとこだな」
「ということは、暗殺者のパスタをナポリタン風に作るってことですね!」
以前、普通のナポリタンを作ったことがある。暗殺者のパスタもカットトマトを使う簡易的なものだが作ったことがある。今回はそれを組み合わせてみようというわけだ。
「さっそく、パスタを焼いてくぞ。パンもあるから2人で120グラムってとこか」
フライパンにオリーブオイルを引き、刻んだ唐辛子とニンニクを入れ、1.4ミリのフェデリーニを半分に折って敷き詰めたら、弱火で炒めていく。
「ここにケチャップだ。とりあえず大さじ2杯っと」
油が熱くなって、乾麺を軽く揚げたような状態になったところでケチャップを入れる。
「水は入れないんですか?」
「ああ、まだ入れない。ここで煮詰めて焼きケチャップにしていく」
ケチャップは油で炒め煮にしていくと酸味が飛び、甘みが濃縮されていく。
*
「1分経ったな。ここで具を入れて、と」
あらかじめスライスしておいた玉ねぎとウインナーを加える。
「あとは少しずつお湯を足しながら、暗殺者のパスタと同じように作っていくんだ」
「先輩、塩は入れなくていいんですか?」
「ああ、今回はケチャップの味のみだな。なぜか味が濃い目に感じられるんだよな」
1人前のナポリタンをケチャップ大さじ2杯のみで味付けるのは、やや物足りない。しかし軽く焦がすことで風味を補えるのだ。あとは粉チーズなり、追いケチャップで調整していけばいい。
「いつものようにミックスベジタブルも入れて、っと」
「これが入ると先輩のナポリタンって感じしますもんね」
*
「パンとパスタという組み合わせ、俺としては給食のイメージが強いんだよな」
調理中、後輩に話しかける。
「あ、なんとなくわかります。ソフト麺に付いてきたりしましたよね」
「ソフト麺か。聞いたことはあるけど、俺の地元では見たこと無いんだよな」
「へえ、そうなんですか!」
「うちの学校では、パスタや焼きそばは調理済みの状態で出てきたんだよ。大きなバットにまとめて入ったのを一人分ずつ取り分けるんだ」
「上手にやらないと足りなくなったりしそうですね」
「そう、だから上手いやつがやることになってたな」
全体的な量だけでなく、具の配分もあるのでなかなか難しい。最後に玉ねぎばかりが残ると、おかわりの楽しみが薄れるので文句を言われたりした。
「パスタ系のときはパンが一緒に出ることが多かった。ちょうど、そういう丸いやつだったな」
彼女が持ってきたパンの袋を見ながら言った。
「ブリオッシュですか。なかなかおしゃれですね」
「そういう名前だったか忘れたけど、まあ似たようなやつだった。ほんのり甘くて好きだったな」
「私のところではだいたいコッペパンでしたよ」
「確かにコッペパンもあったな。そういえば学校でしか聞いたことがないかもな」
ジャムが挟んであったり、ホットドッグや焼きそばパンの土台としては見る機会はあっても、「コッペパン」そのものを買ったことは、そういえば無いような気がする。
*
「そろそろかな。仕上げに砂糖を小さじ1杯、っと」
「やっぱりナポリタンには甘みが必要ですからね」
「だな。そして最高に美味しく食べるには、やっぱりこれだな」
俺はコッペパンを手に取り、包丁で切れ込みを入れた。そこに出来上がったナポリタンを挟んでいく。
「絶対やると思いました!」
「名付けて、暗殺者のナポリタンドッグ!」
「よーし、私も!」
小ぶりのコッペパンに、あふれるようにパスタを盛り付けていく。そして粉チーズをたっぷり振りかける。
「いただきます!」
そして、勢いよく頬張る。もちろん、俺もそうする。
「美味しい! なんていうか、ジャンクの極みって感じですね」
「適度に歯ごたえがあるのがまたいいよな」
二人して、あっという間に平らげてしまった。
「もう一つお楽しみだ。このブリオッシュを……」
まずはそのまま、一口ちぎって口に入れる。しっとりとした甘めの生地だ。今度は、それでフライパンにこびりついたケチャップをぬぐって食べる。
「うん、甘めの生地にはケチャップ味がよく合うな」
「うわ、もう反則級じゃないですか!」
皿はまだしも、鍋にこびりついたソースまで舐めるように食べられるのは、家庭料理だからこそだ。食事は気心の知れた相手と自由にするのが一番だ。
*
「ごちそうさまでした! それにしても炭水化物に炭水化物、罪な組み合わせですね」
「イメージは悪いけどな、そんなに大量に食べてるわけじゃないから気にしなくてもいいと思うぞ」
実際、お互いが食べたのは半人前のパスタと、小ぶりのコッペパンを1つずつ、ブリオッシュを半分ずつだ。昼食の摂取カロリーとしては標準的な範囲だろう。
「今度は焼きそばパンもいいかも知れませんね。まあパスタでやる意味なさそうですけど」
「ソース焼きそばなら柔らかめの中華麺が一番だろうからなぁ」
とはいえ、パンとパスタの組み合わせ自体は可能性がありそうである。今度はペンネあたりで試してみようか。とりあえず俺はもう少し食べたいので、コッペパンにウインナーを挟んでホットドッグでも作って、おやつにでもしようかと考えているのであった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる