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解説
執筆の経緯とキャラ紹介その1(トムと旧パーティ)
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【短編について】
まずこの話のもとになった短編について。獣人ヒロインが書きたいというところから始まり、その相棒である主人公をどういうキャラにするか考えた。獣人ならスピードアタッカー型だろうから、相棒にはヒーラーとタンクの役割を与えるとバランスがとれると思った。
タンクヒーラーと言えば真っ先に思いつくのがパラディン(聖騎士)の類だろうが、テンプレ的なRPG風の世界において「二人旅」というのはやや不自然で、パラディンなどというエリート職は馴染まないのではないかと思い、「神官(ここではヒーラー職のこと、クレリック・プリースト・僧侶の類)くずれの戦士」という、ゲームでいえば中途半端に転職してしまったキャラを主人公にした。この主人公が何らかの理由で元いたパーティを離れたところに、ウェアウルフの少女と出会って……という背景ストーリーが頭の中に浮かび上がった。影のある主人公を前面に出すと辛気臭いだけになってしまうので、ヒロインはとにかく天真爛漫で明るい性格にした。
この主人公がパーティを離れた理由としては、流行りの「追放もの」を取り入れ、さらにアンチテーゼにしてみた。「本当は有能なのに理不尽に追放される」というテンプレに対して、「無能であることを自覚して自ら身を引く」というパターンである。そして客観的にも無能判定は間違っていないという厳しい場面からスタートする(あくまでも一流冒険者には足りないというだけで、一般人からすれば十分に英雄レベルなのだが)。
彼は神官としての才能に限界を感じたからパーティを離脱し、戦士に転職して再出発したという設定である。この背景としてゲームの理屈を取り入れた。最近はあまり見ない気がするが、成長にランダム要素があるゲームにおいては、「覚えたい呪文(スキル)を覚えてくれない」というケースが往々にして発生する。ゲームでは単に運の問題(レベルを上げていればいつか覚える)である場合が多いが、本作においては習得に才能による限界がある(少なくとも本人はそう自覚している。そのうち覚えるかも知れないが、育成のために無限に時間を使えるわけではない)とした。
ここまでが、スピンオフ元を書いた時点で思いついた設定。
***
【パーティメンバーについて】
長編化するにあたって改めて考えたのが、主人公がもともと所属していたパーティの構成とその成り立ちである。結果として兼業も含めると6人パーティにヒーラーが3人もいる形になり、主人公のコンプレックスがより強調されるようになった。ゲーム目線では歪な編成に見えるかも知れないが、古典的ダンジョンRPGにおいては割と一般的な構成ではある。
実は一番苦戦したのが名前の設定で、違和感がない上に他作品であまり手垢が付いていないような名前を割と真剣に選んだ。全体的にフランス語っぽい雰囲気で統一したが、あまり厳密に考えて付けたわけではない。
【トム】
主人公にして、とにかくモブっぽいというか平凡な名前を意識して付けた。容姿もごく平凡なのだろう。それなりに年齢を重ねており(若くとも20代後半以上のイメージ)経験も積んでいるので、いきなり裸の女の子が出てきても別にうろたえたりはしない。
なお「全快呪文を覚えられなかったヒーラー」というキャラ設定に関しては、例のダンジョンRPGの有名な派生創作に明確な元ネタが存在するのでピンときた方もおられるのではないだろうか(性格などは全く異なるのだが)。最初の戦闘シーンで《風刃》を披露したのもオマージュネタである。
仲間たちのことは非常に大切にしており、書き手としてはそれを表現するために、再会以前は各話で少なくとも1回はかつての仲間の名前を出すようにしている。
【ゴルド】
おっさん枠。いわゆるHFO(ヒューマン・ファイター・男)一本伸ばし。最初はなんとなく30代くらいのイメージだったが、おっさんが冒険者になる理由だとか、他のメンバーとのバランスや役割を考えるうちに、「息子に家督を譲った領主」という造形になり、かなりの高齢(50歳前後くらい)になった。ビジュアル的には髭とか生やしており、家紋の入ったマントや盾を常に身につけているイメージ。
名実ともにパーティの中心人物であり、どのメンバーとも直接的な繋がりがある。
【エル】
ヒーラーである主人公を離脱させるからには、より優秀なヒーラーが必要だと思って設定。同期の同門ということにした。白兵戦やアンデッド退散なども含めて役割を完璧にこなす。なお作中で書く機会がなさそうな気がするのでここで明かすが、かなりの容姿端麗という設定である(結果として、夢の中で触れておいたが)。
名前の由来はアルファベットのLで、トムとともにゴルドの左右を固めるイメージ。そのまま「エル」にすることで、星新一の短編における「エヌ氏」のような匿名感を出した。あとから見ると「エルフ」と紛らわしかった(しかも1話からエルフが登場してるし)。
【アラン】
現時点では15歳。本来なら物語の主人公となるべき存在。例のダンジョンRPGにおいて「たまたまボーナスポイントが高く出た」時に作りがちなキャラに、和製RPGにおける「勇者」的な要素を追加した形。さらに文字通りの意味での「謙虚な騎士」にしたのはちょっとしたお遊び。
名前の由来という程でもないが、筆者が某有名RPG3を遊んだ時に、デフォルトで登録されていた僧侶の「アラン」を意識。響きが気に入って最後まで連れ歩いていたのでこの名前には思い入れがある。
【エレナ】
典型的な魔法使いの女の子。年齢は20歳前後くらい。美人。執筆当初は設定面ではほとんど空白であり、今後の展開次第で都合よく動かせるようにしておいた。結果としては謎解き担当として大活躍することになる(ちょっと語らせすぎたかも)。魔術師としても、ラストバトルでMVP級の働きを見せる(単純なダメージ量では間違いなく最大)。
名前の由来はエレクトリックとかエレメンタルとかそういうフィーリング。ただし雷魔法が特に得意というわけではない(全般的にそつなくこなす)。
【イザ】
ゲームにおいて、魔術師として作成した後に速攻で盗賊に転職させる(魔法の使える盗賊になる)、というプレイングを物語に落とし込む上で「魔術学校中退」という経歴を思いついた。それだけだとつまらないので、マジックアイテムの達人というおまけを付けた(実際のゲームでは他にやることがないから消極的にアイテム係になりがちなので)。なんとなくトムに気があるような感じになったが気のせいである。
外見ではエレナより長身。スレンダーな体格であり男装もできるが、女性らしい服が似合わないというわけではないので、舞踏会などでかわいらしいドレスを着てトムを驚かせたりしてほしい。
名前の由来はなんとなく早そうな響きということで。本名はイライザで縮めてイザ、みたいな感じだろうか。個人的にもゲームで早解きプレイをやる時によく使う思い入れのある名前。
まずこの話のもとになった短編について。獣人ヒロインが書きたいというところから始まり、その相棒である主人公をどういうキャラにするか考えた。獣人ならスピードアタッカー型だろうから、相棒にはヒーラーとタンクの役割を与えるとバランスがとれると思った。
タンクヒーラーと言えば真っ先に思いつくのがパラディン(聖騎士)の類だろうが、テンプレ的なRPG風の世界において「二人旅」というのはやや不自然で、パラディンなどというエリート職は馴染まないのではないかと思い、「神官(ここではヒーラー職のこと、クレリック・プリースト・僧侶の類)くずれの戦士」という、ゲームでいえば中途半端に転職してしまったキャラを主人公にした。この主人公が何らかの理由で元いたパーティを離れたところに、ウェアウルフの少女と出会って……という背景ストーリーが頭の中に浮かび上がった。影のある主人公を前面に出すと辛気臭いだけになってしまうので、ヒロインはとにかく天真爛漫で明るい性格にした。
この主人公がパーティを離れた理由としては、流行りの「追放もの」を取り入れ、さらにアンチテーゼにしてみた。「本当は有能なのに理不尽に追放される」というテンプレに対して、「無能であることを自覚して自ら身を引く」というパターンである。そして客観的にも無能判定は間違っていないという厳しい場面からスタートする(あくまでも一流冒険者には足りないというだけで、一般人からすれば十分に英雄レベルなのだが)。
彼は神官としての才能に限界を感じたからパーティを離脱し、戦士に転職して再出発したという設定である。この背景としてゲームの理屈を取り入れた。最近はあまり見ない気がするが、成長にランダム要素があるゲームにおいては、「覚えたい呪文(スキル)を覚えてくれない」というケースが往々にして発生する。ゲームでは単に運の問題(レベルを上げていればいつか覚える)である場合が多いが、本作においては習得に才能による限界がある(少なくとも本人はそう自覚している。そのうち覚えるかも知れないが、育成のために無限に時間を使えるわけではない)とした。
ここまでが、スピンオフ元を書いた時点で思いついた設定。
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【パーティメンバーについて】
長編化するにあたって改めて考えたのが、主人公がもともと所属していたパーティの構成とその成り立ちである。結果として兼業も含めると6人パーティにヒーラーが3人もいる形になり、主人公のコンプレックスがより強調されるようになった。ゲーム目線では歪な編成に見えるかも知れないが、古典的ダンジョンRPGにおいては割と一般的な構成ではある。
実は一番苦戦したのが名前の設定で、違和感がない上に他作品であまり手垢が付いていないような名前を割と真剣に選んだ。全体的にフランス語っぽい雰囲気で統一したが、あまり厳密に考えて付けたわけではない。
【トム】
主人公にして、とにかくモブっぽいというか平凡な名前を意識して付けた。容姿もごく平凡なのだろう。それなりに年齢を重ねており(若くとも20代後半以上のイメージ)経験も積んでいるので、いきなり裸の女の子が出てきても別にうろたえたりはしない。
なお「全快呪文を覚えられなかったヒーラー」というキャラ設定に関しては、例のダンジョンRPGの有名な派生創作に明確な元ネタが存在するのでピンときた方もおられるのではないだろうか(性格などは全く異なるのだが)。最初の戦闘シーンで《風刃》を披露したのもオマージュネタである。
仲間たちのことは非常に大切にしており、書き手としてはそれを表現するために、再会以前は各話で少なくとも1回はかつての仲間の名前を出すようにしている。
【ゴルド】
おっさん枠。いわゆるHFO(ヒューマン・ファイター・男)一本伸ばし。最初はなんとなく30代くらいのイメージだったが、おっさんが冒険者になる理由だとか、他のメンバーとのバランスや役割を考えるうちに、「息子に家督を譲った領主」という造形になり、かなりの高齢(50歳前後くらい)になった。ビジュアル的には髭とか生やしており、家紋の入ったマントや盾を常に身につけているイメージ。
名実ともにパーティの中心人物であり、どのメンバーとも直接的な繋がりがある。
【エル】
ヒーラーである主人公を離脱させるからには、より優秀なヒーラーが必要だと思って設定。同期の同門ということにした。白兵戦やアンデッド退散なども含めて役割を完璧にこなす。なお作中で書く機会がなさそうな気がするのでここで明かすが、かなりの容姿端麗という設定である(結果として、夢の中で触れておいたが)。
名前の由来はアルファベットのLで、トムとともにゴルドの左右を固めるイメージ。そのまま「エル」にすることで、星新一の短編における「エヌ氏」のような匿名感を出した。あとから見ると「エルフ」と紛らわしかった(しかも1話からエルフが登場してるし)。
【アラン】
現時点では15歳。本来なら物語の主人公となるべき存在。例のダンジョンRPGにおいて「たまたまボーナスポイントが高く出た」時に作りがちなキャラに、和製RPGにおける「勇者」的な要素を追加した形。さらに文字通りの意味での「謙虚な騎士」にしたのはちょっとしたお遊び。
名前の由来という程でもないが、筆者が某有名RPG3を遊んだ時に、デフォルトで登録されていた僧侶の「アラン」を意識。響きが気に入って最後まで連れ歩いていたのでこの名前には思い入れがある。
【エレナ】
典型的な魔法使いの女の子。年齢は20歳前後くらい。美人。執筆当初は設定面ではほとんど空白であり、今後の展開次第で都合よく動かせるようにしておいた。結果としては謎解き担当として大活躍することになる(ちょっと語らせすぎたかも)。魔術師としても、ラストバトルでMVP級の働きを見せる(単純なダメージ量では間違いなく最大)。
名前の由来はエレクトリックとかエレメンタルとかそういうフィーリング。ただし雷魔法が特に得意というわけではない(全般的にそつなくこなす)。
【イザ】
ゲームにおいて、魔術師として作成した後に速攻で盗賊に転職させる(魔法の使える盗賊になる)、というプレイングを物語に落とし込む上で「魔術学校中退」という経歴を思いついた。それだけだとつまらないので、マジックアイテムの達人というおまけを付けた(実際のゲームでは他にやることがないから消極的にアイテム係になりがちなので)。なんとなくトムに気があるような感じになったが気のせいである。
外見ではエレナより長身。スレンダーな体格であり男装もできるが、女性らしい服が似合わないというわけではないので、舞踏会などでかわいらしいドレスを着てトムを驚かせたりしてほしい。
名前の由来はなんとなく早そうな響きということで。本名はイライザで縮めてイザ、みたいな感じだろうか。個人的にもゲームで早解きプレイをやる時によく使う思い入れのある名前。
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「《獣使い》と呼ばれる俺は今日も相棒の狼っ娘とともに冒険と夜の戦いに精を出す」(注:R18)の前日譚に相当する物語です。
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