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「深夜の散歩で起きた出来事」と白昼夢
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休日の昼下がり、僕は車を走らせる。市街地を抜け、街道の一本下にある農道に入る。広域農道として整備されている(もう未舗装の道でパンクするのは御免だ)が、農繁期でもない限り車の通りはほとんどない。田んぼの中をノンストップで駆け抜けるのが気持ちいい。しかし、ちょうど食事の直後である上に、単調すぎるドライブで眠くなってきたので、田んぼ脇の野原に車を止めて小休止することにした。倒したシートに体を横たえ、目を閉じる。
**
アルミサッシから外の冷気が染み出してくる寒い夜。寝付けなかった僕は、近所の自販機で温かい飲み物でも買ってこようかと思って深夜の散歩に出かけた。そしてホットレモンジュースを手に家に戻ると、駐車場の僕の車の前に小さな動物、猫か犬のような……いや、今ならわかる。あれは狐だ。その狐は左後輪のあたりをうろうろすると、すぐに逃げていった。そうか、お前はあのときタイヤがパンクすることを教えてくれたんだな。
**
目を覚ますと僕は車の中にいた。日はまだ高い。そうか、僕は少し前の夜を夢に見ていたのか。あの夜、ホットレモンジュースを買いに行ったのは間違いなく事実。その証拠に、車の中のゴミ箱にペットボトルが残っている(飲み残した分を翌日の通勤中に飲んだのだ)。だが狐のような動物を見た記憶はあっただろうか?夢か現実かが曖昧になっている。
僕は眠気覚ましのため、一度車から降りて体をうんと伸ばし、少し歩いてみることにした。車を止めた野原の脇には小さな雑木林があり、細い道が中へと続いている。吸い寄せられるように進んでいくと、すぐに開けた空間に出た。そこには小さな鳥居とほこらがあり、その周りには無数の白い狐、つまりお稲荷様の陶磁器が飾られていた。つややかな表面が木漏れ日を反射して、きらきらと輝いている光景は白昼夢のようでもある。
一瞬ぞっとするものを感じたが、これは不快感などではなく、単に予想外のものを見て驚いたからである。僕の実家は稲荷神社の氏子であり、お稲荷様の像は神棚にもあったので小さい頃から馴染みがあった。僕が狐を好きになり、北海道で狐のぬいぐるみをねだったのも、もとを辿ればお稲荷様への愛着があるからだろう。
地図アプリを立ち上げてみても鳥居のマークすら出てこない。地元の人達がひっそりと祀っている名もなき社といったところか。僕は財布から五円玉を取り出してほこらの前に置き、柏手を打って旅の安全を願うと車の中に戻った。助手席には相変わらず、澄ました顔をした「相棒」がいる。
「お前とは不思議な縁があるのかもな」
それは先ほどリサイクルショップで買ってきた狐のぬいぐるみである。小さい頃に持っていたものと同じデザインだが、当然同じものではなく、誰とも知らぬ前の持ち主が捨てるように売り払ったものだろう。しかし今は僕のそばにあり、旅の友として懐かしい記憶を蘇らせてくれている。
次はどんなことを思い出させてくれるのだろうか。休日の小旅行はまだまだ続く。
**
アルミサッシから外の冷気が染み出してくる寒い夜。寝付けなかった僕は、近所の自販機で温かい飲み物でも買ってこようかと思って深夜の散歩に出かけた。そしてホットレモンジュースを手に家に戻ると、駐車場の僕の車の前に小さな動物、猫か犬のような……いや、今ならわかる。あれは狐だ。その狐は左後輪のあたりをうろうろすると、すぐに逃げていった。そうか、お前はあのときタイヤがパンクすることを教えてくれたんだな。
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目を覚ますと僕は車の中にいた。日はまだ高い。そうか、僕は少し前の夜を夢に見ていたのか。あの夜、ホットレモンジュースを買いに行ったのは間違いなく事実。その証拠に、車の中のゴミ箱にペットボトルが残っている(飲み残した分を翌日の通勤中に飲んだのだ)。だが狐のような動物を見た記憶はあっただろうか?夢か現実かが曖昧になっている。
僕は眠気覚ましのため、一度車から降りて体をうんと伸ばし、少し歩いてみることにした。車を止めた野原の脇には小さな雑木林があり、細い道が中へと続いている。吸い寄せられるように進んでいくと、すぐに開けた空間に出た。そこには小さな鳥居とほこらがあり、その周りには無数の白い狐、つまりお稲荷様の陶磁器が飾られていた。つややかな表面が木漏れ日を反射して、きらきらと輝いている光景は白昼夢のようでもある。
一瞬ぞっとするものを感じたが、これは不快感などではなく、単に予想外のものを見て驚いたからである。僕の実家は稲荷神社の氏子であり、お稲荷様の像は神棚にもあったので小さい頃から馴染みがあった。僕が狐を好きになり、北海道で狐のぬいぐるみをねだったのも、もとを辿ればお稲荷様への愛着があるからだろう。
地図アプリを立ち上げてみても鳥居のマークすら出てこない。地元の人達がひっそりと祀っている名もなき社といったところか。僕は財布から五円玉を取り出してほこらの前に置き、柏手を打って旅の安全を願うと車の中に戻った。助手席には相変わらず、澄ました顔をした「相棒」がいる。
「お前とは不思議な縁があるのかもな」
それは先ほどリサイクルショップで買ってきた狐のぬいぐるみである。小さい頃に持っていたものと同じデザインだが、当然同じものではなく、誰とも知らぬ前の持ち主が捨てるように売り払ったものだろう。しかし今は僕のそばにあり、旅の友として懐かしい記憶を蘇らせてくれている。
次はどんなことを思い出させてくれるのだろうか。休日の小旅行はまだまだ続く。
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