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雷龍の悲劇
出張準備
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レイズ、バージル、リゼル、そして一国の女王であるレイラ。
この四人で、ダルトで起こっている龍力者の暴走の一件に挑もうというのだ。
入団早々に重要任務を知らされてしまう。
「……もっと上の人間が行くのかと思ってた」
レイズは、素直に自分の考えを漏らす。
ダルト騎士団内で処理できない規模の内容。だから、本部に応援を頼むまでは別に疑問に思わない。
しかし、それに王が出向くとは。しかも、即席の班で。更に、その内二人は新人で、うち一人はあの日の被害者である。
「えぇ。通常であれば」
その一言だけで、王や新人が出しゃばる理由に想像がつく。
「……人手不足か」
「はい。各地で起こっていることや、状況の把握に人を割いています」
「なるほど……」
「今回は、普通の事件ではありません。並大抵の龍力では、送った応援部隊では歯が立たない場合もあります」
その言い方に、レイズは意見する。
「……自分なら、大丈夫だと?」
「……リゼルは、優秀な龍力者です。いつでも私を守ってくれる」
「へぇ……リゼルが」
バージルはリゼルを見るが、彼はこちらを見ることなく、ただ黙っているままだ。
この決定に意見しないということは、新人やあの日の龍力者が同行する異常事態に納得しているのか。
「私自身も、それなりに力をつけているつもりです」
「なら、なんで俺たちも」
「え、と……」
レイズが若干の不満を漏らすと、レイラは黙った。
目を泳がせて、何か言いにくそうな感じだ。
「……監視も兼ねている」
だんまりを決め込んできたリゼルが、やっと口を開いた。
監視、と言う言葉に一瞬ぴくりと身体が反応する。
ポジティブな編成ではない。その事実に、バージルはリゼルを睨む。
「説明しろよ。こいつは龍をコントロールできている。だから、アーロンも推したんだろ?」
「保証はない。現に、龍に慣れている最中だろう」
「ッ……」
なら、彼らエラー龍力者は、いつまで肩身の狭い思いをし続けるのだろうか。
極論だが、ライセンスがあるからと言って龍力が絶対に暴走しないとは限らない。
「……あの日の龍力者を、騎士団が戦力に充てる例は初めてだ。我慢しろ」
「戦力……か……」
戦力、と聞いて、レイズは少しホッとする。
『監視下』と言えど、拘束されるような環境ではないらしい。
「騎士団上層部も、あなたをどのようにしていくか決定が出せずにいます。なので、私達に一旦預けてください。悪いようにはしません」
「……そうかよ」
横目でバージルを見る。
今の応酬で、彼は反論する気が失せたらしい。目を合わせ、軽く頷いた。
レイズ自身、待遇は悪くないと感じているし、割とマシな待遇だと思う。
「……まぁ、知ってる顔ばっかりだしな。俺はそれでいい」
「ありがとうございます。忙しいですが、夜にはダルトに着きたいので、すぐに準備を」
レイラは一礼し、部屋を後にする。
それを確認したあと、リゼルが二人に声を掛ける。
「おい、ある程度の物資はダルトの騎士団でも揃う。必要な荷物をまとめて、すぐに飛行艇まで来い」
「荷物ってなんだ?(向こうで)揃うならいらないだろ」
「……私物と武器ぐらいは管理しろという意味だ」
それだけ言うと、リゼルも部屋を出ていく。
具体的な時刻は言われなかったが、彼が「すぐ」と言ったら、すぐなのだろう。
初仕事や特別編成の所感を言い合っている暇はない。
レイズは席を立ち、確認を取る。
「……俺らも行くか。荷物はキャンプのときのだけでいいよな?」
グリージの麓でしていたキャンプが懐かしい。
そこから一気にホテル宿泊となった。生活レベルが爆上がりである。まぁ、王都滞在時は寮だろうし、任務中はキャンプ生活になると思うが。
と、バージルはその道具すら置いていくと話す。
「いや、それこそ向こうで借りるべきだ。素人モノより、良い道具があるはずだ。武器と、少しの薬……下着ぐらか」
下着……って、パンツのことだよな?
下着に限らず、衣服こそ全て向こうで揃えてしまえそうだが。
「下着……パンツもか?」
「あぁ。密着タイプはあんま好きじゃない」
好きな種類の下着があるとは限らない、という意味か。
自分は別に拘らないし、良いか。
「じゃ、俺は武器を」
「俺は荷物の整理を」
旅の道具はバージルが管理していたため、それらは任せる。
逆に、レイズの荷物は武器しかない。準備も数秒で完了だ。
「じゃ、飛行艇でな」
あと少しで、ダルトに出発だ。
と、別れる前にバージルに言っておくことがある。
「一応言っとくけど、レイラには普段の口調で大丈夫だとよ」
「うるせぇよ……」
自分も慣れるまで時間を要したくせに、偉そうにアドバイスするレイズ。
当時の状況を知らないバージルには、強く出れる。
「ありゃ気ぃ遣うわ」
レイラ単体であればまだ良い。
狂犬リゼルがいると、どうも精神がすり減る。
だが、ここからは共に行動する仲間だ。
(仲良くなれる気がしねぇ……)
リゼルとは、いつまで経っても本音で話ができそうにない。
そして、彼の前では特にレイラへの遠慮が顕著に出そうだ。
バージルは肩を落としながらも、初仕事の準備に取り掛かるのだった。
この四人で、ダルトで起こっている龍力者の暴走の一件に挑もうというのだ。
入団早々に重要任務を知らされてしまう。
「……もっと上の人間が行くのかと思ってた」
レイズは、素直に自分の考えを漏らす。
ダルト騎士団内で処理できない規模の内容。だから、本部に応援を頼むまでは別に疑問に思わない。
しかし、それに王が出向くとは。しかも、即席の班で。更に、その内二人は新人で、うち一人はあの日の被害者である。
「えぇ。通常であれば」
その一言だけで、王や新人が出しゃばる理由に想像がつく。
「……人手不足か」
「はい。各地で起こっていることや、状況の把握に人を割いています」
「なるほど……」
「今回は、普通の事件ではありません。並大抵の龍力では、送った応援部隊では歯が立たない場合もあります」
その言い方に、レイズは意見する。
「……自分なら、大丈夫だと?」
「……リゼルは、優秀な龍力者です。いつでも私を守ってくれる」
「へぇ……リゼルが」
バージルはリゼルを見るが、彼はこちらを見ることなく、ただ黙っているままだ。
この決定に意見しないということは、新人やあの日の龍力者が同行する異常事態に納得しているのか。
「私自身も、それなりに力をつけているつもりです」
「なら、なんで俺たちも」
「え、と……」
レイズが若干の不満を漏らすと、レイラは黙った。
目を泳がせて、何か言いにくそうな感じだ。
「……監視も兼ねている」
だんまりを決め込んできたリゼルが、やっと口を開いた。
監視、と言う言葉に一瞬ぴくりと身体が反応する。
ポジティブな編成ではない。その事実に、バージルはリゼルを睨む。
「説明しろよ。こいつは龍をコントロールできている。だから、アーロンも推したんだろ?」
「保証はない。現に、龍に慣れている最中だろう」
「ッ……」
なら、彼らエラー龍力者は、いつまで肩身の狭い思いをし続けるのだろうか。
極論だが、ライセンスがあるからと言って龍力が絶対に暴走しないとは限らない。
「……あの日の龍力者を、騎士団が戦力に充てる例は初めてだ。我慢しろ」
「戦力……か……」
戦力、と聞いて、レイズは少しホッとする。
『監視下』と言えど、拘束されるような環境ではないらしい。
「騎士団上層部も、あなたをどのようにしていくか決定が出せずにいます。なので、私達に一旦預けてください。悪いようにはしません」
「……そうかよ」
横目でバージルを見る。
今の応酬で、彼は反論する気が失せたらしい。目を合わせ、軽く頷いた。
レイズ自身、待遇は悪くないと感じているし、割とマシな待遇だと思う。
「……まぁ、知ってる顔ばっかりだしな。俺はそれでいい」
「ありがとうございます。忙しいですが、夜にはダルトに着きたいので、すぐに準備を」
レイラは一礼し、部屋を後にする。
それを確認したあと、リゼルが二人に声を掛ける。
「おい、ある程度の物資はダルトの騎士団でも揃う。必要な荷物をまとめて、すぐに飛行艇まで来い」
「荷物ってなんだ?(向こうで)揃うならいらないだろ」
「……私物と武器ぐらいは管理しろという意味だ」
それだけ言うと、リゼルも部屋を出ていく。
具体的な時刻は言われなかったが、彼が「すぐ」と言ったら、すぐなのだろう。
初仕事や特別編成の所感を言い合っている暇はない。
レイズは席を立ち、確認を取る。
「……俺らも行くか。荷物はキャンプのときのだけでいいよな?」
グリージの麓でしていたキャンプが懐かしい。
そこから一気にホテル宿泊となった。生活レベルが爆上がりである。まぁ、王都滞在時は寮だろうし、任務中はキャンプ生活になると思うが。
と、バージルはその道具すら置いていくと話す。
「いや、それこそ向こうで借りるべきだ。素人モノより、良い道具があるはずだ。武器と、少しの薬……下着ぐらか」
下着……って、パンツのことだよな?
下着に限らず、衣服こそ全て向こうで揃えてしまえそうだが。
「下着……パンツもか?」
「あぁ。密着タイプはあんま好きじゃない」
好きな種類の下着があるとは限らない、という意味か。
自分は別に拘らないし、良いか。
「じゃ、俺は武器を」
「俺は荷物の整理を」
旅の道具はバージルが管理していたため、それらは任せる。
逆に、レイズの荷物は武器しかない。準備も数秒で完了だ。
「じゃ、飛行艇でな」
あと少しで、ダルトに出発だ。
と、別れる前にバージルに言っておくことがある。
「一応言っとくけど、レイラには普段の口調で大丈夫だとよ」
「うるせぇよ……」
自分も慣れるまで時間を要したくせに、偉そうにアドバイスするレイズ。
当時の状況を知らないバージルには、強く出れる。
「ありゃ気ぃ遣うわ」
レイラ単体であればまだ良い。
狂犬リゼルがいると、どうも精神がすり減る。
だが、ここからは共に行動する仲間だ。
(仲良くなれる気がしねぇ……)
リゼルとは、いつまで経っても本音で話ができそうにない。
そして、彼の前では特にレイラへの遠慮が顕著に出そうだ。
バージルは肩を落としながらも、初仕事の準備に取り掛かるのだった。
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