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世界の変化
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レイラ、バージル、マリナ、ミーネ。それぞれの頭上に、龍力オーラの塊が流れていく。
美しく流れる龍力が、細かく混じり、一つの巨大な龍になっていく。
各々が龍界で見た龍をイメージし、具現している。よって、見栄えは良くなく、キメラのような姿ではあるが、放っている龍力は美しいままだ。
また、先日レイラがマリナと四聖龍とで行った、『龍力MIX』のケースではないため、境界ははっきりしているし、互いの龍の感覚がハッキリと分かる。
異属性だし、バージル、マリナ、ミーネにそれを強要するのはハードルが高い。よって、このような形になっている。
ただ、仲間の意識が綺麗にシンクロしているため、別存在ではナルガ、反発することなく龍が構築されていく。
少しでも意識や思いが反れれば、出所が違う龍力は反発し、弾ける。
当然、仲間同士に互いを攻撃の意識はない。だが、『異なる属性で龍力を構築していく行為』は難易度が高い。
『龍力MIX』の下位互換の技術で、三人は経験がない技術だが、直感で理解していた。
お互いがお互いの邪魔をしないよう、最高火力の龍力を送る必要がある、と。
彼らの集中力と、今までの見てきた性質。そして、仲間を信じている絆。
ぶっつけ本番だったが、それらがこれを実現させた。
全員、無意識に頭上の龍力オーラを見る。スゼイへの注意も欠かさないが、彼も割とギリギリの状態。
それに、攻めに躊躇させるレベルの龍力だ。万全な状態ならまだしも、ボロボロの状態では、積極的にはなれないだろう。
だが、何もせずやられるタマでもない。雷龍の力を練り、備えている。
(凄く、気分がいい……)
レイラは、心の底からそう思っていた。
龍力を長年使っているが、これほどまでに心地よい時間に出会えたことがない。
それは、レイラだけではない。龍魂を得てから、それなりの時間を過ごしているバージルもである。
(やべぇな……皆の力がすっげぇ伝わってくる)
激しいエネルギーの波にいる感覚。
それでいて、仲間の意識が一つになっている感覚。
厳密には番うが、風以外の龍力を扱っている気分にさえなる。
(雷龍みたい……違うのに)
光や風、氷の龍力でさえ、自在に操れるような錯覚。
光や風、氷の力をこんなにも強く感じるのは初めてなのに、初めてじゃない気がする。
(温かい。本当に、みんなと……)
氷龍の力をふるっているのに、心が、身体が温かい。
それだけ仲間を近くに感じるし、自分も高揚している。
四つの属性が混ざった、キメラドラゴンが形成される。
強く、大きい龍力だ。龍力の足し算ではなく、+αとなっている。
「来いよ。テメェら……」
スゼイの身体からは、とげとげしい雷龍が具現化されていた。
迸る稲妻が雷龍の姿に変わっていく。そして、雷龍とスゼイが同時に吠えた。
「オオオオォォォォォオオオ!!!!」
「ぶっ潰す!!」
雷龍が牙を剥く。
レイラたちの龍力も、十分満ちた。それに、維持も難しい。
形成されたキメラドラゴンをぶつけるタイミングは、ここしかない。
「行きます!!せーのッ!!」
こちらも完成した。レイラの合図で、具現した龍を操作する。
意識が乱れ、龍が粒子になってしまわないよう、細心の注意を払い、龍力を放出し続ける四人。
「オオオオォォォォォオオオ!!!!」
「~~~~~~~~!!」
超本気のスゼイの力と、超本気の四人の力がぶつかる。
その瞬間、次元が歪みそうな、激しく強大なエネルギーが爆発した。
眩い光と爆風。目も開けていられない。
「「「「!!」」」」
全員、腰を落とし、重心を下げる。幅を広く取り、支持基底面を広げる。
「く……!!」
「~~~~~~~!!」
「ッ……!」
「皆さんッ……!!耐えてッ……!!」
強圧に吹き飛ばされそうになるが、必死に耐える。
永遠にも思えるせめぎ合いも、すぐに終わった。
キメラドラゴンがサンダードラグーンを食らいつくした後、全員が龍力の爆発に巻き込まれた。
轟音、爆風、高熱。
それらに吞まれ、レイラたちは凄まじい衝撃を受ける。
吹き飛ばされ、地面に身体を打ちつける。だが、大丈夫。意識は飛んでいない。
「…………」
『全て』が終わった後、レイラはゆっくりと目を開ける。
四人のシンクロも切れたようで、自分の感覚しか感じられない。
「みな……さん……?」
ゆっくりと起き上がり、仲間の位置を確認する。
大丈夫。四つん這いにだったり、転がっていたりで体勢は様々だが、生きている。
仲間たち四人の中で、割と動けるのは、自分だけらしい。
「レイラ……耐えれたのか」
「……皆さんも、無事の様ですね……良かった……」
何もかもが必死で、姿勢の感覚もないレベルだった。
だが、耐えきった。体勢は様々だったが、意識も飛ばず、やり切ったのだ。
そして、スゼイは。
「…………」
ボロ雑巾のように、地面に転がっていた。その地面も荒れに荒れ、地形が変わっていた。
肝心のスゼイだが、まだ息はあるようだ。ただ、起き上がる気配はない。エネルギー切れか、龍力も感じない。
あれだけ荒れ狂っていたのに、今は完全に静止している。
「勝った……のか……?」
勝利を実感し、バージルは身震いする。
勝った?自分たちが?負けるのが当たり前だった自分たちが?
感激で震えているのは、何もバージルだけではない。
「え……ホントに?」
「多分、恐らく……十中八九、99割じゃない?」
冗談を言う余裕があるマリナ。彼女らしく、ニヤニヤ笑っている。
「えぇ……龍力も感じませんし……」
「はぁ……」
へた、とミーネは力が抜ける。
「勝った……!!初めて、勝った……!!」
ぐっ、とバーバルは両拳を作る。
(よし!!勝った!!買ったぜ!!)
ヨシ!ヨシ!と何度も喜びを噛みしめるバージル。
レイラたちは、敵に対し、初めて勝利を収めた。
美しく流れる龍力が、細かく混じり、一つの巨大な龍になっていく。
各々が龍界で見た龍をイメージし、具現している。よって、見栄えは良くなく、キメラのような姿ではあるが、放っている龍力は美しいままだ。
また、先日レイラがマリナと四聖龍とで行った、『龍力MIX』のケースではないため、境界ははっきりしているし、互いの龍の感覚がハッキリと分かる。
異属性だし、バージル、マリナ、ミーネにそれを強要するのはハードルが高い。よって、このような形になっている。
ただ、仲間の意識が綺麗にシンクロしているため、別存在ではナルガ、反発することなく龍が構築されていく。
少しでも意識や思いが反れれば、出所が違う龍力は反発し、弾ける。
当然、仲間同士に互いを攻撃の意識はない。だが、『異なる属性で龍力を構築していく行為』は難易度が高い。
『龍力MIX』の下位互換の技術で、三人は経験がない技術だが、直感で理解していた。
お互いがお互いの邪魔をしないよう、最高火力の龍力を送る必要がある、と。
彼らの集中力と、今までの見てきた性質。そして、仲間を信じている絆。
ぶっつけ本番だったが、それらがこれを実現させた。
全員、無意識に頭上の龍力オーラを見る。スゼイへの注意も欠かさないが、彼も割とギリギリの状態。
それに、攻めに躊躇させるレベルの龍力だ。万全な状態ならまだしも、ボロボロの状態では、積極的にはなれないだろう。
だが、何もせずやられるタマでもない。雷龍の力を練り、備えている。
(凄く、気分がいい……)
レイラは、心の底からそう思っていた。
龍力を長年使っているが、これほどまでに心地よい時間に出会えたことがない。
それは、レイラだけではない。龍魂を得てから、それなりの時間を過ごしているバージルもである。
(やべぇな……皆の力がすっげぇ伝わってくる)
激しいエネルギーの波にいる感覚。
それでいて、仲間の意識が一つになっている感覚。
厳密には番うが、風以外の龍力を扱っている気分にさえなる。
(雷龍みたい……違うのに)
光や風、氷の龍力でさえ、自在に操れるような錯覚。
光や風、氷の力をこんなにも強く感じるのは初めてなのに、初めてじゃない気がする。
(温かい。本当に、みんなと……)
氷龍の力をふるっているのに、心が、身体が温かい。
それだけ仲間を近くに感じるし、自分も高揚している。
四つの属性が混ざった、キメラドラゴンが形成される。
強く、大きい龍力だ。龍力の足し算ではなく、+αとなっている。
「来いよ。テメェら……」
スゼイの身体からは、とげとげしい雷龍が具現化されていた。
迸る稲妻が雷龍の姿に変わっていく。そして、雷龍とスゼイが同時に吠えた。
「オオオオォォォォォオオオ!!!!」
「ぶっ潰す!!」
雷龍が牙を剥く。
レイラたちの龍力も、十分満ちた。それに、維持も難しい。
形成されたキメラドラゴンをぶつけるタイミングは、ここしかない。
「行きます!!せーのッ!!」
こちらも完成した。レイラの合図で、具現した龍を操作する。
意識が乱れ、龍が粒子になってしまわないよう、細心の注意を払い、龍力を放出し続ける四人。
「オオオオォォォォォオオオ!!!!」
「~~~~~~~~!!」
超本気のスゼイの力と、超本気の四人の力がぶつかる。
その瞬間、次元が歪みそうな、激しく強大なエネルギーが爆発した。
眩い光と爆風。目も開けていられない。
「「「「!!」」」」
全員、腰を落とし、重心を下げる。幅を広く取り、支持基底面を広げる。
「く……!!」
「~~~~~~~!!」
「ッ……!」
「皆さんッ……!!耐えてッ……!!」
強圧に吹き飛ばされそうになるが、必死に耐える。
永遠にも思えるせめぎ合いも、すぐに終わった。
キメラドラゴンがサンダードラグーンを食らいつくした後、全員が龍力の爆発に巻き込まれた。
轟音、爆風、高熱。
それらに吞まれ、レイラたちは凄まじい衝撃を受ける。
吹き飛ばされ、地面に身体を打ちつける。だが、大丈夫。意識は飛んでいない。
「…………」
『全て』が終わった後、レイラはゆっくりと目を開ける。
四人のシンクロも切れたようで、自分の感覚しか感じられない。
「みな……さん……?」
ゆっくりと起き上がり、仲間の位置を確認する。
大丈夫。四つん這いにだったり、転がっていたりで体勢は様々だが、生きている。
仲間たち四人の中で、割と動けるのは、自分だけらしい。
「レイラ……耐えれたのか」
「……皆さんも、無事の様ですね……良かった……」
何もかもが必死で、姿勢の感覚もないレベルだった。
だが、耐えきった。体勢は様々だったが、意識も飛ばず、やり切ったのだ。
そして、スゼイは。
「…………」
ボロ雑巾のように、地面に転がっていた。その地面も荒れに荒れ、地形が変わっていた。
肝心のスゼイだが、まだ息はあるようだ。ただ、起き上がる気配はない。エネルギー切れか、龍力も感じない。
あれだけ荒れ狂っていたのに、今は完全に静止している。
「勝った……のか……?」
勝利を実感し、バージルは身震いする。
勝った?自分たちが?負けるのが当たり前だった自分たちが?
感激で震えているのは、何もバージルだけではない。
「え……ホントに?」
「多分、恐らく……十中八九、99割じゃない?」
冗談を言う余裕があるマリナ。彼女らしく、ニヤニヤ笑っている。
「えぇ……龍力も感じませんし……」
「はぁ……」
へた、とミーネは力が抜ける。
「勝った……!!初めて、勝った……!!」
ぐっ、とバーバルは両拳を作る。
(よし!!勝った!!買ったぜ!!)
ヨシ!ヨシ!と何度も喜びを噛みしめるバージル。
レイラたちは、敵に対し、初めて勝利を収めた。
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