龍魂

ぐらんじーた

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新たなる龍

光と太陽

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数日後の、ある晴れた日。
レイラはソルに会いに来ていた。それも、一人で。
彼女は約束の場所で、ぼんやりと動物や自然と戯れている様子だった。
はたから見て、太陽龍王が宿る人間には見えない。

「!」

人の気配に気づき、雰囲気が変わる。その瞬間、ソルの肩に止まっていた鳥が羽ばたき、小動物が走り去っていった。
ここまで自然に溶け込めるのか。姿は人だが、中身は龍。環境に溶け込む力は強いのだろう。

「……いい目になったわ」

ソルが自分を認識した。目が合うなり、微笑んだ。

「それは、どうも」

レイラはこの数日、国の雑務を一切入れず、自分の龍と向き合うことを選んだ。
『フル・ドラゴン・ソウル』の精度を高めたことや、暗雲界での微調整の経験。
そこで頭にチラつくのが、敵の途轍もない強さだ。だが、彼女はそれを一切考えず、ソルに勝つことだけを必死に考えた。
新しい龍魂を得るために奔走する必要がなくなったことも大きい。雑念が消え、必要なことに集中できた。
半ば無理矢理だが、休息もしっかり取るようにしている。

ソルは手をかざし、異空間を作り出す。霧が充満したような空間だ。
それなのに、嫌な気配は一切感じないし、互いの姿は良く見える。不思議な感覚だ。

「……始めましょうか」
「はい」

戦闘前に、言葉は要らない。この龍で、この剣で証明してみせる。
己の強さを。

しゅる、とレイラは剣を抜く。
そして。

「……光龍!!」

レイラは叫んだ。
それと同時に、『フル・ドラゴン・ソウル』になった。
ドラゴン・ソウル時とは比にならない龍力。光龍の輝きも強く、龍圧も段違いである。

(調子は、いいです。最高の力で、決めます!!)

相手は一人。温存も様子見もしない。
最初から全力だ。

「……いい龍ね……けど!!」

ソルも龍力解放する。
全力かはまだ分からないが、彼女のそれは、レイラの底上げされた『フル・ドラゴン・ソウル』よりも、はるかに上回っていた。
自分の実力が上がったからこそ理解できる、彼女の力。先日の戦闘で自分たちが勝てる見込みなど、百歩譲っても、なかったのだ。

「……そんな気はしていましたよ」

だが、レイラは動じない。予想していたことだ。
戦闘において、力を隠すのは、ある意味正解だ。最小の力で勝てるなら、その方が良い。

「いくわよッ!!」

ソルが動く。
ジリジリと肌を焦がす太陽。ずしりと重くのしかかる龍圧。
『フル・ドラゴン・ソウル』の光龍のオーラは、それらから自分を守ってくれている。

ここまで引き上げて、相対することができるレベル。
よって、その辺の龍力者であれば、怖気づいて動けなくなっているだろう。

迫り来る太陽を、ぼうっと眺めている理由もない。ペースに吞まれないよう、レイラも走る。
剣を構え、龍力を込めながら、ソルの龍に突撃していく。

「はぁッ!!」
「!!」

太陽龍と光龍がぶつかる。
龍圧がぶつかり合い、風を生む。彼女たち中心に、四方八方に龍圧が駆け抜ける。

「~~~~!!」

たった一撃。
それだけで、腕の骨が悲鳴を上げている。だが、耐える。この程度なら、耐えられる。
レイラはソルの剣を押し返し、連撃を入れる。

「光龍爪!!」

剣と剣とがぶつかり合い、激しく火花を散らす。
一撃一撃ごとに、全身に相手の力が伝わる。

絶対に負けない。

数回剣をぶつけあった後、二人は距離を取った。
息を吹き、互いに思う。

「この空間で良かった」と。

フィールドで戦えば、異変を察知して騎士団や野次馬がやってくるだろう。
この場所ならその心配はない。思いっきり、やれる。

呼吸を整えるレイラに対し、ソルは息が上がっていない。
それどころか、力の維持についても言われてしまう。

「その集中ッ!!どこまでもつかしら!?」
「!!」

高い集中力で『フル・ドラゴン・ソウル』を使っているレイラ。
先頭における、一瞬一瞬の判断で、自分と相手との位置関係や龍力の大小を判断し、超高速で龍力を移動させている。
暗雲界のときより、その精度やスピードが段違いなのは、暗雲界でのシビアな戦闘経験があったからだろうか。
ただ、質の高い龍力を無尽蔵に使えるわけがない。レイラのその状態になれる時間は、長くないのだ。

「……勝つまで!!」

それを隠すかのように走り出し、剣劇を再開する二人。
だが、ソルの力強い剣に、レイラは後退してしまう。

「はぁ……はぁ……」
「ふふ……ばててきた?」
「どうでしょうね……?」

虚勢を張るが、無駄だろう。
案の定、レイラは三分と経たずに息が上がっている。
汗が大量に流れていく。

(時間がありません……でも、スキがない……!!)

自分とソルは、ほぼ互角のぶつかり合いをしている。
こちらが押し負けている部分はあるものの、完全に負けている勝負ではない。
が、攻めきれない。あと一歩、もう少しなのだ。

(……限界まで私に合わせて)
「!」

突如、レイラの脳内に声が響く。もちろん、ソルは喋っていない。
周囲をキョロキョロ見回すレイラに、ソルは少し呆れる。

「(疲労で)目までおかしくなっちゃった!?」

絶好のチャンスを逃す理由はない。
走り出し、ソルは彼女に向けて、技を放つ。

「紅龍煉獄斬!!」
「ッ……!!」

構えが十分でない上に、驚きでこちらに集中できていなかったレイラ。
紅龍が乗り移ったかのような熱を放つ剣越しに、ブルーの目と視線がぶつかる。

残念だ。丁寧さでは断トツだった光龍使いには、少し期待していたのに。

(……さよなら)

太陽龍王が創造した最高の剣が、振り下ろされた。
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